新人が部下として配属された時に読む話
4月中旬を過ぎ、そろそろ最初の研修を終えた新人が各部署に配属されるタイミングです。読者の中にも「新人の部下がついた」という人もいるでしょう。とはいえ、組織のカラーにまったく染まっていない新人というのは、ある意味、もっとも扱いの難しい存在でもあります。どういう風に理解してどう接すればいいのかで、悩む人も少なくありません。
というわけで、今回は新人との接し方についてまとめておきましょう。彼らを理解することは、上の世代にとっても、自らのキャリアをより深く理解するきっかけとなるはずです。
新人が没個性で主張がないのは当たり前
さて、あなたの職場に3人の新人が配属されました。ぱっと見、どこにでもいる普通の大学生といった感じの山本君、暇さえあればスマホをいじっている中村君、高校までずっと海外で過ごした帰国子女の鈴木君の3名です。部長から全員に紹介された後、課長の指示で、とりあえずあなたは山本君のトレーナーとして指導につくことになりました。
でも、指導してみてすぐにあることに気づきました。何かを言うと「はい」と言って、まあとりあえずソツなくはこなします。説明されたことはちゃんとメモして、彼なりに覚える努力もしているようです。でも、そこまで。言われた作業を終えた後、何も言わずにいると、そのまま席でぼーっとしていることがよくあります。
最初に面談した時も、やりたいことは何かと質問すると、明確な答えは返ってきません。この部門にはこれこれこういう業務があって、我々は○○な仕事を担当している部署なんだといえば「はあ、そうなんですか。面白そうですね」と返してはきますが、自分から具体的なビジョンや希望が出てくることはありませんでした。
そんな時、ふとこんな記事が目に留まりました。
そうか!山本君も典型的な自動ブレーキ人間だったのか!自動ブレーキだから勝手に止まるけど自分からは動かない。でかく事故ることはないけど馬力もない。よし、俺がおまえのブレーキのリミッターを外してやるぜ!覚悟しろよ!
と早合点する前に、冷静に過去の「今年の新人シリーズ」を見てみましょう(社会経済生産性本部命名)。
2014年「自動ブレーキ型」
2013年「ロボット掃除機型」
どれも均一で効率的だが壁を乗り越えられない。時々行方不明になる。
2000年「栄養補助食品型」
ビタミンやミネラル分は豊富だが直射日光に弱く、効果が持続しない。
1999年「形態安定シャツ型」
機能性に富み、ラフに扱ってもOKだが、こまめなケアが必要。
1998年「再生紙型」
ムリな押し付けは合わないが育て方次第で役に立つ。
1991年「お仕立て券付ワイシャツ型」
時間と金がかかる。しかも生地によっては上手く仕立てられない。
1980年「コインロッカー型」
ちいさくまとまっている。外見も反応もみんな同じ。
担当者が苦心してネーミングしている様子がうかがえる労作揃いですが、どれも“没個性”とか“指示待ち”といった要素を含んでいることがよくわかります。
日本は終身雇用の国であり、企業は無色透明な若い人間を採って、社内でゼロから育てるカルチャーでした。だから、学生は勉強せず、企業も新卒一括採用という何を見ているのかわからない方法でまっさらな新人を採用してきました。だから、新人が指示待ちタイプで没個性的で主張もビジョンもいい加減なんて、戦後の日本ではごく当たり前の話だったわけです。
にもかかわらず、社会は「今年の新人は○○型だー」といって騒ぐのが大好きですね。筆者も何度かメディアに聞かれたことがあります。今年はどういうタイプですか?こんなエピソードがあるんですけど、どう思われますか?etc……
日本の新人なんて昔からそんなもんですよ。ぼーっとしてて指示待ちに見えるけど、それを組織の側が育てることが終身雇用の前提なんですから。ギラギラした奴が入ってきたってすぐ辞めますよ。
なんて話をしているうちに、そういう取材はとんと来なくなりましたね。どうやらメディア的には、変わっているのは新人の方だという切り口でまとめつつ、ベテラン社会人に安心感を売るのがビジネスモデルのようです。もちろん、トレーナー的にはそんな安易なレッテルに惑わされることなく、誰でも昔はこうだったのだと割り切って、きっちり組織人として教育してあげましょう。
ちなみに、職場の課長(45歳)は、かつてお仕立て券付ワイシャツ型と呼ばれた男であり、部長(56歳)にいたってはコインロッカー型と恐れられた男です。むしろ自動ブレーキ型のほうが素材的に大成するんじゃないかと思うのは筆者だけでしょうか。
以降、
“ゆとり世代”は一歩先を行っていると考えよう
新人が「辞めたい」と言ってきたらやっておくべきこと
新人を育てるメリットと、辞めさせてしまった際のペナルティ、およびその回避策