表紙に顔がない電子雑誌のパッケージ的意義を問う
KNNポール神田です!
dマガジンをサブスクリプションして以来、本屋さんでの雑誌の立ち読みする機会が激減している。つまり、dマガジンの月額400円で読み切れないほど雑誌が閲覧できるからだ。
しかし、なんとも不思議なのが、時折、このような表紙が切り取られて見えない状態の電子書籍がラインナップされている。サービスに対して、有償で購読しているにもかかわらず、このように表紙が抜けているという『中途半端な商品』を読まされていることに対して違和感を感じざるをえない。
■出版業界で伸びているのは電子媒体のみ
2014年度の電子書籍市場規模は前年比35%増の1,266億円、電子雑誌市場規模は前年比88%増の145億円
http://www.impress.co.jp/newsrelease/2015/06/20150629-02.html
特に「電子雑誌」はスマホやタブレットの普及で市場規模としてはまだ小さいながらも急成長している。その中でもドコモの提供している「dマガジン」は、会員数200万人(2015年06月14日)を突破している。月額400円(税抜き)で 現在は160誌以上がラインアップされている。
「dマガジン」
つまり月額で8億円、年間96億円の売上となっている。電子雑誌市場規模の昨年と比較するとシェアは、66.2%となる。しかも6ヶ月ごとに100万人増加してきた経緯からすると電子雑誌市場の急拡大は想像しやすい。それは、単発の買い切り型の電子書籍ではなく、月額読み放題「電子雑誌」のサブスクリプションモデルによるところが大きいのだ。それと同時に、なによりも出版社が、電子雑誌に参入しても、紙媒体の実売にあまり影響をうけなかったことを理解したからかもしれない。やはり「雑誌」の読みやすさは紙に勝る。しかし、買ってまでは読まない…ような、立ち読みレベル層でもdマガジンのような「電子雑誌」ならば購読されたことにつながり、収益の分配を受けることができるのだ。つまり、リアル書店の「立ち読み」では収益が全く発生しないが電子雑誌ならば「読み放題」の恩恵を受ける可能性があるのだ。ある意味、電子雑誌のサブスクライバー(月額課金者)は、今まで雑誌を買わなかった層が読みはじめているとも考えることができる。
■某ジャニーズ事務所の電子媒体NG政策
業界では古くから、某ジャニーズ事務所所属のタレントはWebや電子媒体全般で掲載がNGということが常識である。しかし、なぜ?そのようにNGなったのかという話しはあまり聞く機会がない。情報ソースは秘匿させていただくことを条件に教えていただいた。その方はジャニー喜多川氏が、「お世話になっている紙媒体を守る為」という話しを古い先輩から聞いたことがあるという。「事務所のタレントを育ててくれたのは、テレビであり紙媒体だ。特に毎週、毎月、紙媒体の表紙を飾らせていただくことによって所属タレントは認知されてきた。しかしインターネットの媒体では、それらが勝手にコピーされてしまい、紙媒体さんの売上をないがしろにしてしまったからだ」という理由で「紙媒体を守る為に」全面NGになってしまったという。
■そろそろジャニー喜多川氏に電子雑誌のメリットをご進言すべき時期
もし、それが本当のNGの理由であれば、電子媒体が紙媒体の救世主になるのかもしれないこの事情をお伝えしないといけない時期なのかもしれない。もちろん、すべての電子媒体をNGにしているので、amazonにおける商品のパッケージにも、なにもタレントの顔が掲載されていない。ある意味、事務所の機会損失にあたることに関しても完全に「掲載NG」にしているところは、徹底している政策だから立派だと思う。
しかし、pinterestで事務所所属のタレントたちを検索してみるとどうだろうか?
おびただしいほどの画像が並べられている。何万人にも至る著作権侵害者からの「pin」が見事に共有されているのだ。「ジャニーズの不文律」も海外の写真共有プラットフォームにおいては、まったく意味がないことになっている。また、出版社が電子雑誌のサブスクリプションモデルの登場によって、紙媒体の直接的な売上に影響を受けることなく、利益を獲得できている市場が萌芽していることもジャニー喜多川氏にご進言するタイミングのように思う。
冒頭のような電子媒体のサービスを月額課金されている人にまで、所属タレントの顔を削除するというのは、テレビの歌番組で顔にボカシを入れられているのとなんらかわりがないと思う。
また、ジャーナリズム新聞社を親会社に持つ出版社までもが、「不文律のNG」を当然として、疑うことなく、平気で表紙に採用し完成されたパッケージ製品として、電子出版していることにも問題がきっとあるとボクは思う。