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九州北部に線状降水帯の予想 大雨の三連休と判断が難しい三連休後の関東甲信等の梅雨明け

饒村曜気象予報士
梅雨前線が西日本から東日本に停滞した予想天気図(7月14日21時の予想)

太平洋側を中心に猛暑

 令和6年(2024年)7月13日は、梅雨前線が西日本から東日本に停滞し、前線に向かって暖かくて湿った空気が流入しました。このため、、西日本の太平洋側を中心に雨となり、雷を伴って激しく降った所もありました。

 しかし、前線から離れている北海道や南西諸島では晴れる所が多く、強い日射で気温が上昇しました。

 7月13日に全国で気温が一番高かったのは、鹿児島県奄美大島・名瀬の35.8度で、南西諸島の4地点(気温を観測している全国914地点の約0.4パーセント)で、最高気温35度以上の猛暑日を観測しました。

 また、最高気温が30度以上の真夏日を観測したのが214地点(約23パーセント)、最高気温が25度以上の夏日を観測したのが815地点(約89パーセント)でした(図1)。

図1 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(7月14日以降は予想)
図1 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(7月14日以降は予想)

 猛暑日や真夏日の観測地点数は、7月上旬から見れば、かなり減っていますが、夏日はそれほど減っていません。

 今年は、6月前半から熱くなりましたが、この時の暑さは、大陸からの乾燥した高気圧に覆われ、強い日射で気温が上昇した乾いた暑さでした。

 6月下旬からの暑さは、太平洋高気圧に覆われての暑さで、熱中症になりやすい湿った暑さです。その夏日は、雨が降っている日でも全国の80パーセントを超えています。

 猛暑日や真夏日の湿った暑さは熱中症に厳重警戒ですが、夏日の湿った暑さも熱中症に対して油断することができません。

三連休の九州の大雨

 海の日の7月14日も、梅雨前線が西日本から東日本に停滞する見込みです(タイトル画像)。

 このため、前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となる見込みで、九州北部地方では局地的に雷を伴った非常に激しい雨が降る恐れがあります。

 気象庁は、7月13日16時に「大雨と突風に関する九州北部地方(山口県を含む)気象情報」を発表し、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県では、7月14日午前中から午後にかけて、線状降水帯が発生して大雨災害発生の危険度が急激に高まる可能性があると、警戒を呼び掛けています。

 図2は、7月13日15時を初期値として計算したコンピュータによる18時間予想ですが、この段階で、すでに九州北部では、1時間に80ミリ以上の猛烈な雨が予想されています。

図2 雨の分布予想(7月14日9時の予想)
図2 雨の分布予想(7月14日9時の予想)

 今年の梅雨は西日本を中心に大雨となることが多く、6月21日には鹿児島県で、6月28日には静岡県で線上降水帯が発生しました。

 線状降水帯は湿った空気の流入が持続することで積乱雲が次々に発生し、線状の降水域が数時間にわたってほぼ同じ場所に停滞することで大雨をもたらし、災害の危険度が高まりますが、現状の観測・予測技術では、正確な予測が困難です。

 このため、気象庁は令和12年度までの10年計画で、線状降水帯に関する情報の改善に取り組んでおり、その途中成果を使って線状降水帯に関する情報を発表しています。

 線状降水帯の半日前予報もその一つで、今年からは、これまでの地方ごとから府県ごとの細かさで予測するように変わっています。

 完成途上の情報で精度が低い情報ですが、この情報が発表されたときは、線状降水帯が発生して桁違いに多い雨が降らない場合でも、ほとんどの場合、警報級の大雨が降っています。

 そういう意味では、線状降水帯に関する情報が発表されるときは、いつも警戒が必要です。そして、この情報は、いつまでも精度が低い情報ではありません。

梅雨明けは

 令和6年(2024年)は、梅雨がないとされる北海道を除き、各地で平年より遅い梅雨入りとなりました。

 その後、6月20日から23日に沖縄・奄美地方が平年より早く梅雨明けしましたので、現在の梅雨は、九州から東北までということになります(表)。

表 令和6年(2024年)の梅雨入りと梅雨明けと平年の梅雨入り・梅雨明け
表 令和6年(2024年)の梅雨入りと梅雨明けと平年の梅雨入り・梅雨明け

 三連休は西日本から東日本の太平洋側では梅雨前線が停滞して曇りや雨の天気が続き、大雨の恐れがありますので警戒が必要です。

 三連休明けは梅雨前線が北上し、梅雨明けのような天気となり、北上した梅雨前線が南下してこなければ梅雨明けとなりますが、梅雨前線を押し上げる太平洋高気圧の勢力がいまいちです。気象庁は、梅雨明けとするのか梅雨の中休みとするのか、難しい判断を迫られています(図3)。

図3 各地の10日間予報(数字は最高気温)
図3 各地の10日間予報(数字は最高気温)

 梅雨明けには二つの型があります。

 一つは、太平洋高気圧によって梅雨前線が北へ押し上げられて梅雨明けとなる「梅雨前線北上型」の梅雨明けです。

 もう一つは、梅雨前線が南下しながら弱まる「梅雨前線弱まり型」の梅雨明けです。「梅雨前線弱まり型」の時は、「梅雨前線北上型」に比べて、北から上空に寒気が入りやすいという特徴があります。雨が多い不順な夏になることが多いというのが「梅雨前線弱まり型」の梅雨明けです。

 来週に梅雨明けするとすれば、「梅雨前線北上型」よりも、「梅雨前線弱まり型」の梅雨明けに近いと思われます。

 ただ、いずれにしても、三連休明けは、湿度が高い暑さとなりますので、より一層の熱中症対策が必要になります。

タイトル画像、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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