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都議会で塩村議員に向かってセクハラ野次を飛ばした都議は、名乗り出て、謝罪し、そして辞職すべき

佐々木亮弁護士・日本労働弁護団幹事長

6月18日の都議会で塩村文夏都議(みんなの党)の一般質問の発言中に、男性議員らから「早く結婚した方がいいんじゃないか?」などの野次が飛んだそうです。塩村都議は、受動喫煙、子育て支援、男性不妊、動物愛護などについて質問していたといいます。

朝日新聞の報道によれば、この野次は自民党都議らが座る一角から上がっていたとのことです。

セクハラについておさらい

さて、セクハラ発言は許されないことはかなり浸透していますが、少しおさらいしましょう。

まず、雇用関係の場合、男女雇用機会均等法という法律に、「職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置」という条文があります。11条です。

同条では、

事業主は職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

と定められています。

要するに、事業主は、職場でセクハラ発言やセクハラ行為があったとき、これに対する労働者の対応を問題として労働条件が不利益になることがないように、また、その労働者の働く環境が悪くならないように、労働者からの相談をちゃんと受け、しっかり対応するための体制をとっておくように、という内容です。

前者の性的な言動に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件につき不利益を受けるというセクハラを対価型セクハラといいます。つまり、今の労働条件を維持したいなら性的言動を受け入れろ、という形のセクハラです。

典型例は、社長が労働者に性的関係を迫ったところ、拒否されたので、その労働者の給料を下げたり、解雇したりするようなケースです。

後者の性的な言動によりその労働者の就業環境が害される形のセクハラを環境型セクハラといいます。これは、その労働者が働く環境が他の従業員の性的な言動で悪くなるような状況を指します。

典型例は、お尻や胸をさわるなどされてその労働者が苦痛を感じ就労意欲が減退したり、ヌードのポスターを職場に貼るなどしてその労働者が苦痛に感じて就労に集中できなかったりするような場合です。

今回の発言は?

さて、今回の発言としては、各報道によれば

「早く結婚した方がいいんじゃないか?」

「産めないのかよ」

「あいつ不倫しているんだぜ」

などです。

このような相手を不快にさせる性的な言動は、環境型セクハラに分類されます。

そうです。これらの発言は、完全にセクハラ発言です。言い逃れはできません。

もちろん、今回は都議の話ですから、雇用関係ではありません。

しかし、セクハラは雇用関係のみでなくても起こりうるハラスメント(嫌がらせ)行為です。雇用関係では特に深刻なので、労働者を保護するためにこのような法律があるに過ぎません。

当然ですが、セクハラ行為は雇用関係以外でも許されないのです。

「野次だから」は言い訳にならない

一部に、「野次だから」とか、「正式な発言ではないから」という理由でこの発言を問題にしないとする向きがあります。

しかし、セクハラ発言は「野次だから」「正式な発言ではないから」といって許されるものではありません。

民間企業にたとえてみましょう。

会議中に発言している女性社員に対して、他の従業員がいきなり不規則な発言で、

「早く結婚した方がいいんじゃないか?」

「産めないのかよ」

「あいつ不倫しているらしいぜ」

と言い出すシーンを想像してください。

その場は即座に凍り付き、発言をした者は会議室からつまみ出され、厳重注意を受け、処分が決まるまで自宅待機ということになってもおかしくありません。

その際、発言者が、「いや、あれは不規則発言なんで」と弁解しても無駄でしょう。

また、女性社員がこれらの発言に対し抗議したのに、会社側が「いやぁ、あれは不規則発言だからね。今後品位をもって臨めばいいじゃないか。」で終わらせたらどうでしょうか。さすがにあり得ないですよね。

この件を曖昧に終わらせるべきではない

今回の件は、絶対に曖昧にすべきではありません。

なぜなら、現実の職場ではこういった類のセクハラ言動が多くあるからです。

労働局の雇用均等室に寄せられたセクハラに関する相談件数は約1万件です(2012年度)。これはほんの氷山の一角でしょう。

こういう現状があるのに、都民の代表である都議が無神経にこのような発言をしたことは、オリンピックが開かれるとか、国際都市だとか、そういうことと無関係に大問題なのです。

ですので、都議会は、単なる野次だとして不問にすることなく、発言者を特定すべきです。

こういう言動がセクハラとして許されないことを都民に示すべきでしょう。

自民党はしっかり調査するべき

自民党の吉原修幹事長は「どういう状況だったのかよく分からないが、誰が言ったのか特定することは難しい。」などと述べているようですが、自民党の都議が何千人もいるわけではないのだから、自会派の議員に事実関係を問い質せばいいだけです。それすらしないで、「難しい」などと述べてはなりません。

もし、この程度の調査もできないのであれば、都議団として無能をさらけ出すようなものです。

名乗り出て、謝罪し、辞職が筋

このようなあまりに幼稚な発言をした都議は、コソコソしていないで名乗り出るべきだと思います。

そして、塩村都議に真摯に謝罪すべきでしょう。

その上で、都議たる資質に欠けていることを自覚して潔く辞職すべきが筋です。

今は民間企業でも公務員でも、職場においてこのような発言は許されないんだ、というコンセンサスができています。

都議会だけ時代錯誤であっていい理由はありません。

しっかりとした落とし前をつけることを期待します。

弁護士・日本労働弁護団幹事長

弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団幹事長(2022年11月に就任しました)。ブラック企業被害対策弁護団顧問(2021年11月に代表退任しました)。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!2021年3月、KADOKAWAから「武器としての労働法」を出版しました。

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