今季4敗目を喫しながらも投手2冠をほぼ手中にしたオリックス・山本由伸が狙える他のタイトルは?
【8回1失点で今シーズン4敗目】
9月15日の楽天戦から4連勝を続けていたオリックスの山本由伸投手が10月13日のソフトバンク戦に登板し、8回5安打1失点の好投を演じながら、味方打線の援護を受けられず、今シーズン4敗目を喫した。
3回1死から川瀬晃選手に左翼前打を許すと、次打者の周東佑京選手に右中間三塁打を打たれ、先取点を奪われた。結果的にこの1点が決勝点になり、敗戦投手になってしまった。
この日の山本投手は相手打者に粘られる場面が何度かあり、明らかに本調子ではなかったが、連打を許したのは3回のみ。2、4、7、8回にも走者を出しながら、粘りの投球で8回を投げきった。
試合後山本投手は自身最多の124球を投げた投球内容を、以下のように振り返った。
「ちょっとボールが先行したり、ランナーを出して3者凡退で終われる回が少なかったり、テンポが今一つで流れを引き込んでこられるピッチングではなかったかなと思います。
調子自体は良い方ではなかったんですけど、何とか8回まで1失点でまとめられたというのは、自分の中では良かったポイントだったと思います」
【投手2冠をほぼ確定させた粘投】
敗戦投手とはいえ、この日の粘投で山本投手は個人タイトル争いでさらに優位に立つことになった。
すでにリーグトップを走る防御率は、さらに2.18まで下げることに成功し、2年連続のタイトル獲得をほぼ確定させている。
3.06で同部門2位につける涌井秀章投手と比較すると、彼が現在のローテーション通りに残り4試合に登板し、すべての試合で今シーズン平均の6.2回を投げ無失点に抑えたと想定すると、防御率は2.47になる。
一方で、山本投手がローテーション通りに残り3試合に登板し、すべての試合で今シーズン平均の7.0回を投げ、自責点3ずつ記録したとしても、防御率は2.43に留まり、涌井投手を下回る計算になるのだ。
ただ涌井投手が4試合すべてを自責点ゼロで完投すれば、防御率を2.28まで下げることができるで、逆転できる可能性はゼロではない。
だが9月以降の山本投手は、7試合に登板し計4失点しか許しておらず、防御率は驚異の0.68を記録。被打率も.137に留っており、現在の彼が3試合で9失点することを想像すらできないし、涌井投手の4試合連続完投もほぼ不可能と言っていい。
また防御率とともにリーグトップに立つ奪三振も、ソフトバンク戦で7奪三振を加え139まで伸ばすことに成功。こちらもほぼ間違いなく山本投手が獲得できそうだ。
奪三振に関しては、113で同部門2位につける千賀滉大投手との一騎打ちの様相を呈しているが、千賀投手がローテーション通りに残り4試合に投げ、今シーズンの平均奪三振8.07の三振を奪ったとすると、145.28に達する。
この計算通りに推移するとすれば、山本投手は残り3試合で7三振を奪えばタイトルを獲得できることになる。しかも今シーズンの山本投手の平均奪三振は8.17と千賀投手を上回っており、すでに安全圏に入っていると言っていいだろう。
【まだ一縷の可能性が残る投手3冠】
防御率、奪三振のタイトルをほぼ確実にしたとなると、やはり山本投手に期待したいのは、勝利数を加えた投手3冠達成だろう。セ・リーグでは菅野智之投手が2018年に達成しているが、パ・リーグでは2006年の斉藤和巳投手を最後に、投手3冠達成者が誕生していない。
現在10勝でリーグ1位の涌井投手はローテーション通りに登板すると、本日(10月14日)のロッテ戦を含め、前述通り残り4試合の登板機会がある。また9勝で同2位につける美馬学投手は、残り3試合の登板が想定される。
一方、8勝で3位タイにつける山本投手は、やはり前述通り残り3試合なので、かなり厳しい情勢であるのは間違いない。
ただ勝利数に関しては、チームの援護など他のファクターが大きく影響するので、簡単には予測できないのも確かだ。
最近の涌井投手をみても、9月以降は6試合に登板し、2勝2敗、防御率4.50と、やや調子を落としている上、開幕から絶好調だった楽天打線も下降線気味で、チーム自体もここ最近は勝率5割ライン周辺に留まっている状況だ。
とりあえず山本投手が残り3試合で3連勝し11勝に達すれば、3冠達成の可能性はまだ残されているように思う。
ちなみにローテーション通りの登板を想定すると、3投手の対戦相手は、涌井投手がロッテ、西武、オリックス2回、美馬投手が日本ハム、オリックス、楽天、そして山本投手が楽天2回、日本ハム──と、それぞれのチーム同士の直接対決を残している。これも大きなカギを握りそうだ。
【投球回数と無四球試合のタイトルもほぼ確定】
山本投手が狙えるタイトルは、投手3冠に留まっていない。
ソフトバンク戦の好投で、投球回数を119.2イニングに伸ばし、有原航平投手の114.2イニングを上回り、リーグ1位に立っている。
他には石川歩投手が112.2イニングで3位、涌井投手106.0イニングで4位につけているが、防御率や奪三振のように、4投手の残り試合と今シーズンの平均イニング数で投球回数を計算すると、やはり誰も山本投手に追いつくことができない。
しかも9月以降の山本投手は前述通り、他の追随を許さない投球を続け、投球回数も53イニングで3投手を圧倒しており、半端ないラストスパートを仕掛けているのだ。
また山本投手は無四球試合も1つ記録しており、有原投手、美馬投手、二木康夫投手とリーグ1位に並んでいる。リーグ全体で完投数が減っている現状を考えると、こちらもタイトル獲得の可能性が高い。
一時調子を落とした時期もあったが、エース投手としてしっかりローテーションを守り切りシーズンを終えようとしている山本投手。最終的にいくつのタイトルを獲得しようとも、22歳にして名実ともに球界を代表する先発投手の仲間入りをしたことだけは確かだ。