築地名物のジャンボしゅうまいと分厚いチャーシューはなぜ生まれたのか? 「幸軒」女将さんに聞く
ここ数年の昭和レトロブームも相まって、「町中華」の人気が再燃している。
昭和の時代から長く続く個人経営の町の中華屋さん。昔から通っている人からすると当たり前の風景だが、昭和を知らない若い世代からは“リアルに残る昭和”として新鮮に映るらしい。最近の町中華の人気店には若者客が増え、人気の再燃とともに客層も広がってきている。
先日11月27日放送のTBS系「サタデープラス」(MBS制作)に出演し、「マニア厳選!絶対行くべき町中華ランキング」を紹介させていただいた。タレントの彦摩呂さんとモデルのゆうちゃみさんと名店3軒を回った。
今回はその中で取り上げた築地の「幸軒」をもう少し詳しくご紹介する。
「幸軒」は築地場外市場の中にある。場所がとても分かりづらく、乾物屋の路地を抜けた奥にある隠れ家的なお店だ。
築地の町中華といえば「やじ満」「ふぢの」など名店がいくつかあったが、2018年の市場の移転とともに豊洲に移っている。その中で場外にある「幸軒」は貴重な存在だ。
1950年創業で、70年以上築地の町で愛されている。朝6時から営業していて、市場で働く人たちが朝から訪れる。毎日来る常連客も多いという。
三代目店主・佐藤あや子さんは町のお母さん的存在だ。なんと御年73歳。その若さの秘訣を聞くと、「毎日ラーメン食べてるからね」と言う。
名物の超ジャンボしゅうまい
看板メニューはなんといっても“しゅうまい”。1日300個出る超人気メニューだ。
一般的なサイズの4倍ほどの大きさのジャンボしゅうまい。豚ひき肉、玉ねぎ、生姜などを合わせた餡が皮から完全にはみ出るほどたっぷりと包んである。なぜこれほど大きいのか?
「先代の時代からあったメニューだったけど、時が経つにつれてどんどん大きくなってきたのよ。いっぱい食べてほしいという気持ちね」(佐藤さん)
餡は甘みが強く、片栗粉を混ぜてあるのでねっとり感も強い。口の中で豚肉の旨味と甘みが広がり、とても美味しい。
ここでの食べ方はソースとカラシ。醤油はつけない。ソースの酸味が餡の甘みと非常によく合う。途中、メンチカツを食べているかのような錯覚になるのも面白い。
お店の前の売店でも売っていて、築地の人気のお土産にもなっている。
大ぶりのチャーシューが自慢のラーメン
“ラーメン”は牛骨ベースのスープであっさりと作っている。牛骨を使うのは町中華ではなかなか珍しい。
臭み消しにニンニクと生姜をたっぷり寸胴に入れており、特に生姜がほんのり効いていてさっぱりと美味しい。朝に食べるにはベストなバランスだ。
その中でもひときわ存在感を放つのがチャーシューだ。
分厚いチャーシューが3枚贅沢に並ぶ。ジューシーで柔らかく、まさにご馳走だ。
ちなみに“チャーシューメン”にするとこんな状態になる。女将さんのサービス精神が溢れるボリュームだ。
自慢のしゅうまいとチャーシューを存分に味わうには?
しゅうまいもチャーシューもたくさん食べたい。そんなニーズに応えるのが“しゅうまい・チャーシュー盛り合わせライス”というメニューだ。
しゅうまい2個にチャーシュー2枚、たっぷりのご飯にスープが付く。自慢のメニューが両方楽しめるセットでオススメだ。
「幸軒」は、昭和から続く築地場外の活気をそのまま切り取ったかのようなお店。麺を茹でる大釜や目の前でスープを炊いている寸胴など、年季は入っているがこれぞ町中華。
ロケでゆうちゃみさんが「逆に新しい」と感心したとおり、昭和そのままを残した店内は若い世代には新鮮に映るだろう。
女将さんは夜の22時から毎日のようにしゅうまいを300個包み、朝4時ごろからラーメンを仕込む。まさに膝を打つ思いだ。
町中華は店主の高齢化から閉店を余儀なくされるお店も多いが、ここはその心配はない。女将さんはまだまだやりたいことがあるらしい。近日中に大きな発表もありそうだ。
幸軒
東京都中央区築地4丁目10−5
※写真はすべて筆者による撮影