津波避難タワーは増加傾向!南海トラフ地震だけじゃない、日本海溝・千島海溝型地震でも津波が襲う
南海トラフ地震については、メディアでも取り上げられていますね。しかし、大きな津波被害が予想される大規模地震は、他にも存在するのをご存じでしょうか?
それは『日本海溝・千島海溝型地震』です。「津波避難タワー等」の全国件数が、2021年(令和3年)4月の調査時の502件から、2023年(令和5年)4月では550件へ、約1割増加しています。
今回は、南海トラフ地震と日本海溝・千島海溝型地震による、津波から命を守る避難施設の現状をお伝えします。
日本海溝・千島海溝型地震とは
「日本海溝・千島海溝型地震」とは、房総半島東方沖から択捉島東方沖までの日本海溝と千島海溝、その周辺の地殻の境界や内部を震源とする大規模な地震のことです。
地震による影響範囲は上記のマップのとおり、272市町村(1道7県)と広い範囲に震度6弱以上の揺れが想定されています。
2021年(令和3年)の調査発表では「日本海溝・千島海溝型地震」は反映されていない
上記は、2021年(令和3年)に内閣府が公開した「津波避難施設の整備数」です。
この時点では、南海トラフ地震の影響範囲の数字のみ公開されていますが、実は全国の総数には、日本海溝・千島海溝型地震による津波避難施設もカウントされていたのです。
南海トラフ地震防災対策推進地域には「特別強化地域」も含まれる
▼南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域
上記の2つの図を確認すると「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」(以下、特別強化地域)は、139市町村(1都13県)ですが、707市町村(1都2府26県)におよぶ「南海トラフ地震防災対策推進地域」(以下、対策推進地域)に全て含まれています。
つまり、津波避難施設の整備数の対策推進地域における津波避難ビル棟数12,981棟と、津波避難タワー等435棟の中に、特別強化地域の津波避難ビル5,482棟および、津波避難タワー等385棟は含まれているのです。
▼全国と津波避難対策特別強化地域との棟数
- 全国の津波避難ビル15,304棟の内⇒2,323棟
- 全国の津波避難タワー等502棟の内⇒67棟
上記の差分の棟数は、日本海溝・千島海溝型地震の影響地域や他の地域にあると推測できます。
2023年(令和5年)4月公表の津波避難施設の整備数
最新となる2023年(令和5年)4月公表の「津波避難施設の整備数」には、日本海溝・千島海溝型地震 防災対策推進地域の、施設数も公表されています。
確認すると、津波避難タワー等の全国整備数は、前回の502棟から550棟に1割程度増加しています。ただ、津波避難ビルは前回の15,304棟から14,726棟へと578棟が減少!減少した理由としては、以下の原因が考えられます。
- 耐震性や安全基準の見直し: 新たな耐震基準や安全基準の導入により、既存の津波避難ビルが基準を満たさなくなり、指定から外された可能性があります。
- 建物の老朽化や用途変更: 避難ビルとして指定されていた建物が老朽化や用途変更により、避難施設としての機能を維持できなくなった場合、指定が解除されることがあります。
- 新たな津波浸水想定の公表: 国や自治体が新たな津波浸水想定を公表し、それに伴い避難計画や避難場所の見直しが行われた結果、避難ビルの指定状況が変更された可能性があります。
日本海溝・千島海溝型地震も、特別強化地域は防災対策推進地域に含まれる
▼日本海溝・千島海溝地震津波避難対策特別強化地域
上記の2つの図を比較すると、防災対策推進地域に特別強化地域が含まれていることが分かります。
そのため、日本海溝・千島海溝型地震においても、特別強化地域の津波避難ビルと津波避難タワー等の棟数は、防災対策推進地域の棟数に含まれます。
令和3年と令和5年の避難施設数比較一覧!
最後に、内閣府が公表している令和3年(2021年)と令和5年(2023年)の、津波避難施設数の比較表を作成しました。
津波避難ビルについては、大阪府が-1,277棟と大きく減少しているのが特徴です。ただ、一覧を見ると津波避難ビルを設置している県は、南海トラフ地震や日本海溝・千島海溝型地震の影響を受けない、新潟県や富山県、石川県、福井県など、日本海側でも設置されていることが分かりました。
どうやら全国的に、太平洋や日本海など海に面している自治体では、津波対策が行われているようです。
このように、津波避難ビルは578棟減少していますが、津波避難タワーは48棟増加しています。津波避難ビルは一般的に、民間の施設と提携している場合が多いため、このように大きく数字が変動します。
一方で津波避難タワーは、自治体が予算を組んで設置するため変動が少なく、減少するよりも増加していく傾向が強い特徴があります。
いずれにしても、記事内で紹介した「南海トラフ地震」と「日本海溝・千島海溝型地震防」の、防災対策推進地域にお住まいの方は、津波避難ビルや津波避難タワーの場所を確認しておきましょう。