消費増税の反動 Q2のGDPは年率7.1%ダウンか アベノミクスのジレンマ
内閣府は13日、4~6月期の国内総生産(GDP)の1次速報値を発表する。英紙フィナンシャル・タイムズによると、エコノミストら市場予測の平均は前期比で年率7.1%ダウンするという。
内閣府の発表値は実際にどうなのだろう。1~3月期の前期比伸び率は、4月の消費税増税(5%から8%に引き上げ)前の駆け込み需要で6.7%の伸びを示した。「7.1%減」はその反動に過ぎないのか。
2011年の東日本大震災による落ち込み幅は6.9%減。「7.1%減」は世界金融危機の影響を受けた09年初めの15%減以来の落ち込みだ。
来年10月に消費税を8%から10%に引き上げるか、安倍政権は年内に判断する予定だが、今回の発表は大きな影響を与えそうだ。
アベノミクス効果で、大手企業の夏のボーナスは昨年夏に比べ7%以上も増え、86万7731円(経団連調べ)。バブル期の1990年に記録した8.36%増以来、24年ぶりの伸びとなった。平均で製造業は2桁の伸びを示したが、非製造業は6%を超える減少となった。
大和総研によると、日本では、物価上昇率よりも時間当たり賃金の上昇率が高くなることが多いという。「『時間当たり』で見れば、物価上昇時には実質賃金も上昇する傾向がある」と指摘する。
安倍政権は、今年度の最低賃金を全国平均で前年度実績より16円引き上げ、780円にすることを決めた。非正規や中小・零細企業で働く労働者の賃金を押し上げるためだ。
アベノミクスには賃金押し上げ効果がある。しかし、厳しいニュースも続く。
経常収支の赤字。今年上半期の国際収支速報によると、モノやサービスなど海外との取引状況を表す経常収支は5075億円の赤字。昨年下半期から2期連続の赤字となった。
福島第1原発事故による原発の稼働停止で液化天然ガス(LNG)などエネルギーの輸入が膨らみ、生産拠点の海外移転で円安による輸出ドライブがかからず、貿易赤字が膨らんだためだ。
経常収支の赤字シナリオは、アベノミクス最大の誤算になっている。
内閣府が14日に発表する6月の機械受注統計。機械受注総額は4月に前月比34.8%増となったものの、5月は30.5%も減少。民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額がプラス転換しているのか、注目を集める。
市場では、消費税増税による反動減を乗り越え、アベノミクスは回復軌道に戻るとの見方が優勢だ。しかし、原発の稼働停止が続く限り、日本の成長は貿易赤字や経常赤字を伴う傾向が強くなってきた。
日本は生産拠点の海外移転や生産年齢人口の減少で、成長による内需の増加を輸入で補う構造が定着してきたためだ。
GDPの240%を超える政府債務を抱えたまま、経常赤字幅が膨らみ続けるのは、さすがにまずい。ウクライナ危機やイラク情勢など地政学リスクが大きくなると、今のところ円は安全資産として買われているが、これが売りに転じたら。
通貨が急落し、インフレ、長期金利の上昇(国債市場は下落)に見舞われる。緊急事態に備えて、安倍政権は消費税増税や年金・医療改革によってプライマリーバランス(基礎的財政収支)を均衡させる努力を国際市場に見せておく必要がある。
しかし、消費税増税の反動を見てもわかるように財政を締めると成長にブレーキがかかる。アベノミクスはすでに深刻なジレンマに陥っていると言えそうだ。
(おわり)