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スキャンダルの根っこ。そして今後への覚悟。有村昆の今

中西正男芸能記者
今の思いを吐露する有村昆さん(撮影・倉増崇史)

 5月の週刊誌報道により活動自粛に入った映画コメンテーターの有村昆さん(45)。7月には丸岡いずみさんとの離婚、そして3歳の長男の親権を有村さんが持つことを公表しました。8月から活動を再開したものの「仕事量は以前の10分の1」という状況からのリスタートとなっています。一連の流れの根っこにあるコンプレックス。それでも「くたばるわけにはいかない」という思いを吐露しました。

「どうしてママはいないの?」

 今は両親と僕、息子で暮らしています。息子は僕が仕事に出ている間は基本的には保育園。遅くなる時は父と母が面倒を見てくれています。

 離婚に向けての話し合いの中で、子どもをどう育てていくのか。2人にとって大切なことなので、夫婦で時間をかけて話し合いました。

 その結果、僕が親権を持つことになりましたが、子どもにとっての父親は僕であり、母親は丸岡いずみです。そして、別れてはしまいましたが元夫婦であることも間違いないので、そこはしっかりと協力しながら育てていきたいと思います。

 息子は今3歳です。保育園の送り迎えをしていると、ママが迎えに来る子を見て「どうしてママはいないの?」と尋ねられたりもします。申し訳ない気持ちでいっぱいです。しかし、ごまかすことはせず、ちゃんと説明をしています。

 その度、少しでも母親の役割も果たしてあげたい。といっても、初めての子育てです。不慣れなため、何が子どもにとって良いのか。全てにおいて、それを考え続ける日々です。

くたばるわけにはいかない

 5月から活動自粛、8月下旬から仕事を再開しました。今は単発ゲストとしてラジオに呼んでもらったり、映画の舞台挨拶のお仕事や雑誌のコラム執筆をさせていただいております。

 当然、レギュラーは全てなくなりました。ありがたいことにいろいろとお声がけをいただくことはありますが、以前の仕事量の10分の1くらいにはなっていると思います。

 また、今後仕事を続けていくべきかどうか。そこも悩みました。でも、大学を卒業してから、ずっとこの仕事を続けてきました。

 悩んだ結果、初志貫徹、やり続けてみようと。これまでのものは失いましたが、この仕事は大好きだし、これしかないという気持ちになり、もう一度スタートしてみよう。今はそう思っています。

 …もっと言うと、今お話ししたのはきれいにまとめた話で、本当のところはとことんまで落ち込んだ末に決めたことでした。

 自分が起こしたこととはいえ、ネットを見たら不名誉なことで自分の名前が載っている。コメントも辛辣なものが並んでいる。僕にとって今までの人生では経験しえないことでした。昼も夜も耳元で誰かに何かを言われている感覚にもなりました。

 もちろん、子どものためにも自分自身がしっかりしなくては、家族を守らなくては、そんな気持ちで立っていました。

 後悔と反省の日々の中ですが、自分の心を叩き続けて、ずっとへこんでたら、行きつくところ倒れて、死ぬことすら考えてしまいます。もちろん、ここでくたばるわけにはいきません。

 それならば、もう一度やるしかない。そう決めた以上、人に何を言われようが前に進もう!その覚悟はできました。

“幸福”と“快楽”

 そして、自粛中には映画をたくさん見ました。映画コメンテーターとして20年以上仕事をしてきて、変な話なんですけど…。

 特に心に刺さったのが『トゥルーノース』という3Dアニメーション映画でした。北朝鮮の収容所に入れられてしまったある家族の物語なんですけど、その中で主人公の少年に言う母親の言葉があるんです。

 「“誰になりたいか”を自分に問いなさい」。この言葉がすごく刺さったんです。

 これまでの自分はすごくブレてたなと。どういう自分になりたいのか。明確なビジョンがなかった。

 子どもと一緒に過ごす時間が増えた中で、今までより「子どものために生きる」。ただただそのことだけを純粋に思うようになりました。

 また、映画『トゥルーノース』をきっかけに思ったのが「“幸福”と“快楽”は違う」ということでした。

 毎日の時間の中、毎日1ミリずつ積み重なっていくような感じで、その時間の実感は薄いかもしれないけど、5年経ち、10年経った時に、ある日ふと「あ、すごく幸せなんだ」と思うのが幸福なんだろうなと。

 今までの僕はドーピングのような悪魔的な快楽に浸っていたんだと思います。女性と遊びたい、遊んだら楽しいという感覚があって、それをやることでもっと感覚が麻痺して、また安易に刺激を求める。そんな状況になっていたんだと思います。

