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MLB監督として初の片膝付き行為を行ったゲーブ・キャプラー監督のトランプ大統領に向けた反論

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
MLB監督して初の片膝付き行為を行ったジャイアンツのゲーブ・キャプラー監督(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLBでも広がり始めた片膝付き行為】

 7月24日にシーズン開幕を控える中、MLBでは各チームが開幕直前のオープン戦で最終調整を行っているが、MLBの監督、コーチ、選手の間で、試合前の国歌斉唱時に片膝をつく行為が広がっている。

 元々同行為は、NFLの49ers(当時)に所属していたコリン・キャパニック選手が、2016年シーズンに人種差別に抗議するため始めたもの。その後彼がNFLから離れた後も、2017年シーズンにNFLやNBAの選手が同行為を引き継いでいたが、MLBではアスレチックス(当時)のブルース・マックスウェル選手にしか広まることはなかった。

 ところが今年はミネソタ州で起こった白人警察官による黒人男性暴行死事件に端を発し、米国内に大々的な反人種差別運動が巻き起こり、スポーツ界でも人種差別に異議を唱える選手が増え、各リーグが人種問題に取り組む動きが起こっていた。

 この流れを見る限り、シーズン開幕後もMLBでは多くの人たちが片膝付き行為を継続することになりそうだ。

【引き続き異議を唱えるトランプ大統領】

 こうした動きに不満を抱いているのが、ドナルド・トランプ大統領だ。

 同大統領は2017年シーズンにNFL選手が片膝付き行為を続けることに対し、「国家、国旗を軽侮する行為だ」としてNFLと選手を猛批判し、それを機にスポーツ界との間で片膝付き行為を巡り大論争に発展し、すっかり敵対関係に陥っている。

 そんなトランプ大統領がツイッター上に以下のようなメッセージを投稿し、改めてスポーツ界内での片膝付き行為の広がりに疑問を呈している。

 「スポーツが再開されるのを楽しみしている。だが選手たちが国歌斉唱時に片膝付き行為をしている姿を目撃する度に、改めて国家、国旗を著しく軽侮する行為としか見えない。自分の中ではもう試合は終了してしまった」

 もちろんトランプ大統領は人種差別を肯定しているわけではなく、ただ国歌斉唱時に片膝付き行為を行うことに疑義を呈しているに過ぎないのだ。

 だがスポーツ界の人々は、片膝付き行為が決して国家、国旗を軽侮するものではなく、あくまで人種差別に声を挙げるための行為だと考えているため、両者は今も平行線状態が続いている。

【キャプラー監督の大統領に向けた反論】

 そんなスポーツ界の現場の意見を代弁しているのが、MLB監督して初めて片膝付き行為を行ったジャイアンツのゲーブ・キャプラー監督だ。かつて2005年に巨人に在籍したことがある44歳指揮官は、トランプ大統領に対し、以下のように反論している。

 「それ(片膝付き行為)が軽侮する行為だとはまったく思わない。ただアメリカの人たちが自分たちの信じることのために立ち上がっただけであり、世の中が不満と悩みが広がる中で、国を愛するからこそ平和的な抗議活動を行おうとしている。

 そして最後に、正しいことをしている自分たちを、誰も制止することはできない。もう試合を見ないだろうとリーダーが発言したことなど、まったく気にならない。重要なことは、我々が正しいことをしようすることに迷いがないことと、自分たちに立ち上がってほしいと願っている人たちのために立ち上がる決心をしていることだ」

 こうしたスポーツ界からの声は、トランプ大統領に届いているのだろうか。そして同大統領とスポーツ界が和解する日は訪れるのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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