ドジャース入りする大谷&由伸投手を中国メディアも報道 野球人気がじわじわ高まる
オリックスからポスティングシステムでメジャー移籍を目指していた山本由伸投手がロサンゼルス・ドジャースと12年、3億2500万ドル(約463億円)で契約合意に達した。
先にドジャースと10年、7億ドル(約1015億円)で契約し、記者会見を行った大谷翔平投手とチームメイトになることになり、日本でも大きな話題になっているが、この話題は中国にも波及している。中国でも近年、じわじわと野球人気が高まっているからだ。
スポーツメディアや個人ファンが発信
大谷投手の新天地がドジャースに決定した12月10日(日本時間)、筆者は中国の微博(ウェイボー)などSNSを何度かチェックしてみたが、アクセスランキングのトップ20には入っていなかった。ふだん、日本の政界スキャンダルや芸能人の結婚・離婚、訃報などのビッグニュースはほぼ時差なく中国でも報道され、SNSの上位にもランクインするのが常なのだが、大谷投手のドジャース入りはランク外だった。
それを見て、筆者は「やはり、中国での野球人気はまだまだなのか……」と思ったのだが、今回、山本投手の契約合意を見て、中国のスポーツメディアの報道や、「大谷翔平」「山本由伸」のキーワードで改めて検索してみると、驚くほど多くの発信があることに気がついた。
たとえば、以下のようなコメントだ。
「やはり行き先は道奇(ドジャースの中国語)に決まったか!それにしても、7億ドルってすごいな。さすがだ」
「大谷投手と山本投手が同じチームに入るなんてすばらしい。彼らはアジアの光だ」
「まるで日本のスポーツアニメのようだ。夢みたいな大型契約。それに比べて中国は姚明(ヤオミン。中国の元プロバスケットボール選手。NBAで活躍)一人だけだな……」
このような投稿やコメントが多く、中には野球の専門的なことに言及しているものもあった。微博などのSNSで大勢の国民のアクセスが集中するランキングのトップ20など上位には入らなくても、野球ファンはじわじわと増えていることがうかがえた。
さらにコメントをチェックしてみると、以下のように、日本の中学・高校時代のスポーツ教育やスポーツアニメ、高校野球などのすばらしさとの関連性を指摘しているものがあった。
日本のスポーツ教育のすばらしさ
「アニメ『スラムダンク』が大好き。映画館で見たときには泣いてしまった。日本人は学生時代に思う存分、好きなスポーツに打ち込むことができて幸せだ。日本人の友だちに薦められて『タッチ』を見て感動した。子ども時代から今まで、野球をした経験は一度もないけれど、日本の高校野球を見ているとうらやましくなる」
「大谷選手がゴミ拾いをしたり、誰にでも礼儀正しく接したりしている姿を見ると、日本の青少年のスポーツ教育がいかにすばらしいものであるかわかる。中国はサッカーにあれだけお金をかけているのに、なかなかよい選手が育たないのは残念。長年の指導の積み重ねも大事だと思う」
昨今、日本のスポーツ界にはさまざまな問題が山積しているが、一方で、WBCの日本代表選手らの活躍を見ていると、そのチームワーク、相手へのリスペクト、礼儀正しさなどは一朝一夕にできたものではないことを私たち日本人も感じる。
中国でも野球人口は増えている
人口14億人の中国でもスポーツはさかんだ。とくに近年はオリンピックが開かれたこともあり、習近平国家主席の国威発揚のもと、多額の資金を投入して選手の育成を行っているが、中国が強いのは体操、水泳、卓球など個人競技や少人数の競技が中心。中国人はチームワークが求められるスポーツは苦手だ。
野球は9人と人数が多いこと、グローブなどの用具やユニフォームが高価であり、誰もが気軽にできるスポーツではないこと、グラウンドの設置や整備の問題、ルールが複雑であることなどの理由で、いまも幅広い層に人気があるスポーツとはいえない。
だが、2002年に中国野球リーグ(CBL)が発足しプロ野球チームができたことをきっかけに、少しずつ野球への関心は高まっている。
米MLB(メジャーリーグ)は中国の野球市場の将来性を考えて中国オフィスを設立。中国野球協会などと提携し、野球の普及につとめている。少年野球チームも富裕層を中心にでき始めており、ここ数年、「習い事」として野球を始める子どももいるなど、この10年ほどで野球人口は数千人規模にまで増えている。
今年3月のWBCで日本の侍ジャパンは中国に8-1と大勝したが、その試合を見て「中国チーム、意外に強かったな」と感じた日本人も多かっただろう。そうしたこともあって、日本人選手のドジャース入り、メジャーでの活躍に注目している中国人も増えている。
サッカーのワールドカップで日本チームを応援する中国人が多いのと同じように「同じアジア人の代表だ」という意識で、日本人選手のアメリカでの活躍を応援している中国人は案外多いのだ。