「EXILE」黒木啓司主演映画、キーマンは映像界で活躍する異端児
11月28日より東京・新宿バルト9ほか全国で公開される『クロスロード』。「EXILE」の黒木啓司が映画初主演することで、ファンはもちろん、多くの芸能関係者が注目している一本である。
映画ポスターには「ボランティアなんて偽善だ」という大きな文字の脇に小さく「そう思っていた。あの日、僕らの道が交差するまで……」と記されている。
作品は、「自分を見失い、何かを変えたい」と、青年海外協力隊に参加したカメラマン助手(黒木)が、赴任地の人々と関わり合い、心身共に成長していく姿を描いている。
キーマンは異色の経歴の持ち主
私はこの作品の存在をずいぶん前に、ある人から聞いていた。ある人とは、私が放送作家の駆け出しの頃から『11PM』(日本テレビ系)や『EXテレビ』(同)の現場でお世話になり、『恋のから騒ぎ』(同)で再会し、初回から最終回までお世話になっていた元・日本テレビのディレクターの福間正浩氏である。
実は福間氏、30歳の年に日本テレビを退社。その後、青年海外協力隊として約2年半、発展途上国でさまざまな活動をし、帰国して古巣の先輩から誘われて『恋のから騒ぎ』の演出陣に名を連ねた経緯がある。
番組の演出家の傍ら、脚本家として、あの中園ミホさんをサポートしたり、『闇金ウシジマくん』『ひみつのアッコちゃん』なども手がけていた福間氏が「青年海外協力隊の映画の脚本を監修した」と聞き、「福間さんの自叙伝?」と思ったら違っていた。
青年海外協力隊50周年を記念したシナリオ大賞の公募の審査員を「OBとして」「脚本家として」担当していた福間氏が、大賞を獲得した脚本をほぼゼロから直し、監修したというのが正しい経緯だそうだ。
こんなイケメンはいない
とはいえ、“経験者”である福間氏は、主演の黒木啓司に対し、さまざまな想いを抱いたという。
まずは「青年海外協力隊に、こんなイケメンはいない」(苦笑)。
福間氏は大柄で、優しくて面白くて、お酒が大好きな男らしい人ではあるが、確かにイケメンというには程遠いルックス。「仲間の多くも自分に似た泥臭いタイプが多かった」と振り返る福間氏は、ミスキャストとは言わないまでも、「大丈夫だろうか」と、少なからず黒木に対して心配を抱いていたらしく、「いや、LDHの人たちって、泥臭いでしょ?」と私のほうがフォローしたぐらいだった。
だが、殺陣(たて)が多く、身体を痛めつけるようなシーンが多かった過酷なドラマ『ワイルド・ヒーローズ』(日本テレビ系)収録後に、『クロスロード』のロケ地・フィリピン入りした黒木は、かなり疲れていたというが、持ち前の根性と切り替えの速さで、すぐに撮影に参加。
これまた過酷なロケと、初めて見るスラム街の子供たちやホームレスの人々に衝撃を受けながらも、約2週間にわたるスケジュールを泥臭く、ハートフルにこなしたのだという。
「お会いしたのは1回だけだけれど、黒木さんには青年海外協力隊の役が意外と合っているのかもしれない」と思ったという福間氏。脚本を読み込んだ黒木が青年海外協力隊に「そうとう興味を持っていた」という話を複数の関係者から聞かされたという。
男気と作品愛にほれ込んだ
福間氏が書いた『闇金ウシジマくん』はテレビドラマを経て映画化。主演はもちろん、山田孝之で、彼はこの映画がきっかけとなって、さまざまな役柄に挑戦。昨年は『日経MJ』の年末恒例企画、「今年もっとも活躍したテレビCMキャラクター」で1位に選ばれるほどにまでイメージを変えた。
『ひみつのアッコちゃん』は、言わずと知れた綾瀬はるか主演で、彼女のかわいさがそのままスクリーンで炸裂した作品。
「『…ウシジマくん』や『…アッコちゃん』に比べると、宣伝もそんなにされていないんだけど、黒木さんはPR活動にもすごく協力的だし、『クロスロード』のことをあちらこちらで話してくださっている」と、福間氏は黒木の男気と作品愛に、すっかり惚れ込んでいるようだった。
同じく男気あふれるHIROさんをはじめ、「EXILE」のメンバーやLDHグループの後輩たちのハートにもきっと刺さるであろう映画『クロスロード』。日本テレビのバラエティー番組のスターディレクターの座を捨てて、青年海外協力隊として発展途上国に飛び込んだ福間正浩氏が綴った台詞ひとつひとつにも注目しながら、ぜひ観てほしいと思う。