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発信元別でニュースの信頼度はどこまで変わるのか、その米国事情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 「新聞の情報なら信頼できる」と考えている人は米国でも多い(写真:アフロ)

新聞もテレビもインターネットも結局のところ、情報を伝達する道具でしかない。その道具を使って伝えられる情報は、道具そのものでは無くその情報を発信する大元の信頼度に依存する。ただし新聞やテレビのような発信元が独占・寡占状態にある場合、その発信元の信頼度と道具の信頼度がほぼ同じく扱われる。米国では発信源でそのニュースの信頼度はどのような違いを示すのだろうか。同国の民間調査機関Pew Reserch Centerが2016年7月7日付で発表した調査報告書「The Modern News Consumer」(※)をもとに、その実情を確認する。

次に示すのはそれぞれのニュース発信元別の、回答者自身が認識している平均的な信頼度。青系統が信頼する派で、赤系統が信頼しない派。

↑ ニュースの取得元別・ニュースの内容の信頼度(米国、2016年2月)
↑ ニュースの取得元別・ニュースの内容の信頼度(米国、2016年2月)

調査対象母集団においては、全国規模のニュース組織、例えば全国向けテレビ局や新聞社配信のニュースを8割近くがそれなりに信頼している。他方、地域テレビ局や地域紙によるニュースは8割超えの信頼度。全国規模のニュース組織より地域組織の方が信頼度が高いのは、意外といえば意外だが、自分に身近なニュースの精度の観点で考えると道理は通る。

他方、口頭などによる身近な人からの伝聞は強い信頼が14%でそれなりの信頼は63%。強度の信頼度はやや少ないが、信頼する派の値は全国規模のニュース組織と変わらない。メディア経由では無く、直接の伝聞の信頼性の高さが改めて認識できる。もっともこれは情報発信元を良く知っている、距離感が極めて近いのが大きな理由だろう。例えば報道関係者が身内に居れば、その人が勤め先の媒体のニュースへの信頼度は(その人が誠実ならば)大いに高まるに違いない。

他方、ソーシャルメディアは信頼しない派の方が多く、信頼する人は強弱を合わせて34%しかいない。これは色々な情報源が用いているソーシャルメディア全体を包括したからこその低い値に他ならない。玉石混淆状態ではその全体を信じろというのも無理がある。

実際、ソーシャルメディアに限らずインターネット全体を用いてニュースを取得する際、その情報源により信頼度はどこまで変わるかを尋ねると、発信元がはっきりしている場合は信頼がおけると判断されるが、そうでない場合は疑わしく思う人が増える結果が出ている。

↑ それぞれの情報源からインターネット経由でニュースを受け取った時に、そのニュースをどこまで信頼できるか(米国、2016年2月、それぞれの情報源からオンラインでニュースを受け取った人限定)
↑ それぞれの情報源からインターネット経由でニュースを受け取った時に、そのニュースをどこまで信頼できるか(米国、2016年2月、それぞれの情報源からオンラインでニュースを受け取った人限定)

知らない人からの情報でもほぼ半数が信頼してしまうのは不安があるかもしれないが、これは「自分は知らないが有名な人、その筋の専門家」なども含まれているため。選択肢が「単純に知らない第三者」「知らないけれど該当ニュースに詳しい人、専門家」「知らないけれど信ぴょう性が高いとして有名な人」などのように細分化されれば、はっきりとした違いが分かるに違いない。結局のところ、発信源の信頼度合いが、そのまま発信されるニュースの信頼度合いに大きく影響することに変わりはないということなのだろう。

■関連記事:

新聞一番テレビが二番…メディアへの信頼度、テレビと新聞の高さ継続

売上面を中心にアメリカのデジタルニュース事情をグラフ化してみる

※The Modern News Consumer

今調査は2016年2月24日から3月1日にかけて汎用調査用母集団(アメリカ合衆国全体規模のRDD方式で選別された電話番号で対応した人(18歳以上)で構成)に対して実施されたもので、データ分析用として十分な回答が得られた回答者数は2078人。国勢調査などによるウェイトバックが実施されている。なお今調査における「ニュース」とは、回答者の友人や家族が直接関与したものでは無い、出来事やイベントに関する情報と定義されている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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