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衆議院補選での自民党大敗で、衆参ダブル選の可能性が高まった?

安積明子政治ジャーナリスト
2017年衆院選で安倍首相は解散を打って成功したが、再度解散で浮上なるか(写真:アフロ)

予想できた自民党の負け

 4月21日に行われた衆議院補選では、大阪12区と沖縄3区で自民党候補が敗退した。もっとも結果はあらかじめ予想できた。自民党はいずれも勝てそうにない候補を擁立したからだ。

 沖縄3区に出馬した島尻安伊子氏は、参議院議員時代に沖縄担当大臣を務めている。しかし2016年の参議院選では現職大臣にも関わらず落選した。衆議院沖縄3区には前職の比嘉奈津美氏がいたが、菅義偉官房長官に頼み込んで総支部長の座を手に入れた。

沖縄市で行われたパーティーや決起大会では1000人を集めたが、その顔触れはいずれも県内の建設関係者。辺野古新基地建設に絡み、菅長官の動員指示があったと言われた。

それほど万全の体制で島尻氏が臨んだ衆議院補選だったが、野党系の屋良朝博氏に1万7000票以上の差を付けられて敗退。昨年9月の知事選では3度も応援に入った小泉進次郎氏は、今度は沖縄に入らなかった。もちろん安倍晋三首相も沖縄入りしていない。自民党からでさえ打ち捨てられた印象が強く残る。

 大阪12区に出馬した北川晋平氏は、昨年12月に死去した北川知克前衆議院議員の甥にあたる。父の法夫氏は寝屋川市長を2015年から務めたが、次男・晋平氏の衆院補選出馬を考慮し、2期目の出馬を諦めた。いわば晋平氏の出馬は父親の市長選出馬と引き換えになったわけだが、それにしても最初から当選の希望は小さかった。

負け戦の応援を薄めるための新喜劇出演?

 というのも、統一地方選前半戦で自民党は府知事選と市長選で惨敗し、つくづく運に見放されていた。そこで「弔い合戦」を前面に出して戦おうとしたが、これも裏目に出た。候補者本人がすっかりかすんでしまったからだ。

「そもそも北川氏がなぜ立候補したのかがわからない。政策を語れるわけでもないし、握手をしても意欲が伝わってこない」

 こうした声が党内からでさえ聞こえてきた。極め付けは4月20日の安倍晋三首相の大阪入りだ。

 内閣総理大臣は負け戦には応援に入らないというのが暗黙のルールだ。たとえば2014年7月の滋賀県知事選では安倍首相は当初、自民党が擁立した小鑓隆史氏の応援のために外遊先のパプア・ニューギニアから関西国際空港を経由して滋賀県入りするつもりだったが、敗北がほぼ確定していたために中止になったことがある。だが今回は安倍首相は北川氏の負けを承知で大阪入りした。理由は昨年の自民党総裁選だ。石破茂氏の影響が強かった大阪府連が安倍支持を表明したことへの返礼の意味が大きい。

 もっとも衆議院補選での「負け戦」の影響を最小限に抑えるため、安倍首相の大阪入りの名目は「6月下旬に開かれるG20 のPR」とされた。吉本新喜劇の舞台に安倍首相が登場したのも、そのひとつといえる。

 ところがこれが評判が悪かった。

「真剣に選挙を戦っているのに、呑気に舞台に出ている場合なのか」

「吉本は大阪維新の会に近い。首相が選挙中にわざわざ相手側に行くなんぞ、もっての他だ」

 怒りが込めた声があちこちから湧き上がっていたというのだ。

萩生田発言は解散の「下地」?

 萩生田光一自民党幹事長代行の「消費税増税凍結発言」も、足を引っ張ったと言われた。萩生田氏は4月18日にネット番組で「6月の日銀短観が示す景況感次第で、消費税率アップ延期もありうる」と述べたが、麻生太郎財務相や菅官房長官に一蹴されている。

「党内で立場のある人が選挙中に軽率な発言をすべきではない」

「そもそも萩生田氏は維新に近い。大阪都構想を肯定的に述べたこともある。とんでもないことだ」

 自民党関係者は苦々しくこう述べたが、不信感は相当高まっているのは間違いない。

 そこで出てくるのが早期解散説だ。補選で敗退が続いたことは次期参議院選に良い影響を与えないが、与党に有利な衆参同日選にすれば挽回は十分可能だ。

 しかも野党はいまだ選挙体制を整えていない。岩手県選挙区のように参議院の1人区の調整がなかなか進まない選挙区もあるし、衆議院では空白区を埋めきれていない。

 さらには狡猾な二階俊博幹事長の下で台頭しつつある党本部の勢力を削ぐためにも、解散総選挙を行う意味があるだろう。これまでも安倍首相は、ピンチをチャンスに変えてきた。2017年も小池人気と森友学園・加計学園問題で窮地に立ったが、絶妙なタイミングで衆議院を解散したため、安倍政権は蘇った。

 もしかしたらその「下地」のために、萩生田氏をして消費税率アップ凍結の可能性について言及させたのかもしれない。とりあえずこの夏は、いつもよりいっそう暑くなりそうだ。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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