繰り返される学校での著作権侵害:問題はどこにあるのか #専門家のまとめ
小中学校などの教育機関が、著作権で保護されている写真やイラストなどの素材を、著作権フリー素材であると誤認して、利用規約を確認することなく無断利用して、著作権侵害を主張され、和解金や損害賠償金を支払うことになる事例が定期的に見られます。
ココがポイント
▼7年間の使用料として25万円を払うことで示談となっています
・フリー素材と思い込み…市立中の「ほけんだより」でイラスト無断使用、著作権侵害で作者に賠償(読売新聞オンライン)
▼5万5千円の支払いで和解しています
・「夏のイラスト フリー」で検索したのに…著作権者から賠償請求 学校だよりやHP掲載、明石市の小学校(神戸新聞Next)
▼11万円の賠償金が支払われています
・ネット上のイラスト「無料と思った」 学校だより掲載で著作権侵害、賠償金11万円 白石町の小学校(佐賀新聞)
▼対策として教育機関側が素材サイトを提供する動きもあります
・著作権心配せずに利用可 県教委がイラスト提供サイト運用開始 デザイン手がけた生徒を表彰 大分(BS大分放送)
エキスパートの補足・見解
上記のケースでは、すべて、検索エンジンで「フリー」というキーワードを含む検索を行い、表示されたイラストを著作権フリーであるとみなして利用規約を確認することなく、無断利用してしまっています。しかし、当然ながら検索エンジンの結果がすべて正しいとは限りません。まずは、学校の現場においてこのようなネットリテラシを強化する必要があるでしょう。
また、学校の場合には、著作権35条の例外規定に「授業の過程における利用に供することを目的とする場合」であれば、必要限度で他人の著作物を複製できると定められていることから、教師たちが「授業以外の利用でも大目に見てくれるだろう」と勝手に考えている可能性もあります(実際に大目に見られているケースは多いでしょう)。しかし、大目に見るかどうかを決めるのは権利者であって利用者ではありません。
対策としては、利用前に規約をよく確認する、いらすとや等の規約が明確になっている素材を利用する、教師自身あるいは生徒が素材を作成するなどが考えられますが、上記の最後の記事のように教育機関側が自ら安心して使える素材サイトを構築する動きもあります。生徒に対して著作権やコンテンツビジネスを学ぶ機会を提供できる点でも素晴らしい試みと言えるでしょう。