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アルゼンチン人コーチが語る「久保建英は元アルゼンチン代表のFWハビエル・サビオラに似ている」

林壮一ノンフィクションライター
The sky is the limit(可能性は無限にある)(写真:築田純/アフロスポーツ)

 5月12日、日本期待の久保建英(FC東京)が、ジュビロ磐田戦で決勝ゴールを挙げた。美しいボレーだった。

 本コーナーでお馴染み、セルヒオ・エスクデロに久保について訊いてみた。エスクデロはアルゼンチン出身。実兄は1979年ワールドユース東京大会であのディエゴ・マラドーナと共に世界一となったピチ・エスクデロ。息子は現京都サンガのエスクデロ競飛王。

 自身はアルゼンチン、スペインでプロキャリアを積み、アルゼンチンユース代表、ビーチサッカーアルゼンチン代表に選出された。引退後は、柏レイソル青梅、レッズ・ユース、埼玉栄高校、エルサルバドルのプロチームでの指導者を経て、現在はFC Futureで指揮を執っている。

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撮影:著者
撮影:著者

 久保建英は体が小さく、速い。正確なパスを出せます。能力は非常に高いですね。ドリブルが得意で独特のリズムがあって怖い選手です。アルゼンチンタイプと表現していいように思います。ストライカーではないですが、点をとりますよね。

 元アルゼンチン代表のFW、ハビエル・サビオラを髣髴とさせます。小さくて速くてゴールを決められて、狡賢いプレーが出来るという共通点があります。

 僕は、FC東京の長谷川健太監督を高く評価しているのですが、彼の育て方が久保に合っているように感じますね。久保の身体を見て「小さい」という判断をする監督だって、世界中には沢山いるでしょう。でも、長谷川監督は巧さを見ています。ずっと先発という訳ではありませんが、久保の使い方が上手いですよ。高いモチベーションを保てるようにしています。長谷川監督は、例えばドリブルしてボールを奪われたとしても「そんなんじゃダメだ!」と評価するタイプではありませんよね。繋ぐサッカーをベースに、ドリブルできる時にはやらせているところがいいです。

 昨シーズンの久保は、なかなかFC東京で試合に出られませんでしたから、その期間を横浜Fマリノスで過ごしたこともプラスです。

 久保はコパ・アメリカに挑む日本代表に選ばれそうですね。スタメンは厳しいにしても、少しずつピッチに立つことが、財産になるでしょう。南米勢との戦いは、相当ハードなものになる筈です。まさに肉弾戦です。

 でも、久保はバルセロナの下部組織にいた訳ですし、慣れている部分があるんじゃないかな。今、17歳ですよね。2年後には日本代表のエースになっている男です。

 日本代表は先のアジアカップの決勝でカタールに負けましたが、コパ・アメリカのレベルはアジアとは比較になりません。皆が“戦争”だと思ってピッチで戦います。日本代表は、計り知れない経験を積むことができるでしょう。出場国のなかで、レベル的には一番低い位置にいるでしょうが、やり方次第でサムライブルーがベスト8に入ることも可能だと僕は感じています。

 守って守ってカウンターを狙うではなく、激しいプレッシャーの中できちんと繋ぐサッカー、ボールをキープ出来るんだというところを見せたいですね。前からプレッシャーをかけ、サイドから抉る攻撃。両サイドバックがどんどんオーバーラップする姿が見たいです。

 かつて日本人がサッカーをやる様を、南米人は「初心者」「下手糞」と馬鹿にしながら見ていました。でも、もうそんな時代じゃない。ワールドカップでベスト8を目指していくんだという意志を、このコパ・アメリカで見せてほしいです。

 激しいディフェンスで潰され、削られながら、身体の入れ方、尻の使い方、ポジショニングなど、大いに学んで来てもらいたいです。生きた勉強になりますよ。

 久保はもちろん、チーム全体で学習して来てください! 

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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