ソフトバンクロボット、pepperは電気ヒツジの夢を見るか?
KNNポール神田です。
2014/06/05 舞浜アンフィシアター(元・シルクドソレイユシアター東京)でのソフトバンク発表会へ参加してきた。なぜ、東京フォーラムでないのか?と思ったが、シアター形式で見せたかった理由がよくわかった。
舞台にどの席からも注目しやすく観客席がせり上がっているからだ。照明が暗転し、舞台に現れたのは、世界初の右脳型のロボット「pepper」だった。
どことなく、「愛・地球博」や「つくば万博」的なオーディオアニマトロニクスの世界観演出が満載なのだが、センサーによって処理がなされ、クラウドで情報を集合知として進化し、自我をもって自律していく…というのが、このロボットのユニークなところだ。そして、また一番の特徴が、SDKが配布され、いろんなアプリによって動作が制御できるだけでなく、キャラクター開発まで可能になるというのだ。これは、いろんなクリエイターがロボット産業のアプリ開発に参入できることを物語っている。
この話と、今日のステージを見て思い出したのが、1984年のアップルのMacintoshのデビューのプレゼンテーションだ。
本日のプレゼンテーションは、まさにあの瞬間を彷彿させた演出だった。生まれたばかりのMacintoshは若きスティーブ・ジョブズに「お父さん」と初めて音声で語りかけた。天馬博士が、亡くなった息子トビオに命を吹き込み、「鉄腕アトム」が誕生した。フランケンシュタイン博士は、理想の人類を作り出す。子供のいなかった時計職人のゼペットは、木彫の人形をピノキオと名づけた…。そして2014年6月5日、孫正義は、ロボットに「心」を与えた。
今までのロボットやコンピュータはすべてプログラムによって制御されており、自分で考えて動くことはなかった。しかし、この「pepper」は、ロボット界のiPhoneであり、自由にアプリが開発されて、動作するようになるだけでなく、すべてのpepperが進化のための情報をクラウドに集積し、自我のための知恵として個々にダウンロードして進化していくという「自律進化型」のロボットなのだ。
孫正義は、「今日この日は、100〜300年後に『コンピュータがあの日から変わった』と言われる歴史的な日になるだろう」と語った。サイバーダイン社は、自律型ロボットT-800を生み出し、スカイネットを作る。スカイネットは機械が人間を支配する世界を作りだしてしまった(ターミネイター)。レプリカントと呼ばれる人造人間(アンドロイド)は、人間よりも人間らしい感情を持ち始めた(ブレードランナー、原作:アンドロイドは電気羊の夢を見るか)。
コンピュータが、変わった歴史的な日。Macintoshが1984年にGUIを持ったパーソナルコンピュータとしてデビューしてから30年が経った。誰もがコンピュータを手のひらに持つようになった。オフィスから、手書き文書が消えた。ペンではなくキーボードで仕事をするようになった。すでにプリントアウトせずにデータで共有し、テレビよりもスマートフォンの視聴時間が増えた。この30年で大きく変わった。
来年2015年2月から198,000円で販売されるpepper。当初は2014年9月から配布される開発者キットによるアプリが動作するロボットとしての実機としてのニーズが想定される。しかし、家の中に身長120cmのゲストがはいることによって、人類の生活は激変するのかもしれない。会話であったり、音声検索、ビヘイビアによる習慣から次のアクションをサポートすることなど、実現できることは山ほどある。
成熟したパソコン業界のCPUパワーとアプリのビジネスモデルが活きることだろう。新たなCPUが登場することにより、より高度なアプリの可能性が上がり、さらに新たなCPUを投入するという相互関係だ。それによってハードを2年ごとに買い換えてきた。
現在、家庭内ロボットで、動作で直接人類に寄与しているのは、せいぜい「ウォシュレット」程度である。家電などは10年前のものがまだ稼働していたりする。ロボット市場は産業界がメインであるが、パブリックな場面に、パーソナルな家など、人類がまだ経験しなかったマーケットを発見する機会は潤沢に残されていることだろう。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は経済産業省と共同で、ロボット産業の市場予測を公表し、2015年には1兆5,990億円、2020年には2兆8,533億円、2025年には5兆2,580億円、2035年には9兆7,080億円に拡大すると予測している。