【河内長野市】まるで大河ドラマのBGM!大楠公とベートーヴェン両方聴ける河内長野フィルハーモニック
河内長野といえば、一般的には山に囲まれた自然、それから3つの日本遺産をかかえる歴史の町という印象が強いですね。しかし、あまり知られていませんが、実は芸術的活動もさかんな街。趣味としている人たちだけでなく、プロとして活躍する人たちも多く住んでいます。
音楽を例に取ってみると、市民楽団も複数存在していて、そのうちのひとつが河内長野フィルハーモニックという楽団です。
そして、5月14日に河内長野フィルハーモニックの定期演奏会が行われるという情報をある方から伺いました。
とても気になりましたので、河内長野フィルハーモニックの代表である松原茂樹さんとコンタクトを取り、リハーサルの様子を見学させていただくことになりました。
ところで、音楽に関しては本当に知識のない私は、根本的なことを理解していませんでした。
そこで事前に調べたところ、フィルハーモニックはオーケストラ(管弦楽団)の一種で、弦楽器を中心にあらゆる楽器の演奏集団なんだそうです。
ということでリハーサル当日、会場のラブリーホールにやってきました。
松原さんによれば、河内長野を第二の故郷とし住んでいた「魂のチェリスト」と呼ばれたジョージア出身の演奏家、故ギア・ケオシビリの後援者の方たちが発起人となって、2017年に設立したのが河内長野フィルハーモニック。
そして、2018年3月に最初の定期演奏会を実施したのだそうです。
現在、フィルハーモニックの団員は61名。河内長野市内の人は半数弱で、残りは他の自治体から参加しています。年齢幅も広く、16歳〜93歳が在籍し、中にはフランスからの留学生も。
驚くべき93歳の方は、ヴィオラ担当。家族の方が河内長野に住んでいらっしゃることもあり、宿泊を兼ねて豊能町から練習に来られているそうです。
団員の内訳は、ヴァイオリン19名、ヴィオラ4名、チェロ9名、コントラバス2名、パーカッション3名、フルート4名、オーボエ3名、クラリネット3名、ファゴット1名、ホルン4名、トランペット5名トロンボーン3名、チューバ1名。
結成までの流れを聞いて驚きました。通常は核となる人物がいて、その人の友達や知人が集まって団員が増えていくのだそうですが、河内長野フィルハーモニックは核となる人が無い状態で、広報かわちながので募集したところ、いきなり40人も集まったそうです。
これは悪い言い方をすると「烏合の衆」。経歴もキャリアもバラバラな人が集まってスタートしたわけですが、お互い力を合わせてまとまっていき、今ではハイレベルと自負する楽団になったそうです。
また60人もの団員がいる市民楽団は、非常に人数の多い編成なんだそうで、河内長野よりもはるかに人口が多い市でも15人程度のところもあるそうです。
この画像の指揮を執っているのは、常任指揮者の佐々木宏さんです。ところが、河内長野フィルハーモニックはもうひとり、ジョージア出身の常任指揮者ザザ・ゴグアさんがいらっしゃっいます。
常任指揮者がふたりいて、交互に練習するような楽団は非常に珍しいとのこと。松原さんによれば「これは楽団員にとっては非常に贅沢でありがたいことなんです」ということなのだそうです。
ここでふたりの常任指揮者の経歴に触れていきましょう。
佐々木宏さんは桐朋学園大学音楽学部卒業後、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団でコントラバス奏者の活動を経て、指揮活動に専念されています。
八尾フィルハーモニー交響楽団常任指揮者、クレー管弦楽団音楽監督常任指揮者、浜松市民オーケストラ音楽顧問を務めながら、河内長野のフィルハーモニックには創設以来常任指揮者としてか関わってくださっています。
ザザ・ゴグア(Zaza GOGUA)さんは、1966年ジョージアの首都トビリシに生まれました。グルジア国立室内管弦楽団、トビリシ交響楽団の首席ヴィオラ奏者、ドイツ・インゴルシュタット室内管弦楽団の首席を務めたのち、1996年に来日。
現在の大阪交響楽団に先に入団していた故ギアさんの招きで来日。もうおひとりのゴキさんを含めて3家族のジョージア人が、当時、楽団の練習が行われていた河内長野に住みました。
その頃、日本国内に住むジョージア人はとても少なかったそうで、12人も河内長野に住んでいるということで、たいへん話題になったそうです。
練習場が河内長野から堺市に移転してからも、ザザさんは河内長野に残りました。こうして佐々木さん同様に、河内長野フィルハーモニックの創設時から常任指揮者として活躍されています。ザザさんは「河内長野の街は文化的だ」と、とても気に入ったそうです。
ザザさんは、その他「心斎橋ミューズオーケストラ」で指揮者として指導、トビリシ弦楽四重奏団メンバー、「アンサンブル・神戸」の首席奏者でもあるそうです。
こちらはコンサートマスターの吉矢千鶴さんです。コンサートマスターとは、オーケストラの各奏者を統率して、指揮者の意図を音楽に具現化する役職で、第2の指揮者ともいわれる立場です。
吉矢さんは6歳よりヴァイオリンをはじめ、第17回和歌山音楽コンクール弦楽器部門大学生以上の部第二位入賞、関西を中心に演奏活動を行っています。また個人やアンサンブルの指導もされているそうです。
