日銀のイールドカーブコントロールの手法
日銀の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の柱のひとつイールドカーブコントロールとは、短期金利と長期金利にそれぞれ目標値を設定し、その目標値に誘導するものである。
長期金利が上昇した場合などには例えば10年金利、20年金利を対象とした指値オペを実施する用意があるとしている。固定利回り方式による国債買入の場合には、買入予定総額に上限を設定しないことがあるとしている。つまり長期金利が大きく上昇するような場合には、それを日銀は無制限の国債買入で押さえ込むことも予想される。長期金利が想定以上に低下した際には、上記のような歯止めは持っていない。
ただし、このイールドカーブのコントロールは国債買入の増減によっても行うようである。9月30日に日銀は残存5年超10年以下の国債の買入をいきなり減額するという手段に出た。この日の夕方に発表される「長期国債買い入れの運営方針」で減額を発表すると思われたが、5年超10年以下についてはそれに先んじた。そして「長期国債買い入れの運営方針」では、10年超25年以下と25年超について減額が発表された。もちろん5年超10年以下はすでに減額され、その減額された金額でオファーされることとなる。この背景には、超長期国債の利回りをもう少し上昇させようとの日銀の意図が働いていた可能性がある。
ところが10月31日が日銀の金融政策決定会合初日であったため月末ではなく11月1日の夕方5時に発表された「長期国債買い入れの運営方針」では、一回当たりの買入額は残存5年超10年以下、10年超25年以下、25年超を含めてすべて現状維持となった。
今回も長いところを中心に減額されるのではないかとの見方もあった。大手生保などからはこの程度の超長期債の金利でも運用は難しいとのコメントもあったことで、もう少し超長期債の金利引き上げもありうるかと思われた。しかし、日銀は毎月のように減額してしまうとテーパリングと認識されるのを避けるためか、今回は現状維持とした。
今後も日銀はイールドカーブの微調整は、この国債買入の金額の増減によって行ってくることも予想される。ただし、過去の中央銀行の歴史上はじめてともいえるイールドカーブコントロールはまだ始まったばかりでもあり、日銀としてもこのあたり手探り状態にあるのかもしれない。今回は物価目標達成時期を先送りした展望レポートの発表もあったことで、こちらの変更は据え置いた可能性もある。