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入社後すぐに欠勤と休職を繰り返し、産休育休を取得したお妊婦様事例。たまらないと経営者の悲痛な声

小酒部さやか株式会社 natural rights 代表取締役
悩む経営者のイメージ(写真:アフロ)

現在、育児法改正の審議会が開かれ、男性育休の取得促進のための議論がなされている。産休育休の取得が進み、仕事と生活の両立がなされるのは大賛成だが、取得する社員が増えると、中には社会人としての常識やマナーに欠けた行動を取る人も出てしまう。

それが女性だった場合、「お妊婦様」「モンスターワーママ」と皮肉めいた言葉で批判されることがある。実際には、産休育休の取得を阻害されるマタハラ・パタハラの方が多く、「お妊婦様」「モンスターワーママ」は極少数だとは思うが、問題なのは「お妊婦様」「モンスターワーママ」は自分の行動を当然の権利と正当化し、企業側が対処の仕様がない、ということにある。私(筆者)のもとに入って来た事例を以下にご紹介する。この問題について考えるきっかけになってもらえたらと思う。

「お妊婦様」「モンスターワーママ」とは、

妊娠や育児というカードを最大限に利用して、仕事や周囲への気遣いをせずに過剰な権利意識で迷惑を掛けたり、周囲を傷つけたりする妊婦やワーキングマザーのことをいう。女性側がむしろ加害者となっている。これは法律の問題ではなく、社会人としての常識やマナーの問題。

<事例>

従業員20名以下の中小企業に、営業職として転職してきたAさん。

3ヶ月の試用期間を過ぎ、正社員登用となってすぐに妊娠が発覚した。

営業職のため売り上げノルマを課されていたが、3ヶ月の試用期間中の売り上げはゼロ。ちょうどこれから指導しなくては、という矢先の妊娠報告だった。

妊娠はいつするか分からない。入社後まもない妊娠も仕方ないが、問題はその後の行動だった。

妊娠が分かると、オフィス近くまで出社しても「気分悪いので帰ります」と、妊娠を報告して来た月の出社率は50%になった。

翌月から2ヶ月間、医師の診断では病症は見られないにもかかわらず、「具合が悪い」と無給の欠勤をとった。

妊娠5ヶ月の安定期を迎え、無給欠勤から復帰したが、「ストレスで流産したら心配だ」として、補助的業務への変更を希望した。

社内に売り上げを立てないポジションはなく、もちろん営業職のため補助的業務も存在しない。会社側は当初のノルマから下げて、最低金額の売り上げを設定せざるを得なかったが、本人は時短勤務を希望し、入社してから売り上げゼロの状態がずっと続いた。

復帰から間もなくして、今度は切迫流産だと言い出し、傷病休暇となった。

休職中のやりとりはチャットやメールのみ。一方的な用件を伝えて来るだけで、会社への感謝や申し訳ないといった言葉はまるでなかった。

気にする内容は産休育休の給付金がもらえるかどうかで、国の機関や労働基準監督署に相談したと言い、お金や休むことに関しては知識を付けていた。職を失う心配ではなく、産休育休が取得できるか、ということしか頭にない様子だった。

その後は、切迫流産、切迫早産の傷病休暇を3ヶ月ほど取得し、そのまま産休・育休を取得していった。

社長は沈痛な面持ちで、私(筆者)に話をしてくれた。

本来であれば、営業業務の指導をしなくてはならないのだが、それをストレスとされ、「流産する」と切り出されると、雇用すること自体も恐ろしく従うしかなかった。

Aさんの直属の上司も、マタハラだと言われるのが怖くて何も指導ができずにいた。

また、労働基準監督署の話なども出され、脅しに近いと感じた。

複数の弁護士事務所にこの問題を相談したが、「妊婦は法に守られているから無理」と門前払いされ、話も聞いてもらえず絶望的な気持ちになった。

女性が多く働く職場で、女性活躍を積極的に応援し、女性が働き続けることのサポートをしてきた。現に、Aさんにも遅刻や欠勤、2ヶ月の無給欠勤、妊娠の定期検診休暇などすべてに対応した。

それがこの仕打ちとは怒りを感じる、と社長はいう。

社長から直接話を聞いて、私(筆者)もとても重苦しい思いになった。

産休・育休の取得直前の休業は傷病休暇とのことだったが、それ以前の行動が酷いため、傷病休暇も演技して医師の診断書を取っているのではないか、と疑いたくなる会社の気持ちもよく分かる。

「お妊婦様」「モンスターワーママ」の問題は、法律の問題ではなく、社会人としての常識やマナーの問題となるため、弁護士に相談するのは難しいだろう。

社会人としての常識やマナーは社員教育で養うしかないのだが、転職入社の社員は前職で基本的なビジネスマナーは身に付けているだろうと思って、会社側は採用したりする。

また、この事例の場合、転職入社後まもない妊娠で、会社側は指導できない状況になってしまったというのが、やるせない。

そして、私が今まで見てきた「お妊婦様」「モンスターワーママ」事例の共通事項が、仕事ができない、仕事をしない、自分の職務から逃げる、という点だ。

逆に仕事をきちんとこなす社員であれば、「お妊婦様」「モンスターワーママ」とまでは呼ばれないだろう。

妊娠する前までに、できるだけ仕事を覚え、一人でこなせる業務を増やし、仕事の楽しみを知ることが、この問題に遭遇しないための一つの解決ポイントなのかもしれない。

「お妊婦様」「モンスターワーママ」問題でお困りの事業主の方は、こちらまでご相談ください。

株式会社 natural rights

株式会社 natural rights 代表取締役

2014年7月自身の経験から被害者支援団体であるNPO法人マタハラNetを設立し、マタハラ防止の義務化を牽引。2015年3月女性の地位向上への貢献をたたえるアメリカ国務省「国際勇気ある女性賞」を日本人で初受賞。2015年6月「ACCJウィメン・イン・ビジネス・サミット」にて安倍首相・ケネディ大使とともに登壇。2016年1月筑摩書房より「マタハラ問題」、11月花伝社より「ずっと働ける会社~マタハラなんて起きない先進企業はここがちがう!~」を出版。現在、株式会社natural rights代表取締役。仕事と生活の両立がnatural rightsとなるよう講演や企業研修、執筆など活動を行っている。

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