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金正恩の体に「赤黒い斑点」が…止まぬ健康異常説

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央テレビ)

 米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)は27日、北朝鮮・平壌の美林(ミリム)飛行場北側の閲兵式訓練場から、兵士や車両が姿を消したと報じた。

 VOAはこれに先立ち、衛星画像を提供する米プラネット・ラボが19日に同訓練場を撮影した衛星写真に基づき、北朝鮮が閲兵式を準備中である可能性を指摘していた。写真には大規模な兵力の隊列とみられるものが捉えられていた。今年は、朝鮮戦争の休戦協定締結(7月27日)から70周年となる年だ。

 ところがプラネット・ラボが26日に同訓練場とその周辺を撮影した写真には、兵士の隊列も車両もまったく見当たらないという。VOAはこれについて、北朝鮮国内で熱病が拡散しているとする一部メディア報道との関連が注目されるとしている。

 中国では新型コロナウイルス感染が再拡大の様相を見せているが、中国との貿易を徐々に再開している北朝鮮国内の防疫状況が気になるところだ。

 一方、一部では金正恩総書記の健康状態についても、異変説が囁かれている。

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信は17日、金正恩氏が軍事偵察衛星1号機打ち上げの準備状況を視察したとして、その際の写真を公開した。金正恩氏の公開活動は、先月18日に国家宇宙開発局を現地指導してからおよそ1カ月ぶりだった。

 そして、今月17日公開の写真を見ると、左手首に以前はなかった赤黒い斑点が見えるのだ。斑点は注射の後のようにも見える。ちなみにおよそ3年前、金正恩氏の「重病説」や「死亡説」までもが世界を駆け巡ったことがあったが、その際には右手首にカテーテル痕らしきものが見られ、心血管治療(ステント治療)を受けていた可能性が指摘された。

 金正恩氏の健康状態を巡っては、その後も様々な観測情報が流れた。2021年12月の朝鮮労働党中央委員会第8期第4回総会の映像では、金正恩氏の後頭部が映し出された際、医療用テープと思しきものを貼って剥がしたような跡が見られた(上の写真)。

 これついて韓国紙・中央日報は当時、ある感染内科教授の次のような見解を伝えている。

「にきびが腐ったり、脂肪腫ができたりした可能性があるが、2つとも健康に大きく問題になるようなものではない」

 今までのところ、金正恩氏の健康異常説を巡っては、何らかの重大な事実が確認された例はない。だが、北朝鮮は絶対的な独裁国家であるだけに、独裁者である金正恩氏の健康情報は、体制の安定にかかわる重大事項なのだ。

(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

 今のところ、妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長がナンバー2としての地位を固めつつある。2020年の脱北者ビラ問題から対外強硬派としてのイメージを強めてきたのは、金正恩氏の身に異変が起きた際の備えとも取れる。

 一方、医療・保健インフラの脆弱な北朝鮮は、感染症の流行にも弱い。熱病の拡散状況と金正恩氏の健康状態はともに、北朝鮮の体制を脅かしかねない要素なのだ。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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