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コロナ対策最高責任者が考えるMLBシーズンの始め方

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
YESネットワークのインタビューに応じたアンソニー・ファウチ博士(写真:ロイター/アフロ)

【コロナ対策最高責任者がYESネットワークに出演】

 ヤンキース戦のTV中継を担当するニューヨークを拠点とするスポーツ専門局の「Yesネットワーク」は現地時間の4月20日、新型コロナウイルス対策で政府最高責任者を務める国立アレルギー感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ博士とオンラインでインタビューを行い、MLBのシーズン開幕を含め今後の見通しについて聞き出した。

 そのハイライト動画は、同局のアカウントからツイッター上に投稿されている。またインタビュー全編を公式サイトでも公開している。

 ファウチ博士は「現状では先を見通すのは不可能だ」とした上で、いくつかの私案を明らかにしている。

【改めて無観客試合によるTV観戦を推奨】

 ファウチ博士はすでに別のインタビューで、スポーツイベントを再開するには選手を特定の場所に集めて定期的に検査を行いながら、無観客試合で実施すべきとの私案を明らかにしているが、今回も同じ意見を繰り返している。

 「夏に再開できるというのも自信をもっていえることではないが、仮に7月4日から再開できたとしても、これまでのやり方で実施することはできないので、しばらくの間は“新しい通常(new normal)”でやっていくしかない。それは数ヶ月で終わるともいいきれないし、そのまま秋、さらに冬まで続くかもしれない。ただ沈静化することを願っている。

 その中でいくつかのやり方があると思うが、1つは選手たちを特定の数カ所に集め、定期的に検査を行い、選手たちが観戦しないような環境をつくることだ。ファンはその場で試合を観戦すするのは難しいので、TV観戦することになるだろう。

 もちろん観客を入れて試合をするのとは収益が違ってくるだろう。だが収益ゼロよりもいいはずだ」

 これまで多くのメディアが、MLBが5月からアリゾナ単独開催でリーグを開幕するという計画があると報じているが、ファウチ博士の言葉からも5月開幕は如何に荒唐無稽かが理解できるだろう。

【もう1つのオプションは観客の入場制限】

 さらにファウチ博士は、もう1つの私案も明らかにしている、それは観客の入場制限だ。

 「もう1つのやり方としては、スタジアムの入場者数を制限して、しっかり観客の距離を空けるようにすることだ。さらに観客にマスクなどの着用を義務づけることになるかもしれない。

 人々の中には馬鹿げた考えに聞こえるかもしれないが、自分からすれば、このまま野球ができないよりはいいと考える。

 ただ何度も繰り返しているが、タイムテーブルを決められるのはウイルスそのものだ。しっかり段階を踏んで押さえ込みウイルスを制御できるまでは、スタジアムに観客を入れることを検討するのは難しいだろう。

 現時点でいろいろ推測するのは危険ではあるが、ただ試合を直接観戦するよりもTVで観戦する方が望ましいだろう」

【年内中の通常開催は不可能?】

 そうした私案を述べた後で、さらにファウチ博士は年内中の通常開催は難しいとの私見も明らかしている。

 「たとえ段階を踏んである程度安全の確認がとれ、すべての感染経路が判明でき感染が疑われる人たちをしっかり隔離できる状態になったとしても、それでもやはり人々の間である程度の距離が必要になってくると思う。今年に関しては通常のスポーツイベント開催は難しいだろう」

 あくまでファウチ博士の意見は、主要リーグに対してのものだ。MLBやNBA、NHLは下部リーグが存在するが、資金力や人気度を含め、そうした下部リーグがファウチ博士の案を実行するのは100%不可能だ。

 つまり年内は、主要リーグだけが制限された環境の下で実施できる程度で、多くのアスリートたちがプレーする場を失うことを意味している。マイナーリーグの選手たちは、今後も厳しい現実が待ち構えている。

 米国のスポーツ界は、果たして完全復活する日が来るのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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