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OBC高島に今なお受け継がれる、元阪神・野原祐也前監督の野球

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
左はOBC高島の野原祐也前監督、右は昨年が代行でことし専任となった佐竹誠人監督。

 社会人野球は7月開催の都市対抗野球大会に向け、3月から各都道府県で行われてきた1次予選が今月末で終わります。そろそろ2次予選が始まる時期になりました。あす5月20日開幕の東海2次予選を皮切りに、6月半ばまでで12地区の31代表が決定します。

 近畿では、大阪・和歌山1次予選をマツゲン箕島硬式野球部が2年連続で制し、兵庫1次予選は神戸ビルダーズが初めて優勝。オリックスなどでプレーした斉藤秀光さん(47)が監督の神戸ビルダーズは、昨年の日本選手権近畿最終予選で創部2年目ながら本大会まであと一歩と善戦しました。

 そして滋賀1次は、きょうご紹介するOBC高島。また奈良1次は大和高田クラブ、京都1次は京都城陽ファイアーバーズと、おなじみのクラブチームが勝ち上がっています。ただしこの地区にはまだ『京滋奈1次予選』があり、3チームの上位2チームになってようやく近畿2次です。

 その京滋奈1次予選は今月11日にわかさスタジアム京都で行われ、大和高田クラブが1位通過。OBC高島も2年連続で近畿2次予選へと駒を進めました。この京滋奈1次予選の試合内容については、のちほどご紹介します。

◆野原祐也監督の4年間

 さて、現在は阪神タイガースの女子硬式野球クラブチーム『阪神タイガースWomen』の初代監督として忙しい日々を送る野原祐也さん(37)が、その前にOBC高島の監督をされていたことはご存じでしょう。

 阪神を退団後、古巣であるBCリーグ・富山サンダーバーズに戻ってコーチ兼任でプレー。現役を退いた2017年から、大家友和さん(現DeNA2軍投手コーチ)がGMを務めるOBC高島で監督となりました。就任時の記事はこちらです。

もと阪神タイガースの野原祐也選手が、社会人野球のクラブチーム監督に就任

 技術だけでなく、練習の仕方やウエートトレーニングの方法、さらにメンタルな部分まで、多くのことを教わった選手たちは、まさにスポンジのごとく、それらを吸収していきました。

 その年の4月、都市対抗滋賀1次予選でカナフレックスに勝って、京滋奈1次予選も突破し、初めての近畿2次予選に進出したのです。

もと阪神・“野原祐也監督”率いるOBC高島が、都市対抗近畿2次予選へ初進出!

2018年5月6日に鳴尾浜で行われた阪神ファームとの練習試合。列の右端が野原監督、左端が佐竹選手。一番大きいのがトラヴィス投手(14番)です。
2018年5月6日に鳴尾浜で行われた阪神ファームとの練習試合。列の右端が野原監督、左端が佐竹選手。一番大きいのがトラヴィス投手(14番)です。

 また監督3年目の2019年には全日本クラブ選手権に出場。本大会に出ること自体が10年ぶり3度目で、過去2度は1回戦で敗退していたのに、この年はどんどん勝ち進み、準決勝では同じ東近畿代表で前年度チャンピオンの大和高田クラブを破って決勝進出!

元阪神・野原祐也監督が“初陣”で逆転勝利!《全日本クラブ選手権》

OBC高島がクラブ選手権準優勝!元阪神・野原祐也監督「選手に感謝しかない」

2019年9月の全日本クラブ野球選手権にて。野原監督(右)と松浪遼主将(左)。松浪選手も昨年末で現役を退きました。
2019年9月の全日本クラブ野球選手権にて。野原監督(右)と松浪遼主将(左)。松浪選手も昨年末で現役を退きました。

 2020年は新型コロナウイルスの影響を受け、社会人野球の公式戦はほぼ中止。全国大会も社会人日本選手権と全日本クラブ野球選手権が開催されず、都市対抗野球のみが行われました。チームとしての活動も夏以降だったので、練習試合もままならなかったはずです。

 そんな状況の4年目シーズンをもって、チームを去ることになった野原監督。心残りだったでしょうね。シーズン終わりに初めて告げたとか。選手たちを思ってなかなか言い出せなかったのだろうと想像します。選手も急なことで驚き、寂しかったと話していました。

