台風13号が関東接近 台風本体の雨に警戒とともに、接近前の局地的豪雨と線状降水帯の雨に警戒
猛暑日がストップ
9月6日は、東北南部から九州北部に秋雨前線が停滞し、台風12号から変わった熱帯低気圧の影響で太平洋側では、雨の所が多くなりました。
このため、日本で一番高い気温を観測したのは、広島と松山の34.8度であり、最高気温が35度以上の猛暑日の観測地点はありませんでした。
7月14日以来、54日ぶりに猛暑日が0となったのです。
1番多くの猛暑日を観測した8月3日の290地点(気温を観測している全国915地点の約32パーセント)に比べれば、様変わりです(図1)。
また、最高気温30度以上の真夏日を観測したのが294地点(約32パーセント)と大きく減っていますが、最高気温25度以上の夏日を観測したのが842地点(約92パーセント)と、高い数値です。
9月7日は熱帯低気圧と秋雨前線が一体化し、台風13号との晴れ間が広がりますので、5地点くらいで猛暑日、425地点くらいで真夏日、780地点くらいで夏日となり、一時的に厳しい残暑が復活する見込みです。
東京も、9月7日の最高気温の予想は32度、台風13号が接近する9月8日の最高気温の予想は28度で、その後も真夏日にはなっても猛暑日にはならない予報となっています(図2)。
最低気温も、25度以上という熱帯夜の予報が9月10日~14日にありますが、1週間以上にわたって連続するということはなさそうです。
熱中症警戒アラートの発表もなし
熱中症は暑さだけでなく、湿度などとも関係しています。
このため、熱中症対策に使われているのは、「暑さ指数(WBGT:Wet-Bulb Globe Temperature)」です。
「暑さ指数」は、気温だけでなく、湿度、日射・建物や地面からの照り返し(輻射)などの熱も取り入れた数値であり、湿度7:輻射熱2:気温1の割合で算出されるように、湿度の高さが重要な要素となっています。
「暑さ指数」の利用上の目安として、33以上:極めて危険、31以上33未満:危険、28以上31未満:厳重警戒、25以上28未満:警戒、25未満:注意となっています。
熱中症で救急搬送される人を減らすため、環境省と気象庁は共同で「熱中症警戒アラート」を発表していますが、発表基準となっているのは、暑さ指数33以上の「極めて危険」であるときで、前日17時と当日5時に発表となります。
9月6日に熱中症警戒アラートが発表となった地域は0となりましたが、7月1日以降、68日ぶりです。
令和5年(2023年)の熱中症警戒アラートの発表回数(前日17時と当日5時の発表をまとめて1回として集計)は、7月の前半までは前年、令和4年(2022年)より少ない発表回数で推移していたのですが、7月後半から急増し、すでに昨年の889地域を約36パーセント上回る1205地域に発表となっています(図3)。
今年の暑さは、熱中症対策が大きな問題となった昨年以上に暑かったのです。
そして、この記録的な暑さも、台風13号の通過によって終焉を迎えそうです。
台風13号の北上
日本の南にある台風13号は、発達しながら北東に進み、9月7日(木)から9日(土)頃にかけて関東甲信に接近するおそれがあります(図4)。
日本の南の熱帯低気圧の周辺は、海面水温が29度~30度と、台風が発達する目安の海面水温を大きく上回っているため、台風13号に発達したのですが、上層の風が大きく発達しにくい場となっていますので、暴風域を持つまでは発達しないと考えられています。
とはいえ、台風となった以上、最大風速が17.2メートル以上あり、しかも広い範囲の雨雲を伴っていますので、大きな被害が発生する可能性があります。
しかも、日本の東にある低気圧からのびる前線は、7日朝には東日本を通過する見込みです(図5)。
熱帯低気圧周辺の暖かく湿った空気が流れ込んでいるため大気の状態が非常に不安定となっており、この前線の活動が活発となっています。
東日本や北日本では、土砂災害の危険度が非常に高まっている所があり、そこに台風13号本体の雨雲がかかるという可能性があります。
