【あのニュースその後2020】慰安婦問題の尹美香氏が12月に大炎上「懲りないワインパーティー」
2020年も韓国を騒がせ、そして日本にも伝わってきたニュースが多々あった。
その後、あの話題は? これを年末年始の機会に。
第1回は、4月に慰安婦問題で騒動となったあの人物を。
尹美香(ユン・ミヒャン)議員 1964年生まれ。学生時代から慰安婦問題に強い関心を持ち、1992年設立の「韓国挺身隊問題対策協議会」(後の「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」)に幹事として参加。08年から20年まで常任代表や理事長などを歴任。2020年4月の韓国総選挙で革新系与党から出馬し、初当選を果たした。
▲事件 今年5月に30年以上活動をともにしてきた元慰安婦のイ・ヨンス氏が記者会見を主催。「国会議員になるべきではない」「団体のお金の使い方がよく分からない点が多々あった」と告発された。その後メディアが10以上の金銭疑惑を追求。「じつは元慰安婦を利用していたのか」という疑いの目を向けられながら、逆風の議員生活が始まった。
▼その後
8月13日、午後1時ごろから深夜に及ぶ検察の事情聴取を経て、結局は9月14日に6つの疑惑で在宅起訴された。本人は「強引な起訴」として不満を口に。現在、裁判進行中。さらに12月12日、SNSで大炎上事件を起こした。
ワインパーティーのSNS投稿が大問題に
懲りない、というべきか。
尹美香氏が12月に再び”しでかした”。SNSへの投稿が「大炎上」したのだ。
12日に自らアップしたパーティーの写真。5人の仲間とともにグラスを掲げている。3人は水、自身とあと2人はワインを…。
12月7日に行われたというパーティーの様子だ。写真に添えられた文章にはこう記されていた。
「キルおばあちゃんのお誕生日、おばあちゃんのいない席を胸に刻みながら私たちだけで集まり、祝い、健康祈願。夢について語らいながら食事」
つまりは、この日に92歳の誕生日を迎える元慰安婦のキル・ウォノク(吉元玉)さんのために、本人が不在の場所で支持者やスタッフとパーティーを行ったというのだ。
これが大問題となった。
なにせ、韓国でも新型コロナ感染拡大により、行動規制の最終段階「ステップ3」へと進むかどうか、という12月の出来事だ。国会議員が知人と6人で集まり、会食。しかも本人はマスクを着用せずに写真をアップしたという点から猛反発を浴びた。
いかに現在の韓国のコロナ対策ガイドラインに反しているか。写真からこれを指摘するメディアもあった。
・マスクを着用していない状態で向かい合って座っている。
・お互いの距離を1メートルも確保していない。
・5人以上の集まりは避けようという勧告に反している。
しかも本人は前日の12月6日夜に自身のフェイスブックで「苦しいが今はコロナ感染防止のために少し立ち止まりましょう」という文章をアップしたばかりだった。国民相手には自粛を要請しておきながら、センセイはきらびやかなパーティー。各メディアは猛批判を展開した。
「尹美香の”自分がやればロマンで、他人がやれば不倫”…誕生パーティー直前にはSNS上でコロナ対策呼びかけ」(韓国経済新聞・13日)
「野党『尹美香議員は稀代の詐欺師』、ただちに離党すべき」(同14日)
批判を受けた尹議員は該当の投稿を削除し、13日にSNSで謝罪文を掲載。「コロナ対策は取っていた」「食事会は21時に終えた」としたが、逆風は収まらなかった。
「本人不在のパーティー」のいびつさ
さらにはこのパーティーには別の問題もあった。
「尹美香 弁明しても批判の沼…”当事者がいないパーティー、奇異”」
(SBS)
“本人不在の誕生パーティーとはお寒い”という話だ。尹議員側は謝罪文(本稿末尾に全文掲載)で「キルさん側と連絡がつかなかった」としているが、これに対していくつかの疑惑が浮上している。
まずは韓国で批評家として知られるチン・ジュンクォン氏は「裁判を有利に運ぶための行為では」という疑惑を投げかけた。
なにせ、尹議員は現在、このキル氏関連の裁判を争っているのだ。6つの容疑のうちの1つで、内容は以下の通り。
準詐欺
