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2月中旬から実施予定のマイナーキャンプにメジャー招待選手は参加可能!ロックアウトの抜け道とは?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
レンジャーズとマイナー契約を結んだトロイオアーノ投手は今も球団施設を使用できる(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【スプリングトレーニングの遅延はほぼ確実か】

 2月に入ってもロックアウトが続くMLBだが、現地時間の2月1日にMLBと選手会はロックアウト実施後4度目の労使交渉に臨んだものの、両者の主張は今も大きな隔たりがあるようで、合意に達することはなかった。

 現時点で次回交渉の予定が決まっていないことから、2月中旬から開始される予定になっているスプリングトレーニングが遅延するとの見方が大勢を占めるようになってきた。

 ただスプリングトレーニングの遅延が、そのままシーズン開幕の遅延に繋がるものではない。すでに本欄で、1995年はストライキ終結後に3週間のスプリングトレーニングでシーズンを迎えていたことを報告しているように、MLBと選手会が合意すればスプリングトレーニングを短縮し、日程通りシーズンを迎える選択肢も残されている。

 それはつまり、現在もロックアウトのため契約交渉が進まない鈴木誠也選手が、ロックアウト解除後に新たな所属先が決まるのは間違いないとはいえ、移籍1年目から十分な準備期間を得られないまま、シーズンに臨まなければならい可能性が出てきたわけだ。いずれにせよ、鈴木選手にとって順風満帆なスタートになりそうにない。

【2月中旬からスプリングトレーニング開始へ】

 だからと言って各チームが、労使交渉の行方をただ静観しているわけではない。すでにスプリングトレーニング実施に向け、準備を進めているのだ。

 全30チームから事情を確認したわけではないが、複数のチーム関係者から聞いた限りだと、スケジュール通りのスプリングトレーニング実施を想定して、近日中にチームスタッフがキャンプ地入りして受け入れ体制を整えるようだ。

 だたしロックアウトが長期化した場合は、施設の準備を整えただけで、スタッフは一旦引き上げることも考慮しているという。

 その一方で、2月中旬からスプリングトレーニングを実施するチームが多い。もちろんメジャーリーグ選手ではなく、マイナーリーグ選手を集めて行うものだ。

 日本ではあまり知られていないと思うが、各チームはメジャーリーグ選手のスプリングトレーニングとは別に、有望なマイナーリーグ選手を集めて「アーリー・キャンプ」と称される限定的なスプリングトレーニングを2月から実施している。

 このアーリー・キャンプは若手選手の育成が主目的だが、メジャーリーグ選手のスプリングトレーニングと同時期に実施することで、オープン戦開幕直後に選手が不足がちになることから(開幕してしばらくはメジャーリーグ選手たちが早期交代するため)、その補充としてアーリー・キャンプに参加しているマイナーリーグ選手をバックアップとして補充するという目的も兼ねている。

 そのアーリー・キャンプに関しては、ロックアウトに関係なく予定通り実施していく方針のようだ。

【アーリー・キャンプは招待選手も参加可能】

 しかもアーリー・キャンプを含め2月中旬から実施される各種トレーニングには、メジャーリーグのスプリングトレーニングに参加予定だった招待選手が参加できることになっており、彼らの受け入れを進めるチームも存在している。ロックアウト期間中にもかかわらず、彼らは自由にチーム施設を使えるのだ。

 ちなみに1月に入ってから現時点(現地時間の2月2日)までに、計37選手がマイナー契約を結んでいる。

 その中には、7年(MLB在籍日数は4年程度)にわたりメジャーリーグの公式選手に出場してきたニック・トロピアーノ投手や、昨シーズンはカージナルスで24試合に登板しているダニエル・ポンセ・デ・レオン投手らが含まれている。彼らは間違いなく選手会のメンバーなのだが、マイナー契約選手としてチーム施設を使用できるのだ。

【選手会はあくまで「40人枠選手」の代表】

 改めて選手会の公式ページで入会基準について確認してみると、「MLBチームと契約を結んだすべての選手、監督、コーチ、トレーナー」とする一方で、「故障者リスト入りしている選手を含め、各チームの40人枠に入る約1200人を代表する」という表記がある。

 この基準を元にすれば、前述のトロピアーノ投手やポンセ・デ・レオン投手は現時点でどのチームの40人枠に入っていないので、選手会の管轄外になるのだ。つまりロックアウトの対象外ということだ。

 確かに1995年の野茂英雄投手も、ドジャースとマイナー契約を結んだからこそ、選手会のストライキに巻き込まれることもなくマイナーリーグのスプリングトレーニングに参加し、ストライキ中も黙々と準備することができた。

 もし仮に鈴木選手と一旦マイナー契約を結ぶような裏技を使えば、今すぐにでもスプリングトレーニングに参加できることになる。ただ彼の場合は、ポスティングシステムを利用してのMLB移籍を目指しているので、広島に支払われる移籍金が絡むことからも、まず不可能な話だ。

 このままメジャー契約を待つか、それともマイナー契約を受け入れスプリングトレーニングに参加するのか──。未契約の選手たちはもどかしい状況に置かれているようだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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