 中でも、野原監督のあとを受けて昨年は監督代行、今季は監督としてチームを引っ張る佐竹誠人さん(32)は、当時を振り返ってこう語ります。

 「退任を知らされたのは最後の大会が終わった時のミーティング。そのあとオープン戦があったんですけど、サインミスで負けて。ラストという思いがあったから、めちゃめちゃ悲しくて、めちゃめちゃ泣きました。次の日、仕事に行けないんじゃないかと思うくらい」

 就任直後からずっと佐竹選手を自身の右腕と、誰よりも頼りにしていた野原監督ですが、何も聞かされていなかったとは…。「はい。本当に何でも言ってくれていたのに、そこだけはあえて伏せて…。もしかしたら気を使ってくれはったのかなと思っています」

 なるほど。シーズン途中で伝えて、それこそ泣き崩れてしまうような事態は避けたかったのかもしれませんね。

◆監督不在でも団結、躍進した昨年!

 佐竹選手が監督代行を務めた昨年は、制限つきだったものの社会人3大大会は無事に開催されました。ただし東京五輪の特別編成で、クラブ選手権は5月、都市対抗野球が6~7月、日本選手権が11~12月です。

 まず4月に行われたクラブ選手権の東近畿予選決勝で、OBC高島は大和高田クラブに9回サヨナラ負けを喫し、惜しくも本大会出場を逃しました。しかし都市対抗野球は、滋賀1次予選と京滋奈1次予選を突破して、2017年以来4年ぶりに近畿2次予選出場を果たします。

 その近畿2次予選で大健闘を見せたOBC高島。少し振り返りましょう。佐竹監督の呼称は当時の“監督代行”でいきます。

 9月1日の1回戦で日本製鉄広畑に2対1と逆転勝利!4安打1失点で完投した山下聖也投手も含め、新聞に大きく取り上げられました。2回戦はNTT西日本に負けて敗者復活戦(第3代表決定トーナメント)へ回り、その1回戦で日本生命に敗れたものの0対2と僅差です。

 次は本戦出場の残り1枠をかけた第4代表決定トーナメントで、その3回戦はカナフレックスが相手。6回までに5対0とリードして8回にも1点を加えますが、7回からの3イニングで計5点を返され1点差…。しかし山下投手が10安打されながら完投!逃げ切りました。

 佐竹監督代行が「カナフレックスに勝ったのは、野原監督が就任した2017年の滋賀1次予選以来4年ぶりです。専属のコーチも監督もいない中、みんなが頑張ってくれているおかげ。まだ、ここで試合ができる!楽しさしかありません」と語っていたのを思い出します。

昨年9月の都市対抗近畿2次予選。試合前、選手に話をする松浪主将(中央)と、それを笑顔で見守る佐竹監督代行(右)。
昨年9月の都市対抗近畿2次予選。試合前、選手に話をする松浪主将(中央)と、それを笑顔で見守る佐竹監督代行(右)。

「とても濃い9月だった」

 そして日本製鉄広畑との再戦となった第4代表決定トーナメントの4回戦は、開始早々に守備も乱れるなど2対12で7回コールド負け。佐竹監督代行は「うちがやるべきこと、捕れる打球をアウトにするという基本的なことができなかったから」と敗因を語りました。

 それでも2点を返したのは収穫?「そうですね。意地を見せられた。タイムリーを打った波多野(嵩之選手)も新人ですし、その子を含めて本当にいい経験。みんなで勝ち取った2次予選で、みんなが頑張って企業チーム相手に5試合もできて。そこは自信にして次へつなげていきたい」

 続けて「濃い9月だった。すごく濃い時間を僕たちは過ごさせていただいた」と佐竹監督代行。初戦が9月1日で、最後の5試合目が9月27日。本当に、ほぼ1か月ですね。忘れられない時間になったと思います。これが昨年秋にOBC高島が見せた快進撃でした。

 佐竹監督代行がいつも口にする『野原魂』『野原イズム』『野原チルドレン』という言葉は、この時も何度か出てきて、最後にまた「今回うちが勝てたのも、野原さんが築き上げてくれたから。野原イズムを継承して、野原チルドレン一同、頑張ります!」と締めくくっています。

昨年9月の都市対抗野球・近畿2次予選でカナフレックスに勝った試合後に全員集合。はや懐かしいですね。退団した選手や移籍した選手もいます。
昨年9月の都市対抗野球・近畿2次予選でカナフレックスに勝った試合後に全員集合。はや懐かしいですね。退団した選手や移籍した選手もいます。

