ランチで物議? スウェーデン政党が慣習を破る 極右との対話を開始
スウェーデン政界が揺れている。
中道右派の「キリスト教民主党」と、極右「スウェーデン民主党」の党首が、2日、「一緒にランチをした」のだ。
たかがランチ。されどランチ。
党首同士が「ご飯を一緒に食べながら、政治の話をした」というのは、重大な意味を持つ。
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この国では、極右に位置する「スウェーデン民主党」との連携を組むことは、他党では「タブー」とされていた。中道右派であれ、中道左派であれだ。
ネオナチに起源を持つスウェーデン民主党は、ほかの北欧諸国の極右よりも、より過激だと言われやすい。
移民や難民への受け入れに否定的な政党で、一部の党員の言動は差別的だと批判されてきた。
それにも関わらず、議会では第3政党であり、62の議席をもつ。
昨年の選挙では、中道左派・「社会民主労働党」の党首であるロベーン首相が、引き続き政権を担うことができた。
政界での極右の不人気のお陰ともいえる。
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中道右派陣営は、「穏健党」をリーダーに、全4党でグループを作り、新政権を計画していた。
しかし、議席がわずかに足りなかった。
それでも、政党らは、どうしても極右とだけは協力したくない。頑なに拒み続けた。
そのうち2党は、結局、対立していた左派と組むことを選ぶ。
こうしてロベーン首相は、政治は以前よりも右傾化するかたちで、首相の座を守った。
中道右派組は、そうして壊滅した。
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「話してみるくらい、いいのでは?」
もともとスウェーデン民主党とは「対話ぐらいしてもいいのでは」という姿勢を見せていたのが、「キリスト教民主党」だ。
「党の政治を実現できる可能性のある政党と、私たちは対話をする」
「ランチがこれほど注目を集めることに、理解に苦しむ」
同党のエバ・ブッシュ・トール氏は、地元メディアに答える(国営局SVT)
2人の党首は、医療制度、移民、エネルギー政策について議論。
スウェーデン民主党のジミー・オーケソン党首は、「楽しいランチだった」と語る。
未だに極右との協働を渋っている穏健党。
トール氏率いるキリスト教民主党は、「考えなおしてほしい」と、穏健党に圧力をかけている存在だ。
かつて中道右派グループで仲間であった2党、中央党と自由党。極右との対話に寛容的になりつつある元仲間の行動を、残念がっている。
いずれ、穏健党が「話をするぐらいなら」と姿勢を変えたとしても、今の情勢では不思議ではない。
そうすると、ロベーン政権の足元はぐらつき始めるだろう。
極右がこれほど嫌がられるのは、「ネオナチに起源を持つ」歴史、女性や移民に対する差別的な価値観に、他党がどうしても賛同できないからだ。
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たかがランチ、されどランチ。
「一緒に食事」をして、その写真を党首がSNSに載せるのは、いずれくる変化の可能性を予言する、無言のシグナルだ。
両党の「ランチ」は、こうして大きなニュースを集めた。
Photo&Text: Asaki Abumi
文章・撮影:あさきあぶみ(鐙 麻樹)