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千鳥・かまいたちの現役最強ツートップが躍動する『千鳥の鬼レンチャン』が人気の理由

ラリー遠田作家・お笑い評論家
(写真:イメージマート)

今のテレビバラエティ界の最前線で活躍する芸人と言えば、千鳥とかまいたちの2組が真っ先に挙げられる。この2組の恐ろしいところは、それぞれが数多くのレギュラー番組に出演しているだけでなく、この2組の両方が出ている番組も複数存在していることだ。

日本テレビの『千鳥かまいたちアワー』では、素人スターの発掘オーディションなど、軽くて笑えるバラエティ豊かな企画が次々に行われている。『火曜は全力!華大さんと千鳥くん』(関西テレビ・フジテレビ系)では、メインの千鳥と博多華丸・大吉に加えて、かまいたちが準レギュラーとしてほぼ毎回出演している。

そして、「千鳥×かまいたち」の最強タッグの本領が発揮されていると言えるのが、2022年5月からレギュラー放送されている『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ)である。放送開始からじわじわと人気を伸ばしていき、最近ではSNSなどで話題になることも増えてきた。1月8日放送の3時間SPの番組平均コア視聴率が横並びでトップだったことも報じられた(『マイナビニュース』2023年1月10日)。

番組のコンセプトは単純明快である。千鳥軍とかまいたち軍の2チームに分けられた挑戦者が、何かを連続で成功させるチャレンジを行い、そのチームの合計点を競い合うというものだ。

メイン企画として行われているのが「サビだけカラオケ」である。挑戦者は正確な音程で10曲連続でサビだけを歌い切ることができれば、賞金100万円を獲得できる。

この手のカラオケを題材にしたバラエティ番組自体は、決して珍しいものではない。出演者が何かに挑戦して、成功すれば賞金を得られるというフォーマットも古くからあるものだ。ただ、この番組の魅力は、そんなオーソドックな企画の骨組みからはみ出た部分にこそ存在している。

千鳥とかまいたちの2組は、歌っている挑戦者をその場で見守るのではなく、その様子を収めたVTRをスタジオで眺めるだけだ。その場に本人がいないからこそ、千鳥とかまいたちはVTRを見ながら好き放題にツッコミをいれたり、文句を言ったりすることができる。

しかも、スタジオには彼ら2組しか存在せず、それ以外の出演者はいない。そこは芸人だけの空間なので、ほかの分野のタレントの目線に合わせたりすることなく、彼らが全力を出すことができる。だからこそ、この番組では、ツッコまれる前提で羽目を外してふざけまくったり、行き過ぎた悪ノリを展開したりする4人の姿が見られる。そこが最大の売りになっている。

しかも、形式上、千鳥とかまいたちが敵と味方という立場に分かれているのも良い。彼らは、相手チームの挑戦者に対しては「失敗してほしい」という悪意をむき出しにして野次を飛ばしたりする。そして、自分のチームの挑戦者には、優しい目線でフォローを入れたりする。いわば、2組の間で「ボケ」と「ツッコミ」に似た関係性が作られ、それが次々に入れ替わっていくことになる。

はっきり言えば、この番組を見てどちらのチームが勝つのかということに本気でこだわっている視聴者はほとんど存在しないだろう。彼らが2チームに分かれて競い合っているのは、その中でお互いがVTRに出演する挑戦者をそれぞれの立場でイジり倒すという環境を作るためであり、勝敗そのものが重要なわけではない。

VTRの作り方も、ややイジる側の目線に立っていて、千鳥とかまいたちのツッコミやイジりを誘発するようになっている。お笑い番組として最も見せたいところを引き立てるために、番組全体が緻密に組み上げられている。

さらに言うと、この番組が多くの視聴者に支持されている理由は、上質なお笑い番組として楽しめるだけではなく、単なるカラオケバラエティ番組としてぼんやり眺めていてもそれなりに面白いものになっているからだ。

お笑いファンや感度の高い若者が腹を抱えて笑えるだけではなく、それ以外の一般層もしっかり取り込んでいるところが実に周到である。

7月22・23日に放送される『FNS27時間テレビ』でも、千鳥、かまいたち、ダイアンの3組がMCを務めて、『千鳥の鬼レンチャン』をベースにしたさまざまな企画が行われる。

思えば、いまやお笑い界最大のヒットコンテンツとなった『M-1グランプリ』も、マニア層とライト層の両方に刺さっているタイプの番組である。そのように今の時代の理想的なお笑い番組のあり方を体現している『千鳥の鬼レンチャン』は、ここからさらに勢いに乗って、高視聴率の「鬼レンチャン」を見せてくれるかもしれない。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行う。主な著書に『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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