◆滋賀県社会人ベストナイン表彰

 そして昨年11月に発表された、滋賀県野球連盟と京都新聞社選定の『2021年滋賀県社会人野球ベストナイン』では、OBC高島から5人が入りました。ちなみに残る5人はカナフレックス。2チームで独占ですね。

投手  山下聖也(OBC高島)

捕手  福田優人(カナフレックス)

一塁手 波多野嵩之(OBC高島) 

二塁手 佐竹誠人(OBC高島)

三塁手 田中慧樹(カナフレックス)

遊撃手 米倉凌平(カナフレックス)

左翼手 山崎壱征(カナフレックス)

中堅守 森田皓介(カナフレックス)

右翼手 大生竜万(OBC高島)

指名打者 森田慧(OBC高島)

 この中で山下投手は今季から社会人のシティライト岡山へ、大生選手はルートインBCリーグ・茨城へ移籍。佐竹選手は監督専任となりました。

◆もっと野球を教わりたかった

 改めて聞いてみましょう。野原前監督が4年間で伝えたことは何ですか?「基本的なことです。ちゃんと仕事に行って働きなさい、私生活をしっかりしなさい、と。まずこういうところから改善されました」。なるほど、まさに基本ですね。

 「頭を使う、相手を観察する、そのためには私生活も含めて目配り、気配りができなければ、いざグラウンドに立っても野球はできないよと。技術的にああしろ、こうしろとはあんまり言われていないですね。個人個人への指導はもちろんしてもらいましたけど」

 OBC高島では試合後のミーティングに全員、ノートを持って集合するのが定番。これも実は野原監督時代に始まったことです。

 「常に頭を使えと野原さんに言われて。書かないと、人は忘れる生き物だからと。試合中も1打席ごとに打席内容を書いて次に備える。試合後はその日よかったこと、悪かったこと、気づいたことを書いて、振り返るんです」と佐竹監督代行。

 「試合前にチームはこうする、自分はこうするというプランを立てて取り組み、振り返って次どうするかを考えるのが大事だと。考える野球ですね。技術だけでなく、流れを読むこと、常にアンテナを張り巡らすこと。いつも言うてはりました」

 なるほど、それが今もルーティンとして受け継がれているんですね。

 「野原監督には本当にいろんなことを教わって、それがゲームで出る。僕は野原さんから教えてもらったことを伝えているだけ。野原さんには感謝しかないです」という佐竹監督代行は、そのあと「一緒に過ごしたのは4年。もっと野球を教えてもらいたかった」とつぶやきました。

◆2022年も変わらぬ野原イズム

 年が明けて2022年は専任となった佐竹監督。「ゆくゆくは指導者をやってみたいと思っていたけど、まさかね」と笑っていましたが、チームにとっても選手たちにとっても、一番いい人事でしょう。

 佐竹監督がよく使う『GOOD BAD NEXT』というフレーズの意味は「good=よかったところは何か、bad=どういうところが悪かったのか。しっかり振り返って次の試合や練習(next)にどう取り組んでいくか」だそうで、これも野原前監督の教えを受け継いだものですね。

 改めて野原前監督の言葉を思い出しますか?「監督の立場になって、というのが大きいですね。僕らがどう強くなってきたのかなと。今まで弱かったでしょう?OBC高島って。でも野原監督に来てもらって強くなった実感があるので、監督がこんなこと言うてはったな~って振り返ったりします」

 それだけでなく「今も電話でいろいろ聞いてもらっています。この間も1時間ほどしゃべっていました(笑)」と佐竹監督。さすが「僕は野原チルドレン筆頭ですから!」と言い切るだけのことはありますね。

 新シーズンの目標を聞くと「まずクラブ選手権で全国制覇!…と言いたいところですけど、主力がだいぶ抜けたので。目標を持つことが大事で、それに向かって一歩ずつ進んでいけたらいいかなと思います」と答えてくれました。

 そして「焦らずいこう、徐々に、というのも野原さんの口癖でした。野原さんがいた時は、なかなかわかっていなかったけど、でも実際に強くなれた。野原イズムは継続です。チームの監督としてそこだけはぶれない。貫いていくつもり」と宣言しています。

ことし初公式戦、JABA京都府春季大会のカナフレックス戦で7回、十倉幸太選手は同点のタイムリー二塁打を放ってガッツポーズ!
ことし初公式戦、JABA京都府春季大会のカナフレックス戦で7回、十倉幸太選手は同点のタイムリー二塁打を放ってガッツポーズ!

