子のインフルを理由に労働者に休みを命じた使用者には給料を全額払う義務があります。
この記事がヤフーニュースのトピックスとなっていました。
毎日新聞の記事で、社会保険労務士の方のご意見のようです。
この記事は、雇用しているパート労働者の子どもがインフルエンザにかかったことで、そのパート労働者に起因して次々と他の従業員もインフルエンザにかかってしまった経験を持つ企業が、子どもがインフルエンザにかかったパート労働者に休業を命じたというものです。
この場合、休業を命じられた労働者の給料について、記事では次のように言っています。
えーー! と、つい声を出してしまいますね。
ツイッターでは、労働問題に詳しい弁護士からすかさず次のようなツッコミが入りました。
これには私もまったく同意見です。
まず、使用者が使用者の都合で労働者に休みを命じる場合は、基本的には給料を全額支払う義務があります。
上記のツイートで中川弁護士が指摘するように、民法には、536条2項という規定があり、次のように定めています。
ちょっと難しいですが、この場合、債権者を使用者に、債務者を労働者に読み替えるとわかりやすいです。
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、
とは、
使用者の都合で働けなかったときは、
に読み替えます。
さらに、
債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。
は、
労働者は、賃金を受け取る権利を失わない。
と読み替えます。
つなぐと、
使用者の都合で働けなかったときは、労働者は、賃金を受け取る権利を失わない。
となります。
子どもがインフルエンザでもその労働者がインフルエンザになっているわけではありませんので、予防のために休むように命じるのは、会社の都合ということになります。
つまり、使用者の経営判断で、労働者の家族にインフルエンザにかかってしまった場合は休んでもらうと決めているわけですから、それにしたがって休む場合は使用者都合での休みとなります。
他方、問題の記事で指摘されている「ノーワーク・ノーペイ」とは、労働者が労働者の都合で仕事ができないときは給料を払ってもらう権利は生じないことを言います。
ですので、問題の記事では、全く違う場面に「ノーワーク・ノーペイ」の原則を当てはめてしまったということになります。
さすがに、この記事を信じて、無給で労働者を休ませる企業が出てきては困ります。もちろんインフルエンザの予防は大事です。社員を休ませること自体は悪いことではありませんが無給にするのはやめましょうということを伝えたく、この記事を残しておきます。