イートインからさらなる進化、「グローサラント」
イートインがさらなる進化するスーパー
これまでのスーパーに入ると、まず視界に飛び込んでくるのはみずみずしい野菜たち。そこから鮮魚、精肉と導かれ、最終、惣菜売り場にたどりつく。これが定番であった。
イートインからさらなる進化 それが「グローサラント」
それが今、売り場は劇的に変化している。
・イートインに隣接しているベーカリーを中心に惣菜商品の内容の変化、g量り売り惣菜を配置
・注文を受けて作るオーダー弁当を設置
その他に鉄板で作る卵焼きを顧客の目の前で見せ、パック詰めのみならず量り売りの惣菜の商品として陳列しているところもある。
イートインから次なるステージ、すぐその場で出来立ての商品を食べられる、いわゆる「グロサラント」が急速に広がっている。この言葉はアメリカで言われはじめ、グロサリー(grocer)とレストラン(restaurant)を組み合わせた造語である。すでにイートインはごく当たり前となってきつつある日本でもこの「グローサラント化」により外食・中食・内食といったカテゴリー分けさえも陳腐化してきているのだ。
スーパーがグローサラントにいく流れの要因として
グローサラントの流れが今、日本でも起こっている理由として
・外食の低迷からそこから顧客の奪取
・コンビニのイートインとの差別化
があげられる。人口減、そして高齢化からますます行動範囲が狭くなり、顧客の奪いあいを考えると、むしろコンビニを意識してスーパーはグロサラントが急速に広がっているのであろう。
コンビニでは、すでにイートインの設置はもちろんのこと、この他に人口減、単身者の急増に順応し、個食対応がなされている。そのためもあって単身者の半分がコンビニに流れてしまっている。
今後、ますますスーパーが行ってきた従来のファミリー提案だと当然、成り立たない。イートインの流れからよりその場で食べてもらえる提案がおのずと必要でこれがコンビニではできない出来立て感の打ち出し方であり、それがグローサラントなのである。
日本のグローサラント 「ヤオコー南古谷店」
今、グロサラント店として話題となっているのが、ヤオコー南古谷店。店内では、卵焼きを鉄板で上手にパートさんがくるくると焼き上げているところを顧客に見せて販売。注文をうけてから作るバイオーダーのどんぶりを提供、ランチの時間には出来立てのおかずを同一価格のg量り売りブッフェとして弁当に仕上がられるように提供している。
そこで南古谷店の売り場を見てみると
この図でもわかるようにベーカリーとg量り売り惣菜を中心に波状にそれに関連する惣菜が陳列され、儲からないとされてきたベーカリーを店舗内で焼き上げることで出来立て感を出し、コンビニとの差別化を図っている。
イートインは100席あり、フードコートがその回りをとり囲んでいる。
目玉とされているのがバイオーダーの弁当は注文を受けて、作る弁当で650円(650円か880円)を中心に繰り広げられ、ベーカリー近くに隣接されており、バイオーダーの売り場の前には、フードコートがあり、おなじみのファーストフードが出店している。
因みにバイオーダーの価格は、フードコートである外食を意識してか、外食価格より安く、通常の中食弁当より高め設定と微妙な価格設定となっている。
今回、g量り売り惣菜の弁当に注目した。
ランチは100g100円のg量り売り惣菜と弁当をドッキングさせカスタマイズ弁当
南古谷店ではランチの時間帯、つまり午後2時までは1g100円の惣菜として販売され、それをお弁当容器に詰める。まず顧客が自らごはん、パスタなどを150gよそってもらい、その後、30種類ほどあるおかずを選んでつめる(2時以降、価格が変更される)。ブッフェの売り場の横には、顧客自らが詰めた弁当をパートさんが計量し価格シールを張ってくれる。ブッフェ商品は全部で見学した日は31アイテムあり、選べる楽しさ、そしてアツアツの惣菜が並び、値段も手ごろで満足感のあるボリュームのある弁当が仕上がった。これまでイートインで弁当を食べている人はあまり見かけたことがなかったが、ヤオコー南古谷では弁当を食べている顧客を見ることできた。
そして商品がこれ
「おこのみ弁当」と名付けられ、盛り付けはわたくしがしたのであまりきれいでない。
昼間のピーク時、気になる点もいくつかあるが、イートインの次なる手としては面白い試みである。なぜならコンビニのイートインとの違いをうまく考えてg量り売りを弁当に仕上げているからだ。
ではコンビニとスーパーのイートインの利用の違いを述べてみる。
コンビニ、スーパーのイートインの違い、それは利用時間、ここに掘削
昨年同様、今年もイートインについてアンケート264名実施し、イートインといえど、コンビニとスーパーではその利用する時間帯、食する商品も微妙に違うことがわかった。
まず時間帯でみると、いずれの業態も午後の間食、つまりアイドルタイムに利用されることが多い。しかしランチにも利用されるのがスーパーであり、コンビニでは圧倒的に午後の間食に利用される。
次にイートインで食べる惣菜、弁当について質問をした。昨年同様、コンビニ、スーパーでいずれも「食べない」と回答した人が50%近くになったのが「弁当」だったのだ。
ランチにイートインを利用されることが多いスーパーにとって、これまで売り上げが見込め、ランチに利用される代表商品ともいえる弁当をイートインで食べてもらえたならば、イートインの利用により他の生鮮の買い上げ点数にも大きく影響する。
とはいえ、アンケートの結果は、おそらくこれまで通りの作り置き弁当をイメージしての回答だったのではないか。
話題となっているオーダー弁当ももちろんのこと、いろいろな出来立てのおかずを顧客の胃袋に合わせて好きな商品を詰められ、しかも値ごろであるならば、新たなる弁当の誕生であり、イートインで食してもらえるであろう。
スタバのthird placeのようにイートインも・・・
スタバが掲げている「家庭でもなく職場でもない第3の空間」third placeとしてイートインが活用されれば、これから辿るとされる日本の社会状況においてもスーパーは生き残れるであろう。
勿論、スーパーのグローサラントは店舗調理なゆえにロスの問題、人件費の問題もより重くのしかかってくるだろう。とはいえ、今年のFOOMA JAPANを見て、人と機械がうまくマッチすれば人件費もカバーできる時代に突入したと考える。
人口減、高齢化、行動範囲が狭くなっていくなか、いかに一人の顧客がリピートしてもらい、これを囲い込むことかがカギとなってくる。日本のスーパーのグローサラントにより、社会に順応し、確実に大きく変貌を遂げようとしている。