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ウクライナ国境警備隊、ポーランド製の神風ドローン「WARMATE」でヘルソンのロシア軍奇襲

佐藤仁学術研究員・著述家
ポーランド製の攻撃ドローン「WARMATE」(ウクライナ軍提供)

自律型機能も搭載しているポーランド製「WARMATE」

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

ここ数日でも、再びロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」でウクライナの軍事施設などへの攻撃を強めている。このような神風ドローンはロシア軍だけでなくウクライナ軍も攻撃に使用している。

ウクライナ軍ではウクライナ製の神風ドローンや小型民生品ドローンに爆弾を搭載した手作りの神風ドローン、そしてポーランド企業WBエレクトロニクスが開発した神風ドローン「WARMATE」などを主に使用している。同社では監視ドローン「FlyEye」もウクライナ軍に提供している。既にロシア軍への攻撃で「WARMATE」はウクライナ軍に貢献している。

2022年8月にはリトアニアで市民らの募金で100万ユーロ(約1億5000万円)が集まり、その資金でポーランドの攻撃ドローン「WARMATE」37機を購入してウクライナ軍へ提供した。さらに2022年9月には40機の「WARMATE」が追加でポーランドから提供され、最初の20機がウクライナに到着して、戦場の最前線に送られているとウクライナの国営メディアが伝えていた。またウクライナ軍では世界中から集まった寄付金でも「WARMATE」を購入している。

そんななか2023年2月にはウクライナ国境警備隊がヘルソンでロシア軍が基地に使っている建物にポーランド製神風ドローン「WARMATE」で攻撃を行って建物を爆発させていた。ウクライナ国境庁の公式YouTubeでその様子を公開していた。上空の別のドローンからロシア兵が建物に逃げてきて、建物に入ったところに神風ドローン「WARMATE」が建物に突っ込んでいき爆発している。タイトルはウクライナ語で「Майстерна робота – і мінус дев’ять російських окупантів!」(見事な仕事だ!これで9人のロシアの侵略者がいなくなった)である。

ウクライナのメディアU24によると、2022年9月にポーランド政府から提供された「WARMATE」は標的を認識すると、自律的に攻撃を行うタイプらしい。人間の判断がどの程度入るのか、完全にドローンに搭載されたAIソフトウェアだけが自律的に判断するのか、どの程度の自律性があるのかは明らかにされていない。人間の判断を介さないでソフトウェアが自律的に標的を認識して、その標的に突っ込んでいき爆破して敵軍を殺傷するのは「キラーロボット」と称される自律型殺傷兵器であろう。今回のウクライナ国境警備隊による「WARMATE」での攻撃は人間の兵士がオペレーションセンターから目視して、人間が攻撃の判断を行って攻撃を行っている。

▼ウクライナ軍に届けられた自律型システムを搭載した神風ドローン「WARMATE」(2022年9月)

▼ポーランド製神風ドローン「WARMATE」

「WARMATE」のようなタイプの攻撃ドローンは「Kamikaze drone(神風ドローン)」、「Suicide drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンの名前に「神風」が使用されるのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン(Kamikaze Drone)」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。今回のウクライナ紛争で「神風ドローン」は一般名詞となり定着している。「WARMATE」の紹介動画のなかでも 「kamikaze drones」と言って紹介している。ウクライナ語では「Дрони-камікадзе」(神風ドローン)と表記されるが、ウクライナ紛争を報じる地元のニュースで耳にしたり目にしたりしない日はない。

「WARMATE」はロシア軍の迎撃にも貢献しているが、他のドローンと同様に多くが上空でロシア軍によって破壊されている。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。爆弾などを搭載していない小型の監視・偵察ドローンならばジャミングで機能停止させる"ソフトキル"で迎撃できるが、中型から大型の攻撃ドローンの場合は対空機関砲や重機関銃のような"ハードキル"で上空で爆破するのが効果的である。

2022年7月にはロシア軍の"ハードキル"によって破壊された「WARMATE」の残骸の写真も公開されていたので、ウクライナ軍はその頃から「WARMATE」を使用していたのだろう。

▼ロシア軍によって破壊された「WARMATE」の残骸(2022年7月)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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