台風13号接近前の局地的な豪雨と線状降水帯による大雨
台風13号が接近してきた場合には、大雨に警戒が必要ですが、その前に、9月4日頃から下層に熱帯由来の暖湿気が流入し、大気が非常に不安定となって局地的な豪雨が発生しています。
記録的短時間大雨情報は、これまで東北から北陸地方で発表となっていますが、9月7日も発表の可能性があります。
記録的短時間大雨情報
9月4日12時00分 栃木県・真岡市付近で約110ミリ
9月4日12時00分 茨城県・桜川市付近で約100ミリ
9月4日12時30分 栃木県・益子町付近で約110ミリ
9月4日13時00分 栃木県・宇都宮市付近で約110ミリ
芳賀町付近で約110ミリ
9月4日15時30分 栃木県・宇都宮市付近で約110ミリ
さくら市付近で約110ミリ
9月4日16時50分 栃木県・塩谷町付近で約110ミリ
9月5日16時00分 新潟県・糸魚川市青海付近で約120ミリ
9月5日21時30分 島根県・海士町付近で約100ミリ
9月6日8時40分 福井県・福井市付近で約80ミリ
9月6日8時50分 福井県・越前町上糸生で87ミリ
越前町付近で約80ミリ
9月6日10時00分 鳥取県・琴浦町付近で約90ミリ
9月6日14時00分 福島県・伊達市付近で約100ミリ
気象庁では、令和12年(2030年)までの10年計画で、線状降水帯の予測精度向上を目指していますが、令和12年まで待つことなく、完成した技術を用いた情報の発表を計画しています。
その第一弾が、令和3年(2021年)より始まった「顕著な大雨に関する情報」です。非常に激しい雨が同じ場所で降り続いている状況を、「線状降水帯」というキーワードを使って解説する情報です。
線状降水帯に関する情報の第2弾が、昨年、令和4年(2022年)から始まった全国を11の予報区に分けての「線状降水帯の半日前予報」です。
気象庁は、9月5日21時30分に「大雨と雷及び突風に関する全般気象情報」を発表し、台風12号から変わった熱低低気圧が接近する四国地方では、6日午前中から午後にかけて、線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があるとしました。
そして、次々に線状降水帯の半日前予報を発表しています。
【線状降水帯の半日前予報】
9月5日21時30分:四国地方では、6日午前中から午後にかけて、線状降水帯が発生。
9月6日0時30分:四国地方と北陸地方では、6日午前中から午後にかけて、線状降水帯が発生。
9月6日5時1分:四国地方と北陸地方では、引き続き6日午後にかけて、東海地方では6日午後から7日午前中にかけて、線状降水帯が発生。
9月6日11時6分:北陸地方では引き続き6日午後にかけて、東海地方では6日午後から7日午前中にかけて、伊豆諸島では6日夜から7日午前中にかけて、線状降水帯が発生。
9月6日16時44分:東海地方では引き続き7日午前中にかけて、伊豆諸島では6日夜から7日午前中にかけて、線状降水帯が発生。
線状降水帯の予報は、適中は4回に1回程度、見逃しは3回に2回程度といわれていますので、まだまだ精度が悪い予報です。
しかし、線状降水帯の予報が発表された時に線状降水帯が発生しなかった10回のうち4回は、3時間に140ミリ以上という大雨警報級の激しい雨が降っています。
今回も、線状降水帯予測情報が発表となった四国地方や北陸地方では線状降水帯は発生しませんでしたが、大雨警報を発表するほどの大雨が降っていますので、今後とも、線状降水帯の予報が発表された地方では厳重な警戒が必要です。
タイトル画像、図4の出典:ウェザーマップ提供。
図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図2の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図3の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。
図5の出典:気象庁ホームページ。