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大相撲9月場所に大きな風を吹かせた大の里が2度目の賜盃 新大関誕生への興奮と「新時代」到来への期待

飯塚さきスポーツライター
自身2度目の賜盃を手にした大の里(写真:東京スポーツ/アフロ)

まさに新時代の到来。大相撲9月場所は、大の里の場所であった。千秋楽を待たず14日目に決めた自身2度目の優勝、そして大関昇進への大きな一歩。さらには敢闘賞と技能賞のダブル受賞は、新入幕から5場所連続の三賞受賞。今場所は、話題も人気も記録もすべて、彼がかっさらっていった。

圧倒的な強さ!大の里の2度目のV

13日目には、取り直しの末に琴櫻を、そして優勝を決めた14日目には、一度も勝ったことのなかった豊昇龍を、力強いスピードで土俵外へ追いやった大の里。現役の両大関を撃破しての堂々の優勝となり、新大関への昇進も見事な形で決まった。奇しくも長年大関の地位を守り続けた貴景勝が引退を発表し、新たな大関が誕生するという「世代交代」の側面も垣間見える結果となった。

千秋楽は、惜しくも阿炎の思い切ったはたきに倒れてしまったが、13勝2敗の成績。他を寄せ付けない、威風堂々の優勝だ。来場所以降は大関として、そしてきっと近い将来はさらに上の地位で、角界をけん引する存在になってくれることだろう。

優勝インタビューでは、千秋楽の黒星への悔しさをにじませながらも、師匠である二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)への感謝を述べた。加えて、豪雨の被害を受けた地元・石川県へ「僕の優勝が、少しでも明るいニュースとして石川県に届いて、皆さんが元気になれば」とエールを送った。その笑顔は、石川県の方々の励みになるであろうことはもちろん、日本中を明るくさせる、爽やかなものであった。

若手の壁になったベテラン力士たちの活躍

そんな大の里に今場所土をつけ、自身初の殊勲賞を受賞したのは若隆景だ。大の里を撃破した相撲が評価されたとのこと。右ひざの大ケガから復帰し、幕内に帰ってきてくれた若隆景。来場所はまた、より上位で彼の相撲を見ることができると思うと楽しみでならない。

さらには最後まで優勝争いに残って健闘したということで、錦木が自身初の敢闘賞を受賞。皆の大きな壁となった錦木の力強い相撲が連日見られたことも、個人的に非常にうれしかった。同様に、大関経験者の霧島、高安も躍進。最後まで優勝の可能性を残した。また、37歳の宝富士は二桁勝利、途中休場があった北勝富士は千秋楽に勝って勝ち越しを決めた。「若手が活躍」「新時代突入」といわれるなかで、こうしたベテラン勢が強さを見せてくれたことも強調しておきたい。

あらためて、大の里という新たな風が吹いた今回の9月場所。新大関を迎える次の九州場所は、どんな1年締めくくりの場所になるだろうか。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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