金正恩に狙われた「セレブ姉妹」の悲惨な末路
北朝鮮では、当局の度重なる禁止令にもかかわらず、外貨が広く使用されている。北朝鮮ウォンに信用がなく、最高額紙幣も5000北朝鮮ウォン(約80円)で使い勝手が悪いからだ。
タンス預金をする場合には、「トンデコ」と呼ばれる闇両替商を訪れて外貨に両替をして、使う場合には少額をまた北朝鮮ウォンに両替するのが一般的だ。当局はこのトンデコの取り締まりを進めている。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
咸鏡南道(ハムギョンナムド)にある北朝鮮第二の都市、咸興(ハムン)市の安全部(警察署)は、先月から違法な両替、中国や韓国、あるいは国内の送金を請け負う「トンデコ」への取り締まりを強化している。「トンデコジャン」と呼ばれる闇両替商が集まる区域に立っているだけで、理由を問わず連行、勾留するほどだという。
また、今までならまず捕まることのなかった大物のトンデコの自宅を抜き打ちで家宅捜索し、本人のみならず、繋がりのある中小のトンデコまで逮捕し、恐怖心を煽る手法も動員している。
北朝鮮当局は、これまでにも繰り返し、両替商の摘発を行ってきた。昨年秋には平壌郊外の商業都市、平城(ピョンソン)で長年、大物闇両替商として君臨してきた女性2人が逮捕されたと、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えている。
(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…)
逮捕されたのは、40代のキムさん姉妹だ。2人は2011年ごろから、路上でタバコを売る商売を始めたが、その後、卸売業者へと成長。 平壌タバコ工場に10トントラックで乗り付け、タバコを満載して平城に戻り、業者に卸していたが、代金として受け取った外貨を市場で売り、利ザヤを手にしていた。
国家保衛省(秘密警察)は、こうした姉妹の行為が平城の外為市場に混乱を生じさせたと見て、逮捕に踏み切ったというのが、情報筋の説明だ。
姉妹はそれまで、カネにものを言わせて身の安全を図ってきた。地元の保衛部や安全部の幹部をワイロで抱き込み、捜査が及ばないようにしていたのだ。ところがある住民が、平城市保衛部、平安南道保衛局の上部機関である国家保衛省に直接通報したことで、逮捕に至った。
こうした場合、抱き込んでいた幹部の政敵による「報復」がらみであることも多く、処罰は苛烈になりがちだ。それもまた、ワイロで解決できれば良いのだが、外貨の使用禁止は金正恩総書記も関心を持つ政策だけに、上層部にまで報告が及ぶとそうもいかないのだ。