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エンジェルスを解雇された元職員が球団とMLBを提訴した裏に見え隠れするMLBの闇の部分

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
再びエンジェルス球団内でゴタゴタ騒ぎが起こった(写真:Angels Baseball via USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【エンジェルス元職員が球団とMLBを提訴】

 ESPNが現地時間の9月13日に報じたところでは、今年3月にエンジェルスから解雇処分を受けていた元球団職員が、球団とMLBを相手に提訴したという。

 元職員は、1990年からビジターチームのクラブハウスで選手の世話をしてきた、ブライアン・ハーキンス氏。同氏は先月28日に、エンジェルスが本拠を置くカリフォルニア州オレンジ郡の高等裁判所に提訴の手続きをとった。

 提訴の理由は不当解雇と、解雇に伴う誹謗中傷に対する損害賠償を求めるものだ。

【解雇理由は違法の滑り止め剤を投手陣に提供】

 ハーキンス氏が解雇されたのは今年3月3日のことだった。ESPNによれば、MLBから同氏が長年にわたり特製の違法滑り止め剤を投手陣に提供していたとの報告を受け、エンジェルスが即座に解雇を決めたという。

 ホーキンス氏が提出した訴状によれば、彼が製造していた滑り止め剤は、MLBでは使用を認められているロージンと松ヤニ2種類をブレンドしたものであり、違法の材料を使っていないとしている。

 またこの製造方法は、2004年までエンジェルスに在籍し、2005年からタイガースに移籍したオールスター出場投手(訴状では名前は明らかになっていないが、ESPNはトロイ・パーシバル投手だと断定)から教えられたもので、その投手から他の投手にも提供するように指示を受けていたという。

【ホーキンス氏がスケープゴートに?】

 さらに訴状によれば、特製の滑り止め剤の存在はエンジェルス内で広く認知されており、滑り止め剤はブルペン用のバッグの中に常備されており、誰もが使用できる状態にあったという。

 ホーキンス氏はあくまでチームのために滑り止め剤を製造し続けただけで、個人的な金銭目的ではなかったと説明している。

 つまりホーキンス氏は、MLBからの報告を受けたエンジェルスが滑り止めの存在を知りながら、製造者の彼の責任にして問題を片づけようとしたというわけだ。

 昨年もエンジェルスは、オピイド鎮痛剤の過剰摂取により、タイラー・スカッグス投手が遠征中に死亡した際に、鎮痛剤を提供していたのが球団職員(現在は解雇処分)だと判明し、物議を醸している。

 また他チームでも、アストロズやレッドソックスによるサイン盗み問題で騒ぎになるなど、まだまだMLBは表に出てこない闇の部分を抱えているようだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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