◆難敵に初のコールド勝ち

 3月12日、わかさスタジアム京都で開幕した『第149回社会人野球京都府春季大会』が今季初の公式戦。初戦の相手は難敵の大和高田クラブですが、序盤から7点を奪い、投手陣は3安打完封リレー!なんと7対0で7回コールド勝ちしています。

 3月20日の準決勝では、同じ滋賀のカナフレックスと対戦。昨年9月の都市対抗野球近畿2次予選の第4代表決定トーナメント3回戦で勝った相手だったのですが…今回は5対10と大差で敗れました。

 専任として迎えた今季初公式戦も、佐竹監督は相変わらず大忙し。「まあノッカー、ランナーコーチ、ピッチャーの順番を決めるのも、選手交代を告げにいくのも、全部1人でやらないといけないので。去年もそうですよ。去年はそれにプラス、選手として出ていましたから(笑)」

 初戦は天敵ともいえるクラブチームの大和高田クラブ相手にコールド勝ちですね、と言ったら「僕が11年も社会人野球をやってきて、初めて大和高田クラブにコールド勝ちしました!」と佐竹監督。ちなみにコールド負けは何度もあるそうですが。

 「自信にはなったと思います。ちゃんとヒットを打って取った点数なので、タイムリーが出たので、よかったです」。みんな喜んでいましたか?「はい、だいぶ」と笑顔。

 敗れたカナフレックス戦も10安打。「そうですね、ヒットは出ていますね。寺前が調子いい。ずっと主軸を打っていました。自覚が出てきたのかなと思います。ことし4年目だけど高校から入ってきたので、まだことしで22歳なんですよ」

 今季は1番打者としてチームを牽引する寺前竜内野手(22)の名前が出てきました。「1年目にクラブ選手権の本大会を経験したこともあるし、去年までは僕ら先輩がいた中でのスタメンだったけど、ことしは自分が引っ張らなあかんと思ってやってくれていますね」

3月20日のカナフレックス戦で4打数3安打2打点と気を吐いた寺前選手。写真は9回の左前タイムリーです。
3月20日のカナフレックス戦で4打数3安打2打点と気を吐いた寺前選手。写真は9回の左前タイムリーです。

◆「流れを読んで野球をしなさい」

 寺前選手に、その点を聞いてみると「ことしになってから1番を打たせてもらっています。その日のチームの勢いをつけることしか考えていないですね。スイングにしても、その一振りでチームが“いける!”と思えるように心がけて1打席目は立っています」という答えでした。

 1年目にクラブ選手権を経験して、先輩方から刺激を受けたとか。「それが一番大きいですね。1年目、2年目ですごい選手たちと一緒にできたというのが今につながっているのは間違いないです」。今度は引っ張っていく立場?「そうですね」。背中で語るタイプ?「語れているのかどうか、わからないですけど(笑)」

 4年目とはいえ22歳は若手かと。「まだ新入団の選手より1つ下ですね。でも年は関係ないかな。やる時はやるしかないし、言う時は言います。って、僕もきょうミスしたんですけど。ミスした時はすみませんって」。そこは素直に、ですね。

 寺前選手も“野原チルドレン”の1人。記憶に残っていることはありますか?「一番覚えているのは、流れを読んで野球をしなさいって言葉ですね。高校を出て、こっちに来たんですけど、今まで言われたことがなかったから。それが一番、衝撃でした」

 試合においての流れ?「そうです。それが一番大事だと。僕の中でも、今になってやっと理解できてきたというか。今までは全然ダメでしたけど、ことしに入って引っ張っていく立場になったから、より理解できるようになったのかなと思います」

 頼もしいですねえ。「ありがとうございます!これからもっともっと。都市対抗もですけど、クラブ選手権に行きたいです。もう一回、行きたい。何とか大和高田を倒して。向こうも本気で来るでしょうし、こっちもガチンコで!」。目にも言葉にも力があふれる22歳でした。

