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「もう一度、日本で……」4大会連続出場のWBCに“進退”をかける元ヤクルト・ロマン

菊田康彦フリーランスライター
2013年のWBCでも2試合に投げたロマン。今回で4大会連続の出場となる(写真:ロイター/アフロ)

いよいよ2017年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)開幕まで、残り2週間を切った。王座奪回を狙う日本を含め、参加チームは全16カ国。その中には、侍ジャパンとの対戦を心待ちにしている選手がいる。

「日本を相手に投げてみたい。考えるだけでワクワクする」

「日本と対戦したいね。スワローズからはヤマダ(山田哲人)とアキヨシ(秋吉亮)が出るんだろ?」

そう話すのは元東京ヤクルトスワローズで、これでプエルトリコ代表として4大会連続のWBC出場となるオーランド・ロマン(38歳)だ。

「そのためには今年も決勝ラウンドまで行かないと。ウチはマイナーリーグの選手が多いけど、みんな若くて才能があるんで、今回も自信はあるよ」

プエルトリコは前回、2013年の大会で初めて決勝ラウンドに進出。準決勝で日本を破ったものの、決勝戦ではドミニカ共和国の前に屈している。しかも、第2ラウンド最終戦に先発していたロマンは、準決勝でも決勝戦でも投げることはできなかった。

「だから今回は日本を相手に投げてみたいんだ。考えるだけでワクワクする。WBCでは先発でいくかロングリリーフになるかまだわからないけど、どっちも経験があるから問題ないよ」

ヤクルト時代も、チーム事情に応じて先発もリリーフもこなしてきた。昨年は台湾プロ野球(CPBL)のLamigoモンキーズで、先発25試合を含む34試合に登板。リーグ2位の12勝(7敗)、同3位の防御率4.64という成績を残している。

ウインターリーグに参戦、カリビアンシリーズを制覇

台湾のシーズン終了後も長いオフは取らず、12月からはプエルトリコのウインターリーグ「リーガ・デ・ベイスボル・プロフェシオナル・ロベルト・クレメンテ」に途中参戦した。12月29日のアグアディージャ戦では先発として6回を4安打、2失点にまとめて勝利投手になるなど、ここでも先発3試合を含む5試合に投げ、1勝1敗、防御率2.12をマーク。所属するクリオーヨス・デ・カグアスはプエルトリコ王者に上り詰め、中南米5カ国の優勝チームが一堂に会してチャンピオンの座を争うカリビアンシリーズに駒を進めた。

そのカリビアンシリーズ、カグアスは予選リーグで苦戦しながらも「ノックアウト・ステージ」と呼ばれる決勝トーナメントに進出。ロマンは準決勝のスリア(ベネズエラ)戦に先発すると、5回まで7奪三振、1失点の力投でチームを決勝に導いた。そして、カグアスは続く決勝戦でもメキシコ優勝チームのメヒカリを破り、見事に王者となった。

「プエルトリコのチームが優勝するのは17年ぶりなんだよ。ウインターリーグで投げるのは6年ぶりぐらいだったんだけど、本当にうれしいね」

自身にとって初のカリビアンシリーズ制覇にそう喜びを口にするロマンだが、これに満足してはいない。次なる狙いは、前回大会で逃したWBC王者の座。そこには彼なりの思惑もある。

「ベストを尽くして、もう一度、日本で投げるチャンスをもらえたらと思ってるんだ。昨年は台湾で投げ、ウインターリーグでも投げたけど、どこからも声をかけられていない。このWBCは3度目のテストみたいなものだね(笑)」

古巣のヤクルトからは国際スカウトの職をオファーされており、もし選手としてどこからも声がかからなければ「現役をあきらめて、またスワローズファミリーの一員になるかもしれない」というロマン。「今は状態もいいし、ベストを尽くすだけだよ」と、まずは自身にとって4度目となるWBCの舞台で“3度目のテスト”にかける。

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フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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