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ドジャースの若きエースが提案する新人投手対象の「フェルナンド・バレンズエラ賞」新設の正当性は?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
新人投手を対象にした新たな賞の必要性を訴えたウォーカー・ビューラー投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ドジャースの若きエースが明らかにした提案】

 昨年8月に自身2度目のトミージョン手術を受け、現在今シーズン中の復帰を目指しリハビリに励んでいるドジャースの若きエースであるウォーカー・ビューラー投手が、ネット配信番組「Just Baseball Show」にゲスト出演し、野球界に向け興味深い提案を行っている。

 複数の米メディアが報じているところでは、ビューラー投手は新人王とは別にサイヤング賞のような新人投手専門の賞をつくるべきとの考えを明らかにしている。

 その上で同投手は新たな賞の名称について、1981年にMLB史上唯一の新人王とサイヤング賞をダブル受賞したフェルナンド・バレンズエラ氏の名を冠すればとのアイディアも明らかにしている。

【どうしても打者が有利になる新人王争い】

 「個人的にルーキー版のサイヤング賞が存在すべきだと考えている。

 自分がそうした賞を受賞すべきだったといっているわけではない。ただ自分の時はロナルド・アクーニャJr.とフアン・ソトに次ぎ投票3位だった。そして上位2人は試合で投げていない。自分は誰と競い合っているのということにならないだろうか」

 こう語るビューラー投手の発言内容は、決して的外れなものではないだろう。

 ほぼ毎日試合に出場する野手と、先発、リリーフともに登板試合数が限られてしまう投手では、どうしても試合の貢献度に差が生じてしまうもの。

 最近では野手と投手の貢献度を平等に比較できる「WAR(Wins Above Replacement)」などの指標が重要視されるようになっているものの、このWARにしても数値を上下させるのは出場試合数と成績だ。どうしても出場試合が多くなる野手が有利になる傾向に変わりはない。

 それを裏づけるように、過去10年間で新人王を受賞した計20選手のうち、投手はわずか5人しかいない。また新人王受賞対象者がア・リーグ、ナ・リーグに別れた1949年以降、両リーグとも投手が新人王を受賞したシーズンはわずか4度しかない。

 それだけ投手にとって新人王は、“狭き門”になっているのだ。

【サイヤング賞も1956年に枝分かれ】

 ちなみにオリジナルのサイヤング賞にしても、1911年からMVP表彰が続く中で45年後の1956年に誕生したものだ。

 もちろんMVPは野手、投手ともに受賞対象者になっているとはいえ、2000年以降のMVP受賞選手46人のうち、投手(大谷選手は二刀流なので除外)はたった2人しか存在していない。

 前述通り新人王も野手に偏る傾向が鮮明になっている背景を考えれば、投手として別の賞が欲しいと考えるのは決しておかしくないだろう。

 また名称をバレンズエラ氏の名を冠するというアイディアについても、番組出演者から「それいいね」と賛同を得ている。

【新たな賞設置は管轄する全米野球記者協会次第】

 MVP、サイヤング賞、新人王、さらに最優秀監督賞はMVPの管轄ではなく、全米野球記者協会(BBWAA)が管轄し、会員の投票で決定するものなので、BBWAAが納得しなければ新たな賞が誕生することはない。

 ただBBWAA管轄の個人賞とは別に、最近では選手会が管轄し選手投票による「プレイヤーズ・チョイス・アワーズ(Players Choice Awards)」も注目されるようになっているが、こちらも新人王枠は両リーグ1つずつしかないので、ビューラー投手の提案は相当ハードルが高いものだと考えるべきだろう。

 果たして同投手の声は、BBWAAにどの程度響いているのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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