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おばあさんによる子育てのお手伝いはどれほど行われているのか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 乳母車の扱い方もコツが。祖母から教わる機会も必要かも

子供を産み育てる上で手間がかかり保護者の労力を必要とするのが、生まれてから数年の間。出産した母親自身の体力の回復も欠かせず、同時に生まれた子供の世話も多大なものとなる。当然、父親をはじめとした周囲のサポートは必要不可欠。今回は国立社会保障・人口問題研究所が2016年9月に発表した、日本国の結婚や夫婦の出生力の動向などを長期的に調査・計量する「出生動向基本調査」の最新版「第15回出生動向基本調査」を基に、子供が生まれてから3歳になるまでの間に、夫婦の母親(対象となる子供からは祖母に当たる存在)から子育ての手助けを受けたか否か、その実態を確認していく。

かつては三世代世帯も当たり前で、同居する夫婦の母、生まれた子供から見れば祖母に当たる人が、自分の子供(生まれた子供にとっては母親)に対し子育てのノウハウの実地訓練的な意味合いも兼ね、手助けをするケースが多かった。しかしながら昨今では核家族世帯の増加や、祖父母世帯との距離感の拡大もあり、出産後における祖母の手助け機会が減っているのではとの話もある。

次に示すのは今調査対象母集団のうち第1子が3歳以上15歳未満の、初婚同士の夫婦を対象者とし、その子の出生年別に仕切り分けした、回答者にとっての母親、子供から見れば祖母から、子育ての手助けを受けたか否かを尋ねた結果。

今件が回答時時点の年数仕切り分けではないことに注意。設問において「日常的」「ひんぱんに」子育てを受けた人のみがカウントされている。他の選択肢は公開されていないが「時々」「たまに」「無い」などが想定され、今件の値は実質的に祖母が多分に子育てを手伝った割合と見なすことができる。

↑ 第一子出生年別にみた、第一子が3歳になるまでに夫婦の母親(子の祖母)から子育ての手助けを「日常的に」「ひんぱんに」受けた割合
↑ 第一子出生年別にみた、第一子が3歳になるまでに夫婦の母親(子の祖母)から子育ての手助けを「日常的に」「ひんぱんに」受けた割合

世間一般のイメージでは核家族化の進行などで、祖母による子育てのサポート機会は減っている印象があるが、実際にはむしろ増加している。直近では5割強の子供を有する世帯が、多分な支援を祖母から受けたことになる。

他方夫婦どちらの母親から支援を受けたかに関しては、夫方からは2割強で変化が無いものの、妻方からは漸増し、1/4強から4割強へと増加している。妻の兼業主婦化が進むに連れ、それに合わせて妻の母親が子育てを手伝うように頼まれる機会が増えていると見ればよいだろうか。

これをある程度裏付けることができるのが次のグラフ。上記の条件に加え、第1子が1歳の時に、妻が就業していた人に限定して再集計をしたもの。出産後1年を経ていればいわゆる「産後の肥立ち」の期間も過ぎ、心身的には安定期に移っている。それと共に育児休業も原則は1年であるため、出産前に就業していた人が出産・育児休業を取得し、子供が1歳のタイミングで就業を再開するケースも多々考えられる。

↑ 第一子出生年別にみた、第一子が3歳になるまでに夫婦の母親(子の祖母)から子育ての手助けを「日常的に」「ひんぱんに」受けた割合(第一子が一歳児に妻が就業していた人限定)
↑ 第一子出生年別にみた、第一子が3歳になるまでに夫婦の母親(子の祖母)から子育ての手助けを「日常的に」「ひんぱんに」受けた割合(第一子が一歳児に妻が就業していた人限定)

専業主婦・兼業主婦を合わせた全体値よりも高い値を示しており、兼業主婦ほど子育ての際に母親の手助けを受けていることが分かる(ある意味当然なのだが)。

他方興味深いのは、昔と比べて近年に近づくに連れ、夫方の母親の手助け率は減り、妻方が増えていく点。双方の手助けは要らないと認識されているのかもしれないが、妻方の母の手助け率は今世紀に入ってから5割で変わりがない一方で、夫方は減退を継続しているのが気になるところ。

この動きに関して報告書では事実を述べているだけで、解説の類は無い。色々な理由が考えられるが、直上で触れた「双方の手助けは必要ない」との判断以外に、妻の就業への反発、そして何よりも初婚年齢の上昇に伴う夫の年齢上昇に連れ(平均初婚年齢は女性よりも男性の方が上)、夫方の母親がすでに亡くなっている、あるいは子育ての支援ができる状態では無いケースが増えていることも考えられよう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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