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日本への留学生を帰国後隔離へ 感染者急増も「冷静さ」が大切なワケとその根拠(NY知事緊急会見の概要)

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
ニューヨークのダウンタウンで、3月3日。(写真:ロイター/アフロ)

NYで感染者2人→11人に急増

3月1日、初のCOVID-19(新型コロナウイルス)感染者が確認されたニューヨーク。感染者は、渡航先のイランから先週夫婦でニューヨークに戻って来た医療従事者の39歳の女性だ。女性は病院で治療を受けず自宅で自ら隔離中で、回復に向かっているという。夫も検査を受けたが、結果は陰性だった。

3日には、新たにウエストチェスター郡在住、ニューヨーク市マンハッタン区のグランドセントラル駅周辺で働く弁護士の50歳の男性に、陽性反応が確認された。男性は重病で、現在ICU(集中治療室)で治療中。男性には持病があるという。

4日にはこの男性の家族(妻、大学生の息子20歳、高校生の娘14歳)と、この男性を病院に連れて行った近所の住民の計4人が、新たに陽性反応となったことがわかった。子が通っていた学校とその周辺の学校は、現在休校となっている。

また同日午後には、ウエストチェスター郡で新たに5人の感染も発表された。46歳の女性と45歳の男性の夫婦と3人の子どもで、45歳の男性は上記の50歳弁護士の友人という。この家族は現在、自らの場所で隔離中とされる。50歳弁護士の同僚8人は現在検査結果待ち。

ウエストチェスター郡は、マンハッタンのミッドタウンから北方に電車で1時間程度の距離に位置し、環境が良いため比較的裕福層が多く住むエリアとして知られる。また日本人駐在員家族も好んで住むエリアだ。

クオモ州知事が緊急記者会見

4日午前、アンドリュー・クオモ州知事は、州の保健局長のハワード・A・ザッカー(Howard A. Zucker)医師らと共に、記者会見を開いた。

以下、知事の会見の概要

(会見は、州の感染者が6人の時点)

日本に留学中の一部大学生、帰国後14日間隔離へ

SUNY(ニューヨーク州立大学)とCUNY(市立大学)に通いながら「海外留学プログラム」を利用して現在5ヵ国に留学中の大学生約300人は、チャーター機でニューヨークに戻り次第、14日間、市が用意をしたロングアイランドなど郊外の寮施設で隔離されることになる。

この5ヵ国とは日本を含む、中国、韓国、イタリア、イランが対象だ。

またアメリカは、過去14日間に中国とイランに滞在歴のある人の入国を禁止しているが、トランプ大統領は3日、ホワイトハウスの記者団に対して「日本の状況を注視している」と述べ、今後日本からの入国拒否やアメリカ市民の日本渡航を制限する可能性を示している。旅行やビジネス、留学などで日米間を行き来する予定がある人は、今後ますます注意が必要だ。

エピデミックとパンデミックの違い

人々がパンデミックになってはいけない理由

知事は、感染症の大流行を表すエピデミックとパンデミックの違いについても触れた。

エピデミックと、恐れに起因したパンデミックは違う。パンデミックはなぜ起こるか。人々に正しい情報が入ってこない。情報が入ってきてもそれを信じない。または入ってくる情報が人を恐怖に陥れるものだからだ。人々は、正しい情報が入ってきても疑いの心で聞く。そうなると、正しい判断ができない。「事実」を知り、冷静に受け止めることが大切だ。

80%が自ら治癒

知事は今後、新型コロナウイルス検査のキャパシティを、州内で1日につき1000人にまで増やす準備があることに触れつつ、

この新型コロナウイルスの感染力が高いのは明らかになっている。しかし80%の感染者が自ら治癒している。残り20%の重病患者は何らかの持病がある人や高齢者だ。6人の感染者のうち、持病のある50歳の男性だけが病院で治療を受け、39歳の女性は病院には一度も行かず、自宅隔離で快方に向かっている。これらの事実も(新型コロナウイルスへの対応の)ポイントだ。

厚生労働省のウェブサイトにも、このように書かれている。

「なお、中国疾病対策センター(中国CDC)によると、2月11日までに中国でコロナウイルス感染症と診断された約44000人のデータによると、息苦しさ(呼吸困難)などを認めない軽症例が80%以上と多くを占めており、呼吸困難が生じる重症や呼吸不全に至る重篤例は20%未満に過ぎないと報告されています」

検査=感染の認知により他人への感染を抑えることに繋がる

インフルエンザにしろ新型コロナにしろ、自覚症状がない人でもウイルス検査を多くの人が受ければ受けるほど、陽性結果が増えるのは当然だ。検査の意味とは、自分が感染していることを認知することで、他人(特に上記20%の人)への感染を抑えることに繋がるということだ。具合が悪ければ、出勤せず自宅にいることが大切。

クオモ知事は記者会見後のツイッターで、COVID-19検査の費用削減についても発表。

  • ニューヨーカーがCOVID-19検査をするのに、それらの医療費(の高さ)を障壁にはできない。健康保険会社に、検査、緊急治療室、緊急治療、医者の受診を含む新型コロナウイルスにかかわる費用のコーペイ負担を放棄することを新たに発令する。メディケイド(低所得者向け公的医療保険制度)を受けているニューヨーカーは、ウイルス検査の費用を負担する必要はない。

致死率と危険さは、その国の医療技術による

問題は致死率、そしてこの病気がどれだけ危険かということだ。CDC(アメリカ疾病管理予防センター)によると(国内では)新型コロナが1.4%前後、インフルエンザが0.6%前後。世界での致死率はWHO(世界保健機関)の発表で3.4%と言われているが、致死率やこの病気が危険か否かはその国の医療システムや医療技術にかかっている。我が国の医療は進化している。世界トップ規模の医療技術と施設を持ち、準備は整っている。

クオモ知事やザッカー保健局長は記者会見で、時おり微笑みを浮かべながら、ゆっくりと冷静に記者団に語り、改めて「過度の恐れや心配はまったく必要ない」ことを市民に呼び掛けた。

*留学生について一部に誤りがありました。記者会見の内容を再度確認後、修正を加えております。

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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