寺前選手が今季はOBC高島の切り込み隊長に。でもまだ22歳になったばかりです。
寺前選手が今季はOBC高島の切り込み隊長に。でもまだ22歳になったばかりです。

◆流れを止めないために

 永井皓介投手(27)は野原監督と“同期入団”。私が2017年3月に野原監督就任の取材で高島市の練習場を訪れていた時、ちょうど永井投手ら新人選手の入寮日でした。でも本人じゃなく、ご両親とお話していました。今も球場でお会いしますが、あれから6年。早いですねえ。

 シビアな場面での登板がほとんどですけど、さすがいい仕事っぷりですね。頼りにされているということでしょう。それにしても仕事が多い!投げ終わったあとの攻撃で、気づいたらバット引きやレガースの回収もしていました。

 「監督も“野球は流れ”だと言っている中で、ヒットが出て点を取ってイケイケの場面にバット引きで間が空いてしまったら…。そういう時こそ流れを止めちゃいけないと思います。野原監督もでしたが、佐竹監督も常に流れを読んでいくことを大事にしているので」

 そんな永井投手はマネージャーの仕事も兼任しているので、ものすごく多忙。グラウンドで、ベンチで、試合前や試合後の球場外でも、見れば常に駆け足です。

いい笑顔の永井投手。もう1枚追加しましょう。
いい笑顔の永井投手。もう1枚追加しましょう。

さっきまでマウンドにいたと思ったら、攻撃になるとバットとレガースを受け取って便意へ走る永井投手。
さっきまでマウンドにいたと思ったら、攻撃になるとバットとレガースを受け取って便意へ走る永井投手。

◆都市対抗、ことしも2次予選へ!

 都市対抗野球の予選は、まず滋賀1次予選が4月に行われました。2回戦(準決勝)は4月2日、甲賀スタジアムで湖南ベースボールクラブと戦い、延長10回タイブレークの末に2対1で勝利。ただ試合後のミーティングで、佐竹監督がかなり怒っていたとか。

 理由を聞くと「めちゃくちゃ叱りました。久しぶりに厳しく。でも、やるべきことをやっていなかったので。技術は仕方ないと思います。ただ準備面など、やるべきことをやれていなかったから怒りました」とのこと。

 そして「翌日はウォーミングアップから全然違った。みんな別人。やればできるんですよ」と言うように、翌4月3日にオセアンBC彦根で行われた決勝はルネス紅葉スポーツ柔整専門学校に9対0で7回コールド勝ち!京滋奈1次予選へと駒を進めています。

 『京滋奈1次予選』は5月11日、わかさスタジアム京都での開催でした。最初に書いた通り顔ぶれは毎年ほぼ同じで、ことしも京都城陽ファイアーバーズ(京都)、OBC高島(滋賀)、大和高田クラブ(奈良)が参加。上位2チームが近畿2次予選へ出場です。

 まず1回戦の第1試合はOBC高島と京都城陽ファイアーバーズが対戦しました。

<第93回都市対抗野球大会 京滋奈1次予選>

5月11日 第1試合 (わかさスタジアム京都)

OBC高島-京都城陽ファイアーバーズ

   高島 000 001 001 = 2

   城陽 000 000 000 = 0

▼バッテリー

 [高] 東野-永井 / 堀川

 [城] 佐野(9回) / 吉田晏

▼二塁打 [高] 波多野 [城] 嶋村

▼盗塁 [高] 寺前

▼高島・打撃  (打-安-点/振-球/盗/失)

  1]遊:寺前  (4-0-0 / 1-1 / 1 / 0)

  2]二:十倉  (1-1-0 / 0-4 / 0 / 1)

  3]左一:元村 (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

  4]三:波多野 (4-2-1 / 0-1 / 0 / 0)

  5]中:田中  (5-1-1 / 0-0 / 0 / 0)

  6]一:森田  (2-0-0 / 2-0 / 0 / 1)

  〃打左:長岡 (2-2-0 / 0-1 / 0 / 0)

  7]指:高島  (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0)

  〃走指:内藤 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

  8]捕:堀川  (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0)

  9]右:佐藤  (2-0-0 / 1-1 / 0 / 0)

▼高島・投手     (安-振-球/失-自)

  東野 7.2回 29人109球(2-10-2/0-0)

  永井 1.1回 5人 19球 (0-1-1 /0-0)

《試合経過》※敬称略

 打線は1回から十倉の四球と波多野の二塁打などで2死二、三塁と攻めるも得点なし。以降は5回までヒットがなく、四死球や相手エラーで出した走者を還せません。でもようやく6回、先頭の十倉が左前打を放ち、犠打などで2死三塁となって田中の左前タイムリー!