アンサンブル「ムジカ・ステランタ」、「アンサンブル・ビューティ」、声楽と菅弦楽器のアンサンブル「HERBrillante」のメンバーです。河内長野フィルハーモニックのほか、都島ストリングスなどの市民楽団でも、コンサートマスターを務めておられるそうです。
ここで楽団とは別に黄色い服を着た女性が現れました。歌手の雪月花Reiさんで、ノバティながののイベントで歌を披露されていた方です。
さて、ここでなぜ雪月花Reiさんが登場したのかといえば、松原さんの話では、河内長野フィルハーモニックは地元の音楽家と連携する、親しみやすい楽曲をプログラムに入れるというポリシーがあるからだそうです。
前回の第4回定期公演では、あのサキタハヂメさんが作曲した風景組曲「モナリ・ヒザリ 森7割・人3割」という曲を演奏しました。
今回の定期演奏会では、雪月花Reiさんのオリジナル曲『Requiem〜大楠公へ捧ぐ〜』の演奏があります。
そしてこのリハーサルの日だけ特別に雪月花さんが歌を披露し、それに合わせて演奏が行われました。実はこれには非常に深い意味があることをこの後知ります。
大楠公へ捧ぐの歌と共に演奏した後、もう一度楽団だけで演奏をしたのですが、その時の演奏が見違えるように勢いが出たのです。
後で佐々木さんにお話を伺ったところ、オタマジャクシ(楽譜)の譜面通りに演奏はできるが、どうしても機械的になってしまうとのこと。
しかし歌ってもらうと、その歌の意味を耳で聴くことにになり、演奏に感情が移入できて音楽に勢いが生まれるのだそうです。
この後、この曲のオーケストラ編曲担当の安井恵一さんによる指導が入りました。
そのあとの演奏です。同じ曲なのに、さらに演奏がドラマチックになったのです。ちょうど河内長野市を中心に、大楠公を大河ドラマに誘致する運動をしていますが、あたかも大河のオープニングを連想できるような演奏になっていたのです。
このように、どんどん素敵になっていく演奏を聴かせていただけたことは、とても光栄なことでした。
ちなみに安井さんの経歴をお伺いすると、国立音楽大学作曲専攻卒業後、2012 年大阪府立長野高等学校 40 周年記念作品「合唱と吹奏楽のための Anniversary」の作曲を手掛けたそうです。
その後、2017 年に国立音楽大学「卒業演奏会」にて「オーケストラのためのおとぎ話のようなミニマルミュージック」が演奏され、楽譜は同大学図書館に所蔵。
また連続テレビ小説などの映像音楽や、ミュージカルなどの音楽にアシスタントとして参加。合唱曲の作編曲も手がけているそうです。安井さんは長野高校との縁もあり、わざわざ関東からこの練習のために来てくださいました。
さて、今回のコンサートは前売券が1000円、当日券が1500円と、市民楽団とはいえ、ずいぶんとリーズナブルな料金だと思ったのです。
その理由を聞くと、団員の団費のほか、共催団体としてラブリーホールから練習場としての無償提供、さらに河内長野市役所、教育委員会、市内の企業や市民の方々の支援を受けて活動しているからだそうです。
過去の経歴を見ると、定期演奏会以外に、2019年に天見小学校での訪問演奏会、2022年には菊水町にある地元企業、東尾メックさんでコンサートを行っています。
今後は、河内長野市を盛り上げるオーケストラ団体として、より幅広く活動されていきたいと、松原代表が話されていました。
午後からはザザさんが指揮をするリハーサルが始まりました。
その様子を少しだけ動画に録りました。
ザザさんの指導方法は、優しく包み込むように指導する佐々木さんとは全く違う印象で、強いダメ出しもあり、良い時は褒めるというメリハリのあるものでした。
異なるふたりの指揮者に指導を受けながら演奏を続ける楽団の皆さんは、松原さんが言うようにとても贅沢なことなんだというのがわかります。
河内長野フィルハーモニックでは、毎回ベートーヴェンの交響曲を取り上げてきているそうで、今年はベートーヴェンが音楽家にとって致命的な難聴の苦難を乗り越え、新たな飛躍の一歩となった傑作、交響曲第3番「英雄交響曲」を演奏するそうです。
この曲のことを調べると、ベートーヴェンがナポレオン・ボナパルトを讃える曲として作曲されたもの。しかしその後、ナポレオンが皇帝になったので失望したという逸話があるそうです。
第五回定期演奏会では、このほかにもヴェルディやシベリウスなど、オーケストラの醍醐味を楽しめるプログラムで構成しています。席にはまだまだ余裕があるそうなので、ぜひ地元オーケストラの生演奏を聴いてみてはいかがでしょうか。
団員も募集しているそうです。高校生以上で合奏経験が3年以上、楽器を持っている方であれば、入団金2,000円(学生1,000円)月額3,000円(学生1,500円)で参加できるそうなので、興味のある方は問い合わせてみましょう。
ラブリーホール(河内長野フィルハーモニック)(外部リンク)
住所:大阪府河内長野市西代町12-46
連絡先:info@kawachinagano-philharmonic.com(河内長野フィルハーモニック事務局)
演奏会日時:5月14日日曜日 13:30開場、14:00開演
演奏会料金:前売:一般1,000円、高校生以下500円
当日:一般1,500円、高校生以下750円
アクセス:南海・近鉄河内長野駅から徒歩10分
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