沖縄の島バナナ壊滅か 非常に強い台風6号の影響
沖縄(奄美・宮古島・石垣島含む)には、一般のバナナよりも小ぶりの独特のバナナが あります。俗に「島バナナ」と呼ばれていますが、明治の初めにハワイから小笠原諸島を経て、沖縄などに根付いたので「小笠原種」とも呼ばれています。
このバナナは甘酸っぱくて、一度このバナナの魅力にはまると他のバナナでは物足りなくなるのですが、生産量が少なく本州で出回ることはほとんどありません。
したがって価格も高く、1キロあたり約1000円。ふつうのバナナの半分くらいの大きさで、1本約200円ですから、スーパーで売られているバナナの4倍ほどの高値で取引されてい ます。
価格が高いのには理由があります。まず病虫害が多いこと、それと高値で取引されるので、泥棒が多いというのも障害の一つです。しかし一番の理由は台風による強風です。
バナナベルト
バナナは年間を通して最低気温が15度以上で、雨の多いところで育ちます。ちょうどこの温度帯は赤道から南北緯30度くらいまで広がっていますので、このゾーンのことを「バナナベルト」と呼んでいます。
沖縄はこのバナナベルト内にありますので生育に問題がありませんが、最大の難関は台風です。
実は島バナナ(小笠原種)は、果実は小ぶりなのにそれを支える木(茎)は高さが3~4メートルにもなります。二階建ての家くらいの高さになりますので、とても強風に弱いのです。
過去の例からすると、風速15~20メートルくらいから倒壊がひどくなり、30メートルを超えるようになると支柱をしていても倒壊を防ぐことが難しくなってきます。
台風6号による暴風
今回、沖縄を襲っている台風6号はバナナベルトの中を複雑に、しかもゆっくり動いているのが特徴です。
最大瞬間風速は那覇で52.5メートル(8月2位タイ)、糸数で50.6メートルを観測するなど、沖縄本島を中心に暴風となっていますが、その複雑な動きと速度の遅さの影響で、本島のみならず、八重山諸島や奄美大島でも非常に強い風が吹き荒れています。
宮古島在住の友人によると、「今回の台風は沖縄本島から自分たち(宮古島)の方に向かってくる感じで地元の人でも経験の無いような進路だ」とのことです。また沖縄県今帰仁村(なきじんそん)在住の友人によると、昨日(8月1日)の夜から停電が始まり、ブロックの重石も飛ぶなど、今までにないような恐怖を感じる台風とのことです。
まだ情報が把握できていませんが、友人の証言から、島バナナ畑は壊滅したところも多いようで、被害がどれほどに及ぶのか心配です。
沖縄では、旧盆の頃に島バナナを霊前に捧げるのが古くからの習わしですが、今年に関しては、ただでさえ少ない島バナナが、ことによると市場にも出回らない、ということになってしまうかもしれません。
今回の台風はまだ現在進行形であるものの、降水量や最大風速は過去の記録からワースト5くらいのものが出ています。
規模感でいうと5年~10年に一度の強さで、しかも広範囲に長い時間にわたって影響をもたらす見込みです。
台風を流す上空の風が弱いので、台風の進路はまだ定まっていません。ただ東シナ海の水温は表面温度が30度近くあり、さらに水深50メートルでも28度くらいあります。これだと、台風によって海水がかき混ぜられても、水温はさほど下がらず、台風はすぐに衰えるというようなことはありません。
今後、週明けに西日本に近づくという可能性もありますので台風進路に予断は許せません。
参考
台風情報(気象庁HP)
「バナナの足、世界を駆ける 農と食の人類学」小松かおり著 京都大学学術出版会