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「定額働かせ放題」制度・全文チェック!~繰り返される「成果に応じて賃金を支払う新たな制度」という誤報

佐々木亮弁護士・日本労働弁護団幹事長

ついに閣議決定されてしまいましたね。

労働時間でなく成果で…労基法改正案を閣議決定

時間でなく成果に応じ賃金を 労基法改正案を閣議決定

しかし、なぜ「定額¥働かせ放題」制度を、成果に応じた報酬が支払われる制度という誤報が相次ぐのでしょうか。

マスコミの記者さんたちは、今日、閣議決定された法案要綱を本当に読んでるですかね?

何度指摘しても、この誤報が繰り返されるので、こうなったら

全文チェックだ!

労働基準法等の一部を改正する法律案要綱

これが閣議決定された法案要綱です。

これの「六」があたらしく導入される制度です。

いわゆる「残業代ゼロ」制度、最近では「定額働かせ放題」制度といわれるやつですね。

順次見ていこう!

六 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)

これが表題です。成果型とか書いちゃってます。

1 賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、

まずはこの委員会の設置が必要となる、と書いてあります。

当該委員会が委員の五分の四以上の多数による議決により(一)から(八)までに掲げる事項について決議をし、かつ、使用者が、当該決議を行政官庁に届け出た場合において、

委員会が8項目について決議して、それを行政官庁=労基署に届け出る、と書いてあります。

(二)に掲げる労働者の範囲に属する労働者(以下「対象労働者」という。)であって書面等の方法によりその同意を得た者を当該事業場における(一)に掲げる業務に就かせたときは、

対象労働者のことや対象業務のことが書いてあります。

労働基準法第四章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しないものとすること。ただし、(三)及び(四)の措置を使用者が講じていない場合は、この限りではないものとすること。

ここでは残業代が発生しないことや、休憩や休日の規定が適用されないということが書いてあります。

ここまで成果に応じた報酬が払われるという記載なし

ここからは委員会が決議する8項目が列挙されます。

(一)高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせる業務(以下「対象業務」という。)

ここでは対象業務について書いてあります。

「その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くない」という記載がありますが、成果に応じて報酬が支払われるとは書いていません。

(二)特定高度専門業務・成果型労働制の下で労働する期間において次のいずれにも該当する労働者であって、対象業務に就かせようとするものの範囲

対象労働者について書いてあります。

これにはイとロの2つあり、両方に該当する必要があります。

イ 使用者との間の書面等の方法による合意に基づき職務が明確に定められていること。

仕事内容が明確であること、という意味ですね。

ロ 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまって支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額をいう。)の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。

これがいわゆる年収要件です。

平均年収の3倍というところは法律に書かれますが、あとは省令に委ねられます。

(三)対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(1の委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(以下「健康管理時間」という。)を把握する措置(厚生労働省令で定める方法に限る。)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。

労働時間を「健康管理時間」と変なネーミングにした上で、それを使用者が把握すること、ということが書いてあります。

(四)対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。

これがいわゆる健康確保措置というやつです。

次の3つから1つを選択すればいいということになります。

イ 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、深夜業の回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。

ロ 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。

ハ 四週間を通じ四日以上かつ一年間を通じ百四日以上の休日を確保すること。

これの1つを取ればいいだけなんですが、これについては次の記事を見てください。

1日24時間働くのと、1年360日働くのと、どっちがいい?~残業代ゼロ制度の笑えない「健康確保措置」

ここまで成果に応じた報酬が払われるという記載なし

(五)対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間の状況に応じた当該対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置であって、当該対象労働者に対する有給休暇(年次有給休暇を除く。)の付与、健康診断の実施その他の厚生労働省令で定めるものを当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。

有給休暇を取らせましょうとか、健康診断などを受けさせましょう、というようなことが書いてあります。

(六)対象業務に従事する対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。

苦情処理の機関を作りましょう、と書いてあります。

(七)使用者は、同意をしなかった対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。

同意しないからといって、不利益に扱ったらダメよ、と書いてあります。

(八)(一)から(七)までに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

省令で定めたことも委員会で決議するんだよ、と書いてある。

ここまで成果に応じた報酬が払われるという記載なし

2 1の届出をした使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、1の(四)及び(五)の措置の実施状況を行政官庁に報告しなければならないものとすること。

上の(四)と(五)については労基署に実施状況を報告しなさいよ、と書いてあります。

3 企画業務型裁量労働制の委員会に関する事項は、1の委員会に関する事項について準用するものとすること。

企画型裁量労働制の規定を準用するよ、と書いてあります。

以上です。

・・・え?

結局、成果に応じた報酬が払われるという記載なし

なのに、なぜ、成果で報酬が支払われる制度が導入されるって、報道されるんでしょうね。

さすがに法案に書かれてないのですから、完全に誤報だと思いますよ。

弁護士・日本労働弁護団幹事長

弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団幹事長(2022年11月に就任しました)。ブラック企業被害対策弁護団顧問(2021年11月に代表退任しました)。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!2021年3月、KADOKAWAから「武器としての労働法」を出版しました。

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