 7回に2四死球、8回は波多野と田中の中前打と1死球で1死満塁のチャンスがありましたが、後続を断たれ無得点。しかし9回に先頭の寺前が死球と二盗、十倉も四球を選び元村の右前打で無死満塁!続く波多野の四球で押し出しとなり1点を追加しています。

 投手陣は、先発の東野が1回、2回と三者凡退。3回は先頭に二塁打を許しますが連続三振で2死。エラーで走者を三塁まで進めるも0点で抑え、4回も三者凡退。5回にもエラーで先頭を出しながら後続を断ち、6回と7回はまた三者凡退という、安定したピッチングでした。

 8回も簡単に2死を取ったあと四球を与え、ついでヒット、四球で2死満塁としたところで交代。こういうピンチで投げることの多い永井が引継ぎ、二ゴロに打ち取って3者残塁!9回は2死から死球を与えたものの、最後は中飛で試合終了です。

この試合で先制タイムリーを放った田中琢也選手。ただし写真は3月の京都府大会のものです。
この試合で先制タイムリーを放った田中琢也選手。ただし写真は3月の京都府大会のものです。

同じく京都府大会の写真ですが、4番の波多野嵩之選手はこの日、マルチ安打。9回は押し出し四球を選んで1打点でした。
同じく京都府大会の写真ですが、4番の波多野嵩之選手はこの日、マルチ安打。9回は押し出し四球を選んで1打点でした。

◆やはり手強い大和高田クラブ

 約30分後に始まった第2試合で、今度は大和高田クラブと戦ったOBC高島。3月の京都府春季大会とは逆に7回コールド負けを喫しましたが、二塁打4本を含む11安打で6点を奪う意地を見せています。

<第93回都市対抗野球大会 京滋奈1次予選>

5月11日 第2試合 (わかさスタジアム京都)

 OBC高島-大和高田クラブ

   高島 210 003 0 = 6

   大和 013 360 X =13

      ※7回コールド

▼バッテリー

 [高島] 堀口-山崎-青山 / 堀川

 [大和] 松林(5回1/3)‐迫(1回2/3) / 安岡

▼三塁打 [大和] 大西

▼二塁打 [高島] 寺前、十倉2、堀川

     [大和] 松本、大西、山本、安岡

▼盗塁 [高島] 寺前 [大和] 今里

▼高島・打撃  (打-安-点/振-球/盗/失)

  1]遊:寺前  (4-2-0 / 0-0 / 1 / 0)

  2]二:十倉  (3-2-3 / 0-1 / 0 / 0)

  3]一:元村  (4-1-1 / 2-0 / 0 / 0)

  4]三:波多野 (4-1-0 / 2-0 / 0 / 0)

  5]中:田中  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0)

  6]左:長岡  (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

  7]指:高島  (2-0-0 / 2-0 / 0 / 0)

  〃打指:森田 (2-1-0 / 0-0 / 0 / 0)

  8]捕:堀川  (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

  9]右:佐藤  (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

  〃打右:内藤 (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0)

▼高島・投手     (安-振-球/失-自)

  堀口 2.2回 14人 53球 (7-0-0/4-4)

  山崎  1回 8人 35球 (2-0-3/3-3)

  青山 2.1回 14人 50球 (4-1-2/6-6)

《試合経過》※敬称略

 先制したのはOBC高島。1回に寺前と十倉の連続二塁打で早々に1点!2死後に相手エラーがあり十倉が二塁から生還して2点目。2回は1死から二塁打した堀川がボークで三塁へ進み、2死後に相手エラーで還って3点目が入りました。

 1回は三者凡退で立ち上がった堀口ですが、2回は二塁打など2安打で2死一、三塁となってタイムリーでまず1点。3回には内野安打と犠打で1死二塁からタイムリー。続く二塁打で二、三塁として暴投で追いつかれ、なおも1死三塁で犠飛。この回3点を失って逆転されます。

