G.G.佐藤だけじゃない 韓国もエラーを連発。その原因は?[日本×韓国・北京五輪野球振り返り 1]
7月に開催が予定されている東京オリンピック(五輪)で、2008年の北京大会を最後に競技種目から外れた野球が3大会ぶりに復活する。本欄では13年前、金メダルを獲得した韓国代表の全9試合を現地観戦した筆者が、北京五輪を振り返る(その1)。
(その3 稲葉篤紀が見上げたイ・スンヨプの白球 金への思いと悔しい思い)
(その2 李大浩にバント、岩瀬(元中日)に左の代打 当たった韓国の采配)
韓国はG.G.佐藤より先にエラーを連発していた
「金しかいらない」
そう語った星野仙一監督率いる北京五輪野球日本代表は準決勝で韓国、そして3位決定戦でアメリカに敗れ、メダルなしの4位で大会を終えた。敗戦後、一部の野球ファンから強く非難されたのが決勝トーナメント2試合で3失策(ゴロ1、フライ2)した外野手のG.G.佐藤(西武)だった。
同氏のプレーについては後に本人が各所で振り返っているため詳細は割愛するが、実は北京の外野ではG.G.佐藤以前に、金メダルを手にした韓国の選手たちもエラーを連発していた。
準決勝日韓戦の4日前、2008年8月18日。韓国は4戦全勝で台湾との対戦を迎えた。気温32度。青空の下、午前11時半に五☆松第1球場(☆は木へんに果)で始まったこの試合、韓国にとって大会6日目で初の晴天でのデーゲームだった。
韓国は1回表に7点を先制。2回にも1点を挙げ8-0とし楽勝ムードかと思いきや、台湾に追い上げられ6回裏に8-8の同点となった。韓国が失点を重ねた原因の一つ、それが外野守備の乱れだった。
2回裏2死一、二塁ではライトのイ・ジンヨンが芝生を転がってきた打球を、グラブに当てることなく後ろに逸らすタイムリーエラー。また5回裏1死一、二塁ではレフトのキム・ヒョンスがゴロを後ろに弾いた。
北京でプレーした日韓の野手たちが後に口にしていたのが、「グラウンドの芝生が根付いていなかった」ということ。五輪終了後には撤去され、跡地に商業施設が建つことが決まっていた「仮設球場」のグラウンドは、バウンドが不規則で、打球の勢いが急に止まることもあった。
日程の影響と結末
さらに7回裏にセンターのイ・ジョンウクはフェンス際の飛球を追うも、差し出したグラブとボールの位置がずれていた。ボールを捕りそこなった直後、イ・ジョンウクは右手で目を抑えた。五☆松第1球場は屋外球場の理想とされる方位とは逆向きに作られていて、ホームベースが南西側に位置。野手にとって日中の太陽光が非常にまぶしい球場だった。
韓国外野陣は芝生、日差しに悩まされるも9-8で辛くも勝利。韓国は翌19日のキューバ、20日のオランダも破るが、この2試合も台湾戦と同じ第1球場、強い日差しの下での試合だった。韓国は厳しい環境に順応して連勝を続け、22日に迎えたのが日本との準決勝。この試合もまた第1球場、朝10時半開始のゲームだった。
一方の日本は予選リーグ7戦中、デーゲームは18日のカナダ戦の1試合のみ。しかも行われたのは第1球場とは方位が異なる第2球場で、日本にとって韓国との準決勝が、第1球場での最初のデーゲームだった。
球場の悪条件は戦う両チームにとって同じだ。しかし準決勝の時点で「慣れ」に関しては、韓国の方が明らかに上回っていた。
もし日韓の日程が逆だったら。G.G.佐藤に悲劇は訪れなかった、かもしれない。
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