 快楽は直接的に感じるものなのかと思いますが、積み重ねによって、ある日とても大きな喜びを感じる。それこそが幸福なんだと45歳になって初めて気づいた。遅いのか。バカなのか。両方なのかもしれませんけど。

コンプレックス

 僕が悪魔的な快楽を求める源流みたいなものが、学生時代に感じていたコンプレックスだったことも再認識しました。

 恵まれた環境で育った僕は、俗にいう温室育ち、学校も“お坊ちゃん学校”と言われるところに行かせてもらいました。僕自身はスポーツが苦手で文科系なので、運動部が女の子からワーキャー言われている横をうらやましい気持ちを押し殺して、友達と三国志のクイズを出し合いながら帰る。そんな学生でした。“いつかはモテたい”という思いが大人になってもずっとありました。

 社会人になって、表に出る仕事を始めて、多少メディアに出るようになった。そこで「有村さんですか?」といろいろな人に声をかけてもらえるようになりました。

 そこで大きな勘違いをしたんです。それは自分だけの力でも何でもないのに、舞い上がってしまった。浅はかの極みです。

 自分がそこにいられるのは番組のスタッフさん、事務所のスタッフさん、多くの方々が力を尽くしてくださったからで、いわば、自分は時刻を示す時計の針であるだけで、見えないところにあらゆるパーツがあって、それが正確な動きをしてくださっているからこそ針が時を刻めている。そこに全く気づいていなかった。

 また、丸岡いずみさんと結婚をしたことによりプラスのストーリーも加わったりして、話題にされ、それも自分の力のように錯覚していく。

 タレントというのはイメージを背負って活動するものです。分かっていたつもりなんですけど、いかに自分のイメージの大きな部分を夫婦仲良しで暮らしているということが占めていたか。それに対して、お仕事をいただいていたか。そこにも、やっと本当の意味で気づきました。

 僕なんかは大物タレントでもありませんし、この世界でまだまだの立場でした。それでも一般的な仕事では考えられないくらいのお金をいただいていた。なぜそうだったのか?その意味も、今さらながら噛みしめました。

 実は、自粛中の6月、7月には「カラテカ」の入江(慎也)さんが経営しているお掃除の会社でアルバイトをさせてもらっていたんです。

 入江さんからも「大丈夫ですか」と連絡をいただいたことがきっかけだったんですけど、仕事がなくなり、家にいると、自身が保てず気がおかしくなるというか、心が折れてくる。

 そこで入江さんに相談しお願いして、働かせてもらうことになりました。仕事は時期的にエアコン掃除が主流でした。

 時給は1200円でした。朝9時に集合して午後3時頃まで働くことが多く、それを週に5日ほど行っていました。だいたい一日6時間ぐらいで日給は7200円。本当にありがたく頂戴しました。お金をいただいていた以上プロとしてしっかりやる。当たり前ですがいろいろと考えさせられました。

 入江さんもですし、狩野英孝さんからも、宮崎謙介さんからも本当にやさしい言葉を自粛中にもらいました。

 僕にとっては勇気となり、とにかく救われました。薄っぺらいかもしれませんが、僕も人にやさしくありたい。そう思いました。

やるしかない

 当たり前ですけど、子どもには、両親がこうなってしまって申し訳ない。その思いしかありません。

 今年の漢字ではないですが、今の自分を表すと「零」だと思います。

 仕事もなくなり、夫でもなくなりましたが、子どもだけが残ってくれました。繰り返しますが、悪いのはもちろん僕です。その中でリスタートすることを選びました。

 実際のところ、マイナスからのスタートだと思うんですけど、進むしかありませんから。くたばらないと決めた以上、進むしかありません。

 映画の世界では、デロリアンで過去と未来を行き来できますが…(笑)、それができない以上、未来に生きるしかありません。なにがあっても、強い気持ちで進んでいきます。

■有村昆(ありむら・こん

1976年7月2日生まれ。マレーシア生まれの東京育ち。本名・藤村昆。ホリプロ所属。映画コメンテーター。22歳の時にラジオパーソナリティーとしてデビューする。さらに、雑誌やテレビで映画コメンテーターを務めるようになる。2012年にニュースキャスターの丸岡いずみと結婚。18年、代理母出産により第1子となる長男が誕生する。今年5月、写真週刊誌で不倫未遂報道があり、芸能活動の自粛を発表。レギュラー出演していた番組も全て降板することになった。7月に離婚を発表。YouTubeチャンネル「有村昆のシネマラボ」を展開中。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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