ユン氏が活動した正義連は、2017年に「慰安婦被害者のキル・ウォノクさんが2017年に受け取った『女性人権賞賞金』のうち5000万ウォン(約560万円)を正義連に寄付」と発表していたが、検察は違う解釈をした。
重症の痴呆状態にあるキル氏の状態を利用し、2017年頃から今年1月まで合計9回、7290万ウォン(約655万円)を寄付するように仕向けたと見ている。
尹氏側は「起訴内容はむしろキル氏を冒涜するもの」と反発している。
しかし尹議員側の「仲がいいアピール」は完全に裏目に出た。15日に「朝鮮日報」などがキル側さんの「誕生日前に連絡も来ていない」というコメントを報道。さらに16日には「聯合ニュース」が「キルさん側が寄付金を返してほしいと思っている」という内容を報じた。キルさんの家族との電話取材の内容だ。
「家族側としては正義連側に直接要求はしないものの、今は母をこれまで利用してきたことに対し”すみませんでした”という真実の謝罪を受けたいだけ」
これを本来は”味方”のはずの左派「ハンギョレ新聞」も続けて報じたのだから、事の深刻さが伺い知れる。何より「元慰安婦側も快く思っていない」という点が明らかになった。
なかには、保守系メディア「朝鮮日報」のように「じつは尹議員本人の誕生パーティーだったのでは」という説を報じる媒体もあったが、これは可能性が低いと見られている。韓国の今の”アラフィフ世代”までは、プロフィールに掲載する誕生日は西暦と旧暦、どちらにしてもよかった時代を経験している(最近は西暦が増えている)。なんと今年の西暦12月7日は、旧暦で言えば彼女の誕生日である「10月23日」になるのだという…
党からは強いお咎め
左派系「ハンギョレ新聞」のほか、同じく左派の「ハフィントン・ポスト」なども今回の炎上騒動を批判的に報じた。
”味方”からも責められるユン議員。16日には所属の「ともに民主党」最高委員会から「国民に失望を与えた」として「厳重警告」の処分を下された。
「最近、不適切な行為により論争を巻き起こした尹美香議員に厳重に警告することとし、党の事務総長がこれを尹議員に伝えた」(党のリリース内容より)
警告の理由はこの点だった。
「新型コロナにより社会の痛みと市民の苦難が深刻化している状況で、今回の事態を見逃せないと判断した。民主党構成員すべてがひとつになり、こういったことがなきよう努力する」(党のスポークスマン)
ネット上は更に荒れまくり、上記処罰を報じた「聯合ニュース」の記事に対しては「監獄でパーティーをしろ!」などの厳しいコメントが入った。
尹氏の”軽さ”は日本としても看過できない
慰安婦問題というもの、韓国で取材していて強く感じることがある。「国家間の決め事はなんであれ、たった一人のおばあちゃんの気持ちに報いられないの?」という感情論が根強いバックボーンとして存在するのだ。韓国社会の年長者を敬う「儒教思想」や、法よりも道徳観で社会を治めてきた「徳治」といった伝統的な考え方を感じる。
そういったなかで、慰安婦側の意見を集約・主張する役の尹美香議員がこういった“軽さ”を見せた。韓国側の主張も取材してきた筆者としても、大いに失望した。日本側にもしっかりと伝えるべき韓国側の実態だ。
最後に本人がSNSで掲載した「謝罪文」全文を翻訳して記す。ここではキルさんの年齢を「94歳」と記しているが、実際は「92歳」。元慰安婦の年齢すらちゃんと認識していないのだ。
(了)
尹議員の謝罪文全文
【お詫びの言葉]
12月7日は、キル・ウォオクおばあさんの94回目の誕生日でした。
ところが現在、連絡が届かず、お会いする方法がなく、お祝いのご挨拶をお伝えできずにいます。
知人との食事の席で切なさと懐かしさを共有したのですが、それが思慮深さのない行動となりました。
新型コロナウィルスという厳しい危機的状況のなか、思慮深く行動できなかった部分に対して心からお詫び申し上げます。
ただし、レストラン利用時の防疫指針は、遵守したという点は申し上げます。
入場時には防疫指針を遵守し熱チェックなどを受けており、食事前のマスクの着用のガイドラインにも準拠しています。また、食事の時間も9時前に終えました。
いま一度、深く反省して、これからコロナの克服のための行動を率先して行います。
12月13日
ユン・ミヒャン拝