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「産休・育休中は住宅ローンが通らない」という話、実際どうなの?

高橋成壽お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA
画像はイメージです。(提供:towatowa/イメージマート)

育児休業中の男性が住宅ローンの申し込みを断られたことを伝える新聞記事を受け、銀行の審査に疑問を投げかける投書が「大事な問題提起」とTwitter上で話題になりました。実際のところ育休・産休の影響で住宅ローン審査は厳しくなるのか、それはなぜか、回避する方法はあるのか、まとめました。

育休で住宅ローン審査に落ちるのか

育児休業中に住宅ローンが借りられないのは差別などではなく、休業中は働いておらず収入がないためです。住宅ローンを審査する側の立場からすると仕方ない面もあります。

住宅ローン審査で絶対に必要な項目として「収入(所得)」があります。銀行でも公的住宅ローン「フラット35」でも変わりません。一方、育休中は給料が出ませんから無収入状態になります。休業中の収入補填として雇用保険から支払われる育児休業給付は非課税扱いのため、課税ベースでは無収入状態が継続します。

復職後の収入をみてもらえないのかという疑問が生じますが、本人は育休後に復帰して元通りの収入を得る予定だとしても、実際その通りになるか確実ではないとみなされてしまいます。

育休取得前であれば問題なく住宅ローンを借りることができるような人でも、無収入では、銀行はお金を貸したくても住宅ローン審査を通すことができません。そもそも審査のステップに乗らないといってもいいでしょう。復職後に改めて審査を申し込むよう銀行からアドバイスされることになります。

ただ、住宅ローン審査の過程では、育児休業中か確認する機会がありません。事前審査や仮審査の収入の証明は、前年の源泉徴収票となり、前年並みの収入が続いていることを前提にしています。この段階では本人が申告しない限り、育休入りによる収入減に銀行側が気づくことは困難です。

住宅ローンには事前審査や仮審査の他に、最終的に複数の書類を提出する本審査を通過しなければなりません。年を跨いでの育休であれば、課税証明書などで年収が減っていることが確認されることもあり得ます。

審査落ちを回避する方法は?

審査落ちを回避する方法は3つあります。

1つ目は、育児休業開始前に住宅ローン審査を済ませ、住宅ローンを借りておくことです。住宅ローンは転職直後や独立開業直後、そして休業中に借りることは困難です。

2つ目は、復職してから住宅ローン審査に申し込むこと。そうすれば復職後の収入をもとに審査され、適切な住宅ローンが借りられるでしょう。

3つ目は、一部の金融機関に限定されます。公的住宅ローン「フラット35」に関してですと、復職前提の場合は育休開始年の給与の証明書、または復職後から住宅ローン申し込み期間までの給与証明書を勤務先に発行してもらいます。収入があることの証明書を提出することで審査が進みます。給与証明書に似た書類として、勤務先に復職予定証明書を発行してもらい、復職後の収入を証明するという方式もあります。※例外的取り扱いのため、詳しくは金融機関にご相談ください。

収入証明書、復職証明書の場合は、従前の年収と同額とはならないでしょうから、住宅ローン審査は意に沿わず否認や減額(申し込み額より少ない金額の融資であれば借りられる)となる可能性もあり得ます。

育休など黙っていればわからないだろう、という意見もあるでしょう。育児休業中であることを伏せれば仮審査の否認は回避できるかもしれません。

ただし最終的にお金を借りる段階になって、課税証明書などを通じて審査に落ちた場合、マイホームの売買契約を取り消せるか不透明という懸念が生じます。通常は住宅ローン審査に通らない場合は売買契約を取り消す内容の住宅ローン条項が盛り込まれています。しかし、最悪の場合は売買契約が取り消せず、お金が借りられないという事態もあり得ます。

審査に落ちると、信用情報にキズはつく?

さて住宅ローン審査に落ちると「信用情報にキズがつく」ことになるのでしょうか。これは誤解です。信用情報というのは、お金を借りる際にその人の過去の借り入れやクレジットカードの利用歴を照会し、今回お金を貸しても大丈夫かどうか確認するための銀行等業界のデーターベースのことを指します。

信用情報にキズがついた状態を「ブラック」と呼ぶようです。しかし、住宅ローン審査では通常の返済ができているかどうかをチェックするだけです。そもそも「ブラックリスト」なるものは存在しません。

信用情報にキズがつくのは、借りたお金を返済できなかった場合と、分割払いなどの支払いが適切にできなかった場合です。支払いができない月があると、信用情報に適切に返済しなかった履歴が残ります。そうすると、住宅ローンの他、マイカーローン、教育ローン、追加のクレジットカード契約などに支障が出てくる可能性があります。

また、仮に審査に落ちたとしても、信用情報にキズがつくわけではなく、ブラックリストに載ったわけでもありません。次のステップは他の金融機関で改めて住宅ローン審査を申し込んでみる、または復職してから住宅ローン審査を申し込むという選択となります。

銀行側に求められること

銀行としてはまず、休業期間中に住宅ローン審査ができない、あるいは否認事由になる場合、その旨を住宅ローン申込書の表紙などに大きく表示するべきでしょう。

また、銀行はそもそも、育休・産休中に住宅ローン融資を決めることは不可能なのでしょうか。ポイントは、申込者のメインバンクかどうかではないかと考えます。

給与振込やクレジットカードの引き落とし口座のあるメインバンクであれば、申し込み者の長年の入出金履歴からお金の管理が堅実かそうでないか、収入が安定しているかどうか判定できます。日常の資金の出し入れは、審査する上で大きな判断基準になるのではないでしょうか。

男性の育休取得がいまだまれな事例であること、育休終了のタイミングで退職したり連続して育休を取り続けたりという事例もあり、育休取得と住宅購入のタイミングが重なる可能性は十分あります。家計プランが実現しやすい環境が整うことを願います。

お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA

日本人が苦手なお金を裏も表も解説します。お金の情報は「誰がどんな立場から発信したのか見極める」ことが大切。寿FPコンサルティング、ライフデザインセンター代表。無料のFP相談・IFA相談マッチングサービスとして「ライフプランの窓口」「住もうよ!マイホーム」「アセマネさん」を運営。1978年生神奈川県藤沢市出身。慶応大学総合政策学部卒業後、金融関係のキャリアを経て有料FP相談を開始。東海大学では非常勤講師として実務家教員の立場から金融リテラシー向上の授業を担当。連載:会社四季報オンライン。著書:ダンナの遺産を子どもに相続させないで。メディア出演、メディア掲載多数。

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