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「それがなくなるのはイヤ」。「ロッチ」が語る二人の矜持

中西正男芸能記者
「ロッチ」のコカドケンタロウ(左)と中岡創一

 結成から丸15年を迎えたお笑いコンビ「ロッチ」。10月2日、3日にはオール新作の単独ライブ「銀座ロッチ」を東京・時事通信ホールで行います。中岡創一さん(42)、コカドケンタロウさん(42)ともにピンでも活動していますが「僕らにとってネタは世に出る“手段”ではなく、それ自体が“目的”なんです」と今の思いをストレートに語りました。

「この状況はおかしい」

 中岡:新型コロナウイルスの影響で、今回、初の試みとして、単独ライブの有料配信をやってみることにしました。実際に、劇場に来ていただくお客さんは会場キャパの半分くらいしか入れないので、配信も組み合わせて、いろいろな方に見ていただけたらなと。

 コカド:コンビで15年やってきましたけど、今までは配信という発想もありませんでした。なので、何ができるか、どうすれば面白くなるか手探りの部分もあるんですけど、こういうことをきっかけに幅を広げるのは大切なことだと思っています。

 中岡:15年。振り返ってみると、いろいろありましたね。“波”があったというか。

 コカド:10年ほど前は、単独ライブをやると中岡君が出てきただけで黄色い声援があがりましたからね(笑)。

 舞台に出てきた時のキャーキャーがおさまらなくて、なかなかネタに入れない。だから、最初にガス抜きというか、キャーキャー抜きをするためのネタを少しやってから、メインのネタを始めるみたいな工夫もしてましたもん。その頃はちょうど「爆笑レッドシアター」(フジテレビ)とかテレビにも出始めた時期で、お客さんもたくさん来てくださいましたし。

 中岡:ま、今の自分の姿を見ると、信じられないですけどね…。キャーキャーなんて。

 コカド:厳密に言うと、当時から「こんなキャーキャー、あるはずない。この状況はおかしい」という感覚はありました。さらに、リアルに言うと、僕ら自身がキャーキャーの対象になっていたというよりも、周りにいた「はんにゃ」とかがキャーキャー言われていて、その余波でキャーキャーを分けてもらっていただけなので(笑)、そら、そんな流れ、続くものではないです。実体がないといいますか。

 案の定、しばらくすると、キャーキャーはなくなっていくんですけど、そのペースがあまりにも一気というか…。「そら、予想はしてたけど、こんなになくなるか!」というくらいのなくなり方でした。

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「それがなくなるはイヤ」

 中岡:そこから徐々に、キャーキャーだけでなく、仕事自体もなくなっていきました。レギュラーが1本減り、また減り…。一番しんどかったのは、2013年あたりですね。

 コカド:レギュラーとしては「PON!」(日本テレビ)だけ。そこに毎週出してもらえていたので、まだ、いろいろなものをギリギリ保てていましたけど、もし「PON!」がなかったら、本当にキツかったと思います。マネージャーさんからも「このままだったら仕事がなくなる。なんとかしないと」ということも言われましたし。

 中岡:「なんとかしないと…」と思っても、何をやったらいいのか明確な答えはありません。ただ、そこで思ったのは、とにかく、とにかく、変わらず、ネタはしっかり作り続けようということでした。

 コカド:コンビによって、ネタを世に出るための“手段”ととらえる人もいますし、それが間違いでもない。ただ、僕らはそうじゃなくて、とにかくお笑いがやりたい。単独ライブがやりたい。ネタをすることが“手段”じゃなくて“目的”というか。しかも、仕事が減って時間ができた。より一層、あらゆる種類のネタが作れたのは今から思うととても大きなことでした。

 中岡:極端に長いネタ、ほとんどしゃべらないネタなど、いろいろな種類のネタを作りました。結果、その期間に作ったネタで15年に3回目となる「キングオブコント」決勝に行くことができ、そこからまたお仕事をいただけるようにもなったんです。

 好きだからネタを作り続ける。その積み重ねが、結局、自分たちを助けてくれもした。これはすごくありがたい流れではありました。

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 コカド:今考えても「ロッチ」のスタイルは、その時期があったから固まったものだと思いますし、これからもネタ作りは休まず続けていきたいと思っているんです。

 落語家さんやったら落語。漫才師さんだったら漫才。「『ロッチ』は何をするコンビなの?」と聞かれた時に、そこで一拍もおかず、スッと「コントです」と言いたい。それを言える自分でいることがうれしいですし、それがなくなるのはイヤだなと思うんです。お客さんがいてくださって、ウケて、自分らも面白いと思えていたなら、何歳になってもコントを続けていたいと思います。

 中岡:「さまぁ~ず」さんや「バナナマン」さんも今でもコントをやってらっしゃいますし、ライブを観に行かせてもらっても、すごく楽しそうにやってらっしゃる。

 そして、細かい話ですけど、楽しみにしているお客さんがたくさんいらっしゃるからこそチケットは売れるし、セットにしてもお金がかけられる。すごくしっかりしたセットを組んでらっしゃるのを見て、積み上げてこられたものの奥行きを感じてもいます。途中で辞めたらそこで終わり。あそこまで行こうと思ったら、やり続けるしかないんです。

 ま、ただ、70歳とかになったら、さすがに体力の衰えはあるでしょうしね…。セット転換中に早着替えをして、次のネタに飛び込んでいくような展開は厳しくなりそうなので、なるべくゆっくり転換してもらうよう頼みたいと思います(笑)。

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(撮影・中西正男)

■ロッチ

1977年12月8日生まれの中岡創一と、78年8月8日生まれのコカドケンタロウのコンビ。ともに吉本興業の養成所・NSC大阪校出身で、当時は別々のコンビで活動していたが、2005年に「ロッチ」を結成しワタナベエンターテインメント所属となる。「キングオブコント」では09年、10年、15年に決勝に進出。中岡が日本テレビ「世界の果てまでイッテQ!」に出演するなど、それぞれピンでの活動も。単独ライブ「銀座ロッチ」を10月2日(19時開演)、3日(14時開演、17時開演)と東京・時事通信ホールで開催。オール新作コントで、10月3日17時の回は生配信も実施する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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