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小室圭さん「結婚に対する思いに変わりはありません」~「結婚意思」とは

竹内豊行政書士
小室圭さんが文書で「結婚に対する思いに変わりはありません」と表明しました。(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

本日、秋篠宮家の長女眞子さま(29)と婚約が内定している小室圭さん(29)が、週刊誌などで報じられている家族の金銭トラブルに関して、改めて説明する文書を公表したと報じられました。

文書はA4用紙に注釈含めて24枚。その中で、小室さんは「結婚に対する思いに変わりはありません」と結婚意思に変わりはないことを明らかにしているようです(以上参考・引用「小室さん、金銭問題改めて説明 文書を公表、結婚の思いも」)。

そこで今回は、「結婚意思」について考えてみたいと思います。

結婚の成立要件

結婚が法律上有効となるためには、まず成立要件として婚姻(法律では、「結婚」を「婚姻」といいます)の届出があり(民法739条)、次に婚姻の届出に際して婚姻の意思があることが必要です。

民法739条(婚姻の届出)

1.婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

2.前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。

当然、当事者間に婚姻の意思がなければ、その婚姻は無効になります(民法742条)。

民法742条(婚姻の無効)

婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。

一 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。

二 当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第739条第2項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。

「婚姻意思」とは

多くの国々では、行政の係官の面前で一定の手続で婚姻の意思を表明する「法律婚主義」を採用していますが、日本では、役所の戸籍係へ婚姻の届出をすることによって婚姻が成立する「届出婚主義」を採用しています。

届出婚主義の下では、婚姻意思には次の2つの側面があります。

1.社会生活上夫婦と認められる関係を作ろうという意思(「実質的意思」といいます)

2.婚姻届を提出しようとする意思(「形式的意思」といいます)

かつて学説では、実質的意思と形式的意思の両方が必要だとする説(実質的意思説)と、形式的意思だけでよいとする説(形式的意思説)の対立がありました。

現在では、婚姻の意思としては、婚姻届を出す意思だけでは足らず、社会的あるいは法的に見て婚姻の実体を備えた意思が必要であるとする実質的意思説が多数説です。

これによれば、たとえば子に嫡出性を与えるためのような特定の目的のためだけに行われた婚姻の届出は法的効力を持ちません(いわゆる「仮装婚」とよばれる類)。

婚姻意思の存在時期

婚姻意思は届出のときに存在していなくてはなりません。婚姻に合意していても届出までに撤回すれば、婚姻は成立しません。

婚姻意思があっても無効・取消しになる場合

たとえ、お互いに婚姻意思を有していても、次のケースに該当すれば婚姻は取り消されることがあります。これを婚姻障害といいます。

1.不適齢婚(民法731条)

男性は満18歳、女性は満16歳に達しなければ、婚姻することができません。

2.重婚(民法732条)

配偶者のある者は、重ねて婚姻することができません。

3.近親婚(民法734・735・736条)

優生学上の理由から、直系の自然血族および3親等内の傍系自然血族間の婚姻は禁止され、倫理的な理由から、直系姻族間の婚姻、養親または養親の直系尊属と、養子もしくはその配偶者、養子の直系卑属もしくはその配偶者との間の婚姻は禁止されます。

4.再婚禁止期間(民法733条)

原則として、女性は、前婚の解消または取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができません。

このように、お互いに「社会生活上夫婦と認められる関係を作ろう」という婚姻意思を持ち、婚姻届を役所に届ければ婚姻は成立することになります。

小室さんは公表した文書の中で婚姻意思を表明していますが、「結婚をする」という意思表明に止まらず、社会から夫婦として認められる関係をどのようにして築いていくかに触れているかに注目したいと思っています。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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