 3回途中でリリーフして抑えた山崎が、4回はヒットと3四球で押し出し、2死後に2点タイムリー内野安打を許して計3失点。その4回に2死一、三塁で登板して後続を断った青山ですが、回をまたいで二塁打と犠打野選で無死一、三塁となってタイムリー二塁打。2死後にタイムリーで9対3。

 さらに盗塁と死球で2死満塁となり押し出し、次はなんと走者一掃のタイムリー三塁打。この回は長打3本を含む4安打と2四死球で打者一巡、一気に6点を奪われます。これで13対3、このままいけば7回でコールド負け…というところでOBC高島が意地を見せました。

 6回、先頭の代打・森田が右前打、1死後に代打・内藤の内野安打、寺前は中前打で満塁のチャンスに、続く十倉がライトへ二塁打を放ち、2人生還!さらに元村の左前タイムリーでもう1点。ここで大和高田クラブの先発・松林を降板させます。

 しかし1死一、三塁で代わった金村に後続を断たれ、その裏は青山が三者凡退で片付けたものの、7回の攻撃はこちらも三者凡退。13対6で試合終了、 7回コールドゲームとなりました。

この日先発した堀口大智投手。
この日先発した堀口大智投手。

十倉選手はこの日、タイムリー二塁打2本で3打点!写真は3月の京都府大会の写真です。
十倉選手はこの日、タイムリー二塁打2本で3打点!写真は3月の京都府大会の写真です。

◆自分たちは常に挑戦者

 佐竹監督は、この京滋奈1次予選を終えて「まずは2次予選に進出することができてよかったです」とコメント。「京都城陽ファイアーバーズ戦は、相手投手を打ちあぐねていたんですけど、東野がそこに気にすることなく自分のやるべきこと、投球をしっかりできた」と回顧しました。

 8回途中での投手交代は永井投手にピンチの場面でも行くと言ってあったそうですが、この日はリードした状態。「でも最後にいくからと、そのつもりで準備をしてもらいました。ある程度オープン戦でもやっている形だったので、永井も攻めるピッチングができたと感じます」

 打線については「何とか先制点を奪って、9回にダメ押しできたことが一番大きい。9回は1点差より2点差で(最後の相手の攻撃を)迎えたいから、どん欲に点を取るぞと話をして、結果取れたことは本当によかった」と振り返りました。

 それから「東野は投手リーダーとして頑張っていて、きょう結果も出たので、また自信になったかなと思います」と付け加えた佐竹監督。

 第2試合の大和高田クラブ戦は「松林くんという良いピッチャーから、春の京都府大会と同じく初回に先制できたことはよかった。前回のようにはならないとは思っていたけど、やっぱりそこはさすが大和高田クラブさんだなと改めて感じた」そうです。

 「ただ、大和高田クラブさんからしっかりと点数を取れていることは自信になると思います。2次予選でも当たる可能性は大いにあり得ますし、またクラブ選手権の東近畿予選では壁になっているチームですが、自分たちは常に挑戦者、相手の胸を借りて全力で戦います」

コーチが1人もいないOBC高島において「野手と投手のリーダーがしっかり練習をみてくれている」と佐竹監督は感謝しています。
コーチが1人もいないOBC高島において「野手と投手のリーダーがしっかり練習をみてくれている」と佐竹監督は感謝しています。

◆太く、強い束になって戦う!

 近畿2次予選に向けての意気込みも聞きました。そのままご紹介します。

 「去年は企業チームさんから2勝を挙げることができたけど、それは去年のチームであって、ことしも勝てるとかまったく考えていません。もちろん目標としては去年以上の成績を残すことと思っていますが。

 自分たちは先の目標ではなく、目の前の試合を『太く、強い束』になって全力で戦います。

 その中で、頭は冷静に、思考を止めずに野球に取り組みます!心は熱く、頭は冷静に。

 2次予選の舞台に立てること、平日の試合で各雇用先の皆様にはご迷惑をおかけしますが、感謝の気持ちをしっかりと持って、挑みます!」

 17日に行われた『第93回都市対抗野球大会・近畿2次予選』の組み合わせ抽選会でOBC高島は、初戦の相手が本大会での優勝経験もある大阪ガスに決定。いきなり大きな壁です。でも、佐竹監督は言いました。

 「どこが相手でも正直、僕らは変わりません。相手のことを考えられる余裕はないと思います。2次予選のチームでは間違いなく、OBC高島が一番弱いんで。やるしかないです!」

  <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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