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ドラッグストアが食品分野に参入 中食においても大きな変革期に突入か?

池田恵里フードジャーナリスト
ドラッグストアがより差別化、その一つに生鮮三品を導入(写真:ロイター/アフロ)

これまでの中食の構成

ドラッグストアがスーパー、コンビニにとって脅威と言われるようになった。

高齢化が急速に進み、ドラッグストアも追従する形で成長の一途を遂げ、今や年間総売り上げは 6兆4916億円となっている。

ドラッグストアの売り上げ 店舗数の推移(日本チェーンドラッグストア協会資料参照)
ドラッグストアの売り上げ 店舗数の推移(日本チェーンドラッグストア協会資料参照)

市場規模をみると、デパートより大きく、他の業態から見ても成長は著しい。

ドラッグストアの営業総収入を2016年、2017年上期で比較してみると、106.8%、そして営業総利益でも109.4%と他の業界のなかでも最も高い数値をはじき出している。ちなみに営業総収入の昨対、並びに営業総利益の昨対、営業総利益において、次に多いのが食品スーパーとなっている。そしてコンビニは3位となっている。

「販売革新」から個別企業の業績決算による業態別業績引用
「販売革新」から個別企業の業績決算による業態別業績引用

さて肝心のドラッグストアの食品構成比を見てみると非常に高い。コスモス薬品、ウエルシアHD、ゲンキーでは図でもわかるように前期比より2桁の伸びを示している。

ドラッグストアの直近の食品売り上げ決算発表から抜粋作成
ドラッグストアの直近の食品売り上げ決算発表から抜粋作成

今後、競争が激化するなか、おのずとドラッグストア各社は食品に注力することで差別化を図り、さらに進むと急速に中食に移行すると考えられる。これは社会状況、そしてこれまでコンビニ、スーパーが生鮮食品から中食へと辿ってきた道でもある。

この表を見ても分かるように売り上げの半分が食品というのは、スーパー、コンビニにとって脅威である。

コスモス薬品の売り場面積が2000平方キロメートルタイプの店舗の食品売り場は600平方キロメートル前後であり、小型SMの非生鮮北品部門に匹敵する。

出典:チェーンストアエイジ、2017年9月15日

すでにドラッグストアの急速な食品の売り場投入により、スーパーが失墜してきており、倒産の憂き目にあった企業もある。

スーパー内の競争も熾烈で、急速に高齢化していくなか、これまでとは違う、例えば売り場が大きいとなかなか歩きづらいといった顧客からの要望、問題も出てきている。その上、地域の人口減、都市部の人口流入から、関西、関東いずれも地代の高い都市部の出店が余儀なくされている。

結果、地代が高いところでの出店だと、どうしても小型スーパーとなり、現在、300坪の店舗の実験店、大手企業では出店を手掛け始めているところもある。

とはいえ、正直、まだまだ模索段階である。

一方、福井県、石川県、愛知県、岐阜県でドミナントに出店しているドラッグストアのゲンキー。

この2年ほどで300坪フォーマット店は出店済みで基準化しており、ようやく始動し始めたスーパーは遅れをとっていると言ってもよい。

ゲンキーでは、1週間で暮らせる食品構成となっており、徹底してコンビニより安い価格設定にしているという。その徹底ぶりは、例えば肉などは100g上限198円の設定となっているのだ。

今後、人口減少を見込んでか、本来、必要商圏人口1万人での出店であるが、競合がなければ7000人でも出店するとのこと。

ということでドラッグストアの動向に目が離せないのである。

そこで今回、岐阜県の安八町店にゲンキー、クスリのアオキ、コスモス薬品、そして商圏内にあったドラッグではないがスーパーセンタートライアルも調査した。

岐阜県は、人口当たりのドラッグストア店舗数が日本一多い地域である。

10年以上前のことであるが、中食企業のとある会長がまだ生鮮など手付かずだったドラッグストアに注目し、岐阜県内でドラッグストア近隣に惣菜店を出店すると好調と聞いた記憶もあり、その先見性に感心するとともに調査するきっかけとなった。

1円戦争勃発

筆者撮影
筆者撮影

ゲンキー東前店

店舗内の日配、野菜をみるとその低価格を意識した価格設定となっている。

うどんは1食9円

もやし1パック9円

など破格の商品内容。

ゲンキーでは弁当が並んでおり、ここでも低価格で198円、もしくは298円設定(いずれも本体価格)となっている。

ゲンキー寿司298円本体価格筆者撮影
ゲンキー寿司298円本体価格筆者撮影
ゲンキー弁当198円本体価格筆者撮影
ゲンキー弁当198円本体価格筆者撮影

2009年に勃発した低価格弁当戦争を想い出すとともに、それより低価格設定であるため、はたして今後、人件費、原料高騰するなかでこの価格はどこまで維持できるのだろうか。

クスリのアオキ大井店筆者撮影
クスリのアオキ大井店筆者撮影

クスリのアオキ大井店では精肉をテナントに入れている。

豚バラきりおとし100g108円

鶏もも100g68円

そしてもやしは8円

うどん8円

となっており、ここでも1円勝負。

ちなみに惣菜は見当たらなかった。

スーパーセンタートライアル安八店筆者撮影
スーパーセンタートライアル安八店筆者撮影

次にスーパーセンターということでドラッグストアではなく、24時間ディスカウントストアであるトライアル。居ぬき物件を使用して、店舗展開している。安八店の坪数は約1327坪。

タクシーの方いわく

「なんでも揃うし、ゴルフの靴も買った。惣菜は毎日、買っているよ」

確かに、フライパンから、靴、バケツ、そして圧巻だったのは、総菜の品ぞろえ。

ショーケースに並んでいる商品は、いずれも店舗内で作られた商品でごく普通のスーパーと遜色のない出来栄えである。

スーパーセンタートライアル 名物カレーDEチキンカツライス350円(税込み)筆者撮影
スーパーセンタートライアル 名物カレーDEチキンカツライス350円(税込み)筆者撮影

スーパーでは多くの場合、どんぶりものは関西、関東いずれも398円設定となっている。それより少し低価格にしているのも味噌。

さて近隣というか、トライアルの道を隔ててすぐのところにコスモス安八店がある。今のところ、野菜はトマト、もやし、えのきと手堅く無理せずアイテム数を確保していた。

うどん9円となっている。

たかが1円、されど1円の戦いが各社、繰り広げられているのだ。

塗り替えられる惣菜売り上げ構成

今回、ドラッグストアを見て、改めてスーパー、コンビニにとって脅威と思えた。都市部ではウエルシアがオリジンと組み、中食参入に積極的だ。

とはいえ、ドラッグストアが食品を扱うための課題もある。

容易に想像がつくのは、ドラッグ、化粧品の利益率の高い商品をこれまで扱っているなかで、利益率も低く、ロスが発生する生鮮・惣菜をいかにバランスよく陳列し、利益を確保できるかがポイントとなるであろう。目下、日配をみるとおわかりいただけるように価格勝負という印象はぬぐえない。

しかし生鮮、そして次なる投入が予想される惣菜では価格訴求では難しく、鮮度管理を徹底し、商品力を上げるためには、どこまで管理能力、開発力を高められるかが決め手となるだろう。それができたならば、ドラッグストアは今まで以上に大きく前進し、小売り業界、そして中食市場は大きく変貌するであろう。

さて、これまでの業態による売り上げ構成、食品スーパー、専門店、総合スーパー、コンビニ、デパートであった。

惣菜売り上げ業態別構成比(日本惣菜協会)の資料から作成
惣菜売り上げ業態別構成比(日本惣菜協会)の資料から作成

新たにドラッグストアという項目が加わることは必至であり、遠い未来ではないと痛感した。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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