プロ野球に新風を。兄は巨人内野手、くふうハヤテ増田将馬は「ホンモノの即戦力」でドラフト指名を目指す
ウエスタン・リーグを戦いながら、ドラフト指名を待つ。
今年、野球界には新たな形が生まれている。
ファームを戦いながらドラフト指名へアピール
プロ野球ファーム拡大に伴い、ウエスタン・リーグに「くふうハヤテベンチャーズ静岡」、イースタン・リーグには「オイシックス新潟アルビレックスBC」が新規加入した。
両チームには様々な球歴の選手が在籍するが、現時点の目標は「セパのNPB12球団と契約すること」と共通している。以前にドラフト指名された「元NPB選手」や外国籍選手については、シーズン中(期限は7月末)に移籍することが可能だが、一方でそのほかの高校、大学、社会人、独立リーグなどからこの両球団に入団してプロ野球ファームを戦っている選手が12球団に“移籍”するためには、ドラフト会議で指名される必要がある。
そのため、新規参入の2チームは独立リーグ球団と似た立場とも言える。
しかし、ファームリーグに所属してNPB球団と年間を通して戦えるメリットはやはり大きいのではなかろうか。
くふうハヤテの増田将馬外野手がその好例だろう。
ウエスタンで打率3割超、盗塁数2位
ここまで39試合に出場して打率.306、0本塁打、12打点、11盗塁の成績を残している。規定打席に10打席足りていないため、ウエスタンの打率ランキングに名前はないが、仮に現時点から10打席すべて凡退したと仮定して成績を計算してもウエスタン・リーグの5位にランクインする数字を残している。さらに盗塁数はリーグ2位タイ。50m5秒9の俊足はもちろん中堅の守備でも大きく活きている。
増田もこのように話す。
「打率や盗塁はここまで納得できる数字は残せていると思います。これまで社会人や独立リーグでプレーをしていましたが、そこで結果が出ても尺度が分からない部分もありました。今は日々NPBの投手と対戦して、バッテリーや守備もNPBの選手を相手にやれている。自信にもつながるし、自分がファームではありますがその中でついていけるという実感は湧いてきています」
兄は5学年上の増田大輝
増田は徳島県出身。中部学院大学時代は3年秋に捕手でベストナイン。その後、社会人野球のジェイプロジェクトを経て、四国アイランドリーグの徳島インディゴソックスでプレーした。徳島では遊撃手としてもプレー。昨年は主に外野を守り、打撃成績でも打率.309、1本塁打、25打点、37盗塁、出塁率.395を記録した。チームの主将を務めてリーグ盗塁王にも輝き、ドラフト指名を待ったが吉報が届かずに悔しい思いをした。「ドラフト指名されてNPB球団に行くため」に、くふうハヤテでプレーすることを決断した。
また、兄は巨人でユーティリティプレーヤーとして活躍する増田大輝。5学年上の兄とはオフに一緒に練習をする。
「普段は自分からあまり聞くことはしないんですが、バッティングのコツを教わってそれをずっと継続して取り組んでいます。徳島に入った初年度の一昨年は打率が低かったのですが、それをやり始めてから成績が良くなりました」
四国アイランドリーグは150キロ級の直球を投げる投手が複数いる。その球に対応しようとするうちにミートポイントが投手寄りになり過ぎていた。結果的に変化球に泳がされ凡退を繰り返した。「頭を動かさず、ボールを後ろから見る」。その修正で打撃は一気に向上したという。
「ウエスタン・リーグではオリックスの椋木投手や広島カープの野村投手から打てたのがここまで印象強いです」
当面の目標は打率3割以上を維持することと、盗塁を20個に乗せること。
年齢はネックなのか、それとも?
ドラフト指名へ懸念があるとすれば年齢だ。6月の誕生日で26歳になる。ただ、ウエスタン・リーグでこれだけの力を示す20代中盤の選手が12球団全体でどれだけいるか。もし、今の増田が12球団のどこかに所属していればいつ1軍からお呼びがかかっても不思議ではない。いわゆる「ホンモノの即戦力」と言える。それならば必要以上に二の足を踏むことはないのではなかろうか。
くふうハヤテ静岡とオイシックス新潟には「即戦力系」のドラフト対象選手は他にもいるだろう。12球団スカウトが彼らをどのように見て、球団はどのように判断するのか。
この秋のドラフトで両球団の選手がどれだけ球界に新風を巻き起こせるのか、大きな注目ポイントの1つとなるだろう。
(※写真はすべて筆者撮影)