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アゼライン酸の効果と副作用|ニキビ・シミ・肌荒れに効くメカニズムを皮膚科医が解説②

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
Ideogramにて筆者作成

【色素沈着・シミに有効!アゼライン酸の美白効果】

アゼライン酸は、過剰な活性を示すメラノサイトや悪性のメラノサイトを選択的に標的とし、正常な細胞には影響を与えません。これは、異常なメラノサイトの膜がアゼライン酸に対して透過性が高くなっていることと関係しているかもしれません。in vitroの研究では、アゼライン酸が細胞膜を透過し、ミトコンドリアの呼吸を乱し、粗面小胞体の拡張を引き起こし、DNA合成を阻害することで、メラノサイトの増殖と分化を抑制することが示されています。

さらに、アゼライン酸はメラニン生成の鍵となる酵素であるチロシナーゼ活性を競合的に阻害します。チロシナーゼは、チロシンからドーパ、ドーパキノンへの変換を促進する酵素で、メラニン生成を効果的に阻害します。こうした多面的なメカニズムにより、アゼライン酸は色素異常症の治療に効果を発揮する一方、選択的な作用により安全性が高まります。メラスマや炎症後色素沈着など、アゼライン酸が臨床応用されている報告は数多くあります。

【アゼライン酸の使い方と副作用】

アゼライン酸は、ジェルやクリーム、フォームの剤形で使用します。一般的には1日2回、患部に塗布します。濃度は10~20%が主流ですが、症状に応じて適切な濃度を皮膚科医と相談して決めましょう。塗布量は1回0.5gを目安に、顔全体に薄く伸ばすようにします。

アゼライン酸の経皮吸収は比較的乏しく、濃度や剤形によって影響を受けます。高濃度の製剤は皮膚吸収を高める可能性がありますが、副作用のリスクも高くなります。アゼライン酸の経皮吸収を改善するために、ゲル、フォーム、マイクロエマルション、リポソーム、エトソーム、液晶製剤など、様々な剤形が研究されています。これらの剤形は、アゼライン酸の皮膚における溶解度と浸透性を高め、必要用量を減らすことを目的としています。研究によると、アゼライン酸クリームを局所に単回投与した後、角層に薬剤の3~5%が留まることが示されています。一方、ゲル製剤を使用した場合、経皮吸収率は8%まで上昇する可能性があります。これらの知見は、アゼライン酸の経皮吸収を改善するための貴重な手がかりとなります。

副作用は比較的少なく、使用部位の赤み、ピリピリ感、かゆみ、灼熱感などが一時的に現れる程度です。これらの副作用は、使用開始から4週間以内にピークを迎え、その後減少していきます。96%以上の症例で、使用終了までに症状が消失します。かぶれやすい人や、敏感肌の人は注意が必要です。症状が強い場合は、皮膚科を受診しましょう。全身性の重大な副作用や光線過敏症は報告されていません。また、妊娠中の外用使用はFDAのカテゴリーBに分類され、12歳以上の使用に適しています。全体的に、アゼライン酸は忍容性が高く、患者満足度も高いことが示されています。

アゼライン酸は、ニキビやシミ、肌荒れなど、様々な皮膚トラブルに効果が期待できる万能成分です。抗菌作用、抗炎症作用、角化抑制作用、美白作用など、多岐にわたる働きを持ち、副作用も少ないため、幅広い年齢層に使用できます。肌のコンディションに合わせて取り入れてみてはいかがでしょうか。皮膚科医と相談しながら、自分に合った使い方を見つけていきましょう。

参考文献:

Feng, X., Shang, J., Gu, Z., Gong, J., Chen, Y., & Liu, Y. (2024). Azelaic Acid: Mechanisms of Action and Clinical Applications. Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology, 17, 2359–2371. https://doi.org/10.2147/CCID.S485237

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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