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『M-1グランプリ2023』で優勝するのは誰なのか? ファイナリスト9組の紹介と優勝予想

ラリー遠田作家・お笑い評論家
(提供:アフロ)

本日12月24日、漫才日本一を決める『M-1グランプリ2023』が開催される。厳しい予選を勝ち抜いて決勝に駒を進めたのは、くらげ、真空ジェシカ、令和ロマン、モグライダー、ダンビラムーチョ、ヤーレンズ、さや香、カベポスター、マユリカの9組。準決勝の内容を踏まえて、各コンビについて簡単に紹介しつつ、決勝の展開を少しだけ予想してみたい。

くらげは、2019年にも準決勝進出の経験がある。このときにも新しいフォーマットの漫才をやっていて、決勝に行っていてもおかしくはなかった。今回もしっかり新機軸の漫才を仕上げてきている。丸刈りの渡辺翔太は無骨な外見だが、この戦い方を見る限り、割と緻密な計算で勝ち上がってきたタイプの漫才師である。今年の大会のダークホース的な存在である。

真空ジェシカは、準決勝で全組のネタを見た後で「間違いなく決勝に行ったな」と感じた。そのぐらい見事な漫才だった。これで3年連続の決勝進出。漫才のフォーマットが新しいわけでもなければ、キャラクターが強いわけでもない。ただ純粋に面白いだけの漫才でこの結果は半端ではない。川北のボケアスリートとしての地肩の強さは同世代でもトップクラスだろう。

令和ロマンは、いつ決勝に行ってもおかしくない期待の若手芸人だった。数年前から十分に上手かったし面白かったが、そこからさらに試行錯誤を重ね、進化を遂げて、揺るぎない実力を身につけた。

モグライダーは2年前の『M-1』決勝進出をきっかけにして一気に仕事を増やし、すっかりテレビの人気者になった。そんな彼らが、ここで堂々と決勝に返り咲いたのは本当にとんでもないことだ。でも、決して知名度優先で選ばれたわけではない。この2人だからこそ成立する高度なアドリブ漫才を見せて、文句なしの大爆笑を取っていた。

ダンビラムーチョは、ここ何年かはお笑いファンの間では期待される存在だった。『M-1』で決勝に進むような芸人が持っている独特の「空気」をすでにまとっているようなところがあった。そこからさらに自分たちの武器を絞り込んで、それを磨きに磨いて、満を持して決勝行きを決めた。少し型破りな漫才を演じているので、それが審査員にどう評価されるのかも気になる。

ヤーレンズは、下積み時代に大阪で別名義でも活動していたことがある苦労人だ。昨年は準決勝敗退だったが、業界内の評価も高く、決勝に行ってもおかしくない存在だった。正統派のコント漫才では他の追随を許さない存在だ。

さや香は昨年の大会で準優勝という結果を残した。しかし、優勝したウエストランドに比べるとバラエティ番組に出演する機会も少なく、悔しい1年を過ごしてきたに違いない。しゃべりの技術と観客を巻き込む熱量は並外れたものがあり、優勝候補の筆頭であるのは間違いない。

カベポスターは、大喜利の達人である永見の脚本力が最大の武器だ。文字で読んでも面白いネタができるタイプの漫才師である。準決勝のネタもストーリー性があって完成度が高く、映画一本見たぐらいの満足感があった。

マユリカは、不思議でコミカルな独特の世界観を持っている。2人ともイケメンと呼ばれるような外見ではないものの、なぜかアイドル的な人気もある。漫才の形はオーソドックスだが、はまるとクセになる魅力がある。

この9組に敗者復活戦の勝者1組を加えた10組が、決勝に挑むことになる。準決勝を見た個人的な印象としては、しゃべくり漫才ではさや香、コント漫才ではヤーレンズが技術的にも笑いの量でも頭一つ抜けている感じはした。一方、モグライダーやダンビラムーチョははまったときの爆発力が大きそうなので、状況次第では手がつけられないほどウケまくって圧勝する可能性もある。

もちろん、それ以外のファイナリストにも平等にチャンスはあるし、敗者復活戦から勝ち上がってくる芸人の勢いもあなどれない。『M-1グランプリ2023』の決勝の模様は、18時30分からABCテレビ・テレビ朝日系全国ネットで生放送される。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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