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センバツ出場校決定! 智弁の赤いユニが見られないのは7年ぶり。そして4元号勝利に挑むのは?

楊順行スポーツライター
昨夏の甲子園。優勝した智弁和歌山は、出場辞退校などを慮ってか喜びも控えめだった(写真:岡沢克郎/アフロ)

 第94回選抜高校野球大会(3月18日開幕)の選考委員会が開かれ、21世紀枠3校を含む出場32校が決まった。昨秋、明治神宮大会を制して初めて秋の日本一に輝いた大阪桐蔭、スラッガー・ビッグ3の佐々木麟太郎、真鍋慧、佐倉侠史朗を擁する花巻東(岩手)、広陵(広島)、九州国際大付(福岡)、センバツは初出場のクラーク国際(北海道)、離島から出場の大島(鹿児島)など興味の尽きない顔ぶれだ。

 一方、選からもれた常連もある。昨夏の甲子園で準優勝した智弁学園(奈良)もそのひとつ。中止になった2019年も含め、過去8年で7回出場していたが、秋の県大会を制しながらも近畿大会での初戦負けが響いたかっこうだ。昨夏の甲子園で、兄弟校決勝を演じて優勝した智弁和歌山の名前もない。11月の練習試合で対戦したある監督が、「全国の頂点を狙えるレベル」という戦力を持ちながら、和歌山県大会準決勝で和歌山東に4対5と敗退し、近畿大会に出られなかった。

『智辯』の赤い文字が見られない

 白地に赤。このセンバツでは、見慣れた智弁のユニフォームが見られない。センバツでは過去6年、少なくとも両校のうちどちらかは出場しており、そのうち16年は智弁が優勝し、18年は和歌山が準優勝。そういう強豪の『智辯』の赤文字が見られないセンバツは、15年以来ということになる。

 昨夏の決勝を戦った両校の名前が出たついでに、21年の高校野球を振り返ると……2年ぶりに開催されたセンバツでは東海大相模(神奈川)が優勝したが、やはり昨年もコロナに振り回された。その相模は、春夏連覇を目ざして夏の神奈川大会準々決勝を控えたところで、新型コロナ陽性者が出て無念の出場辞退。県内公式戦45連勝を続けており、全国を3回制覇した門馬敬二監督がこの夏での勇退を表明していただけに、なおさら無念だっただろう。夏の地方大会ではほかにも星稜(石川)などの強豪校が、コロナ禍で悔しい出場辞退となった。

 2年ぶりの夏の甲子園も、やはり新型コロナウイルスの影響を受けた。無観客での開催、期間中の兵庫県への緊急事態宣言発出……さらに、集団感染が判明した宮崎商は、智弁和歌山との初戦(2回戦)を辞退し、1回戦を突破した東北学院(宮城)も、陽性者が出て松商学園(長野)との2回戦を辞退。誰が悪いわけでもないが、大会史上初の不戦敗が記録されてしまった。

 長雨にも泣かされた。まず開会式が1日順延し、3日目の明桜(秋田)と帯広農(北北海道)のほか、2試合がノーゲームとなった。さらに、大阪桐蔭と東海大菅生(西東京)の強豪対決は、23年ぶりの降雨コールドゲームに。雨天による順延は史上最多の7度を数え、この大会から導入されるはずだった3回戦終了後の休養日だけではなく、準決勝翌日の休養日も消滅した。なんとか日程をやりくりし、女子硬式野球選手権の決勝を初めて甲子園で行ったのは記憶にとどめたいが、大会終了は史上最も遅い8月29日にまでずれ込んだ。

 ベスト8のうち5校を近畿勢が占めたのは、こうしたコロナ禍、しかも長雨の影響で、練習場所の確保など"地の利"もあっただろう。まあ近畿は、もともとレベルの高い地区ではあるが、それにしても同一地区から5校の8強入り、そして4強独占はいずれも史上初めてで、決勝は先述のごとく智弁対決。これも史上初めての兄弟校、しかも隣県同士の顔合わせとなった(センバツでは過去、1972年の日大桜丘と日大三[いずれも東京]がある)。

広陵と広島商が4元号勝利に挑む

 両校は02年夏の甲子園でも対戦し、そのときは和歌山の勝利。近畿大会での対戦も含めれば公式戦では過去2勝2敗だったが、5回目の対戦を制したのは和歌山だった。中谷仁監督は、21年前に優勝したときの指揮官・高嶋仁監督の教え子で、97年夏の優勝メンバー。阪神などのプロ生活を経て18年秋から母校の監督になっている。84年の学生野球構成員資格回復制度の導入後、プロ経験監督が優勝するのもまた、初めてだった。

 ちなみにこの夏、いずれも勝ち星を記録した松商学園と高松商(香川)はこれで大正、昭和、平成そして令和の「4元号勝利」。今センバツの出場校では広陵、広島商の広島2校が3元号で勝利を挙げている。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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