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食品ロスゼロで働き方改革!佰食屋の中村朱美さんが日経WOMANウーマン・オブ・ザ・イヤー2019受賞

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
一日100食限定、京都・佰(ひゃく)食屋オーナー中村朱美さん(中村朱美さん提供)

2017年5月に取材し、その後も、Yahoo!ニュース個人の記事や国内外の講演で、食品ロス(フードロス)を出さない飲食店の良い事例としてご紹介してきた、京都の佰(ひゃく)食屋のオーナーで、株式会社minitts(ミニッツ)の代表取締役である中村朱美(あけみ)さんが、日本経済新聞社の月刊誌『日経WOMAN(ウーマン)』が主催するウーマン・オブ・ザ・イヤー2019のトップとなる大賞を受賞された。

筆者の専門分野である食品ロス(フードロス)の分野で実績を出されている中村さんが受賞するのはとても嬉しい。京都市の市役所の方から2017年春に中村さんのことを教えて頂き、2017年から2018年までの2年間をかけて、食品ロスを減らす事業者の事例として毎回ご紹介してきた。「食品ロスを出さない飲食店」が改めて評価されたのは素晴らしく、誇らしい。

ステーキ丼の店「佰食屋」(中村朱美さん提供)
ステーキ丼の店「佰食屋」(中村朱美さん提供)

2017年7月10日の記事

なぜシングルマザーや障害者も働くことができるのか 一日百食限定、京都女性社長の店から働き方改革を問う

2018年10月31日の記事

働き方改革で表彰や取材多数、冷凍庫なしで食品ロスゼロ 全ての食企業に知って欲しい京都の飲食店 佰食屋

中村さんは、今回の日経WOMANウーマン・オブ・ザ・イヤー2019大賞だけでなく、これまでも、たくさんの賞を受賞されてきた。その背景には、働き方改革を実現したということもある。何しろ「1日100食限定」で、売り切ったら閉店。毎日15時ぐらいには閉店する。従業員は、まかない(食事)を食べ、翌日の仕込みをして、全員が18時前に帰宅の途につく。

食品ロス削減、働き方改革、と、難しい分野を次々達成してきた中村さん。今回の顕彰制度の主催者が日本経済新聞者の日経WOMANであることも嬉しい。経済界を代表する全国紙のメディアが、この人の活動や働き方が大賞に値すると評価したのだ。中村朱美さんは、2017年度は1億2000万円の売り上げを達成し、経済面での実績と、働く時間の抑制との両方を果たした。

佰食屋すき焼き専科(佰食屋提供)
佰食屋すき焼き専科(佰食屋提供)

「食品ロスを無くそうとすると売り上げが減る」という意見がまだまだ大多数派

事業者の方達の中には「食品ロスを減らそうとすると、結局、作る(売る)量が減るから売り上げが減ることになり、経済を縮小させる(からできない)」という意見が多い。「食品ロス(フードロス)削減」は、理想ではあるが、あくまで理想論であり、現実には厳しいよね、ということだ。

だが、今回のように、中村朱美さんが日本経済新聞社の『日経WOMAN』主催のウーマン・オブ・ザ・イヤー2019の大賞を受賞したことで、「売り上げと食品ロス削減は両立できるんだ」と、気づいてくれる人が出てくるだろう。すぐには現状は変わらないかもしれないが、一つの点は、その後、面になり、三次元の動きとなって、社会のうねりとなっていく。

佰食屋 肉寿司の店(佰食屋提供)
佰食屋 肉寿司の店(佰食屋提供)

2018年10月30日に放映されたテレビ番組の「セブンルール」(関西テレビ系)に、中村さんは出演されていた。その時、インタビュアーが、「1日100食じゃなくて、(午後)3時閉店じゃなくて、もっと売ればもっと儲かるんじゃないですか?」と質問された。中村さんは「そりゃあ、儲かるでしょう。でも、それは、私が目指す働き方ではない」とはっきり答えた。現代は、「働けば働くほど儲かるから可能な限り目一杯働く」「売り逃がしたら売り上げが落ちるから欠品を出さないようにたくさん作ってたくさん(店に)準備しておき、余ったら捨てる」という考え方が主流ではないだろうか。

今回の大賞受賞を機に、さらに中村朱美さんの働き方や食品ロス(フードロス)削減の実践を知る人が増え、彼ら・彼女らの意識が変わり、行動が変わっていくことを、心から祈っている。

関連資料:

働き方改革で表彰や取材多数、冷凍庫なしで食品ロスゼロ 全ての食企業に知って欲しい京都の飲食店 佰食屋

なぜシングルマザーや障害者も働くことができるのか 一日百食限定、京都女性社長の店から働き方改革を問う

ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019大賞受賞(日本経済新聞社 日経WOMAN主催)

2018年10月30日放送「セブンルール」(関西テレビ系) 中村朱美さん出演

ウーマン・オブ・ザ・イヤーとは

「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」は、(1)働く女性のロールモデルを提示する、(2)組織の中に埋もれがちな個人の業績に光を当てる、(3)活躍した女性たちを通して時代の変化の矛先をとらえる、という主旨のもと、1999年から毎年実施しているアワードで、ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019が20回目となります。『日経WOMAN』は、1988年の創刊以来、「働く女性」をバックアップしてきました。今後も「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」を通じ、社会で活躍する女性を表彰することで、時代を担う女性たちを応援していきたいと考えています。

出典:(日経WOMANのサイトより引用、「本年が(20回目)」という箇所を「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」